僕の奇跡と君のキセキ

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 加瀬君のスマホが鳴り響いた。

「上原見つかったか?」

 電話は関口君からのようだけど、教室内は大騒ぎのようで聞き取りにくい。

「上原〜 聞こえるか? クラスのみんなには俺から説明した。うちの一年が迷惑かけたな」

 あの一年生は野球部の先輩の関口君に全てを話したそうだ。
 本来なら昇降口にファールボールが飛んでくる事はない。昨日は部活は休みだったが、文化祭の準備が終わり手の空いた一年生たちが、空きスペースでバッティング練習を始めたそうだ。運悪く飛んできたボールが加瀬君を直撃しそうになり、それを庇った僕がよろけて加瀬君を突き落としてしまった。結果、階段から落ちたのだから庇わない方がよかったのかもしれないけど。

「ごめん! 悪かった、上原、許して〜〜〜!」
「くだらない事を言ったヤツは俺が締めておくから早く帰ってこい」
「おい、石川、ほどほどにしろよ」

 締めるって、マズイよ。
 加瀬君も心配してるじゃないか。
 苦しそうな声が……
 これはーーくすぐってる??
 間違いない、苦しそうな、笑い声だ。

「わかってる。アイツも反省してるからさ。でもお仕置きは必要だろ?」

 そう言いつつ、まだ苦しそうな笑い声は続いてた。

「文化祭始まっちゃうわよ〜」
「上原が来ないと完成しないだろ」
「早く戻って来て!」

 クラスメイトの声が聞こえる。
 僕は、またみんなと一緒にいていいの?
 
「みんな伊吹を頼りすぎだな。まぁ俺が一番頼ってるけどな」

 肩に置かれてた手にグッと力がこもった。
 ヤバっ、ちょっと泣きそうだ。

「ボール、どこに当たったんだ」
「どこでもいいだろ」
「痛いのか?」
「うるさいな、痛くないよ」

 咄嗟に庇った脇腹を、チョンとつつかれた。

「痛ってー、やめろ、バカ、変態か!」

 抵抗も虚しく、ワイシャツをズボンから引きずり出された。脇腹から胸の辺りまで広がった大きな黒いアザを見て加瀬君は絶句した。

「……なんだよ、そのアザ。俺の捻挫より酷いだろ」
「こんなのすぐに治るよ」
「俺を庇ってこんな怪我をしたのか。ボールが当たって階段から落ちてたら全治10日どころじゃ済まなかったな」
 
 お前が神妙な顔をしてると怖いよ。
 また何か企んでるのか?

「写真館じゃなくてお化け屋敷にすればよかったな。仮装なしでお化けじゃん」
「な、なんて事言うんだ。こんなシップ臭いお化けなんていないだろ!」
「冗談だよ、ごめん。ありがとう。これからもよろしく」

 僕の方こそ、探してに来てくれてありがとう。
 僕を仲間に入れてくれてありがとう。
 みんなが待っている。
 早く戻らないと。
 でも、もう少しだけ二人で肩を組んでいるのも悪くない。


******


 君は気づくだろうか。
 僕が描きたかったもの、それは……

 あの夏の日の空、眩しい太陽、重なる二つの影。
 あの日、僕らは出会っていない。
 でも、確かに心は通じあった。
 僕らの始まりの日、
 あの日の空の色を僕は忘れないだろう。
 これからも、ずっと、きっと……