人混みのざわめきの中で、
二人はしばらく言葉を失ったまま抱き合っていた。
空港という現実的な場所なのに、
ここだけ時間が止まっているようだった。
椿の胸に顔をうずめたまま、美羽は小さく息を吸う。
スーツ越しに伝わる体温は、確かに“あの頃”と同じだった。
「……椿くん」
美羽がそっと顔を上げると、
椿は優しく目を細めて、額に軽く触れる。
「長かったな」
「……うん。でも、ちゃんと……待てたよ」
その言葉に、椿の喉が小さく鳴った。
「俺もだ。美羽がいたから、頑張れた」
そう言って、椿はゆっくりと美羽の手を取った。
左手の薬指。
そこには、今も変わらず、あの指輪が光っている。
椿はそれを見つめて、静かに息を吐いた。
「……なあ、美羽」
「なに?」
少しだけ、空気が変わる。
人混みの音が遠のき、
天井のガラス越しに差し込む光が、二人を包む。
椿は、美羽の前に立ち、一歩、深く踏み出した。
「四年前の、約束覚えてるか?」
「必ず"迎えに行く"ってあの時、言ったよな」
美羽は、はっと目を見開く。
「覚えてる……」
椿は、少し照れたように、でも迷いなく続けた。
「今度は、言葉だけじゃなくて、ちゃんと形にしたい」
そう言って、椿はポケットから小さな箱を取り出した。
美羽の心臓が、大きく跳ねる。
「……椿、くん……?」
椿は、箱を開ける。
中には、シンプルで、凛とした指輪。
柔らかな光を受けて、静かに輝いていた。
「美羽」
真っ直ぐな目で、椿は言った。
「俺と結婚してください」
その声は低く、穏やかで、けれど確かに震えていた。
「どんな未来になっても、俺は、美羽とこれからずっと一緒に生きていきたい」
一瞬、世界が無音になる。
美羽は、目を大きく見開いたまま、
そして――次の瞬間、ぽろりと涙を落とした。
「……ずるい……」
小さく笑って、涙を拭いながら言う。
「そんなの……“はい”以外、言えないよ……」
椿の目が、ゆっくりと見開かれる。
「……本当か?」
美羽は、涙越しに笑った。
「はい…、よろしくお願いします。椿くん!」
その瞬間、
椿は堪えきれないように、美羽を抱き寄せた。
「美羽!……ありがとう」
震える声で、そう言って、美羽の頬に手を添える。
「大好きだ」
美羽も、同じように囁く。
「私も……ずっと、ずっと大好きだよ」
椿はゆっくりと顔を近づけ、そっと、美羽の唇に触れた。
それは、離れていた時間を埋めようとする、
優しいキスだった。
四年分の想いが、
言葉にならない温度となって、静かに溶け合う。
ゆっくりとお互いの唇が離れたあと、
美羽は少し照れたように笑った。
「……眼鏡、かけてないんだね」
椿は苦笑して、
「今日は必要ねぇだろ?」
と言い、もう一度、ぎゅっと抱きしめた。
周囲から、いつの間にか拍手が起こっていた。
知らない誰かの祝福の声。
けれど二人には、それすらも遠く感じられた。
美羽は、椿の胸に顔を埋めて、空を見上げる。
ガラス越しの空は、どこまでも青く、
まるで未来そのもののように広がっていた。
椿は、静かに囁く。
「もう離さねぇ」
美羽は、笑って頷いた。
「うん、ずっと一緒だよ!」
――こうして。
危険すぎるほど真っ直ぐで、不器用で、騒がしくて、それでも誰よりも愛おしい恋は、“永遠”という名前を手に入れた。
空は、どこまでも澄み渡っていた。
二人はしばらく言葉を失ったまま抱き合っていた。
空港という現実的な場所なのに、
ここだけ時間が止まっているようだった。
椿の胸に顔をうずめたまま、美羽は小さく息を吸う。
スーツ越しに伝わる体温は、確かに“あの頃”と同じだった。
「……椿くん」
美羽がそっと顔を上げると、
椿は優しく目を細めて、額に軽く触れる。
「長かったな」
「……うん。でも、ちゃんと……待てたよ」
その言葉に、椿の喉が小さく鳴った。
「俺もだ。美羽がいたから、頑張れた」
そう言って、椿はゆっくりと美羽の手を取った。
左手の薬指。
そこには、今も変わらず、あの指輪が光っている。
椿はそれを見つめて、静かに息を吐いた。
「……なあ、美羽」
「なに?」
少しだけ、空気が変わる。
人混みの音が遠のき、
天井のガラス越しに差し込む光が、二人を包む。
椿は、美羽の前に立ち、一歩、深く踏み出した。
「四年前の、約束覚えてるか?」
「必ず"迎えに行く"ってあの時、言ったよな」
美羽は、はっと目を見開く。
「覚えてる……」
椿は、少し照れたように、でも迷いなく続けた。
「今度は、言葉だけじゃなくて、ちゃんと形にしたい」
そう言って、椿はポケットから小さな箱を取り出した。
美羽の心臓が、大きく跳ねる。
「……椿、くん……?」
椿は、箱を開ける。
中には、シンプルで、凛とした指輪。
柔らかな光を受けて、静かに輝いていた。
「美羽」
真っ直ぐな目で、椿は言った。
「俺と結婚してください」
その声は低く、穏やかで、けれど確かに震えていた。
「どんな未来になっても、俺は、美羽とこれからずっと一緒に生きていきたい」
一瞬、世界が無音になる。
美羽は、目を大きく見開いたまま、
そして――次の瞬間、ぽろりと涙を落とした。
「……ずるい……」
小さく笑って、涙を拭いながら言う。
「そんなの……“はい”以外、言えないよ……」
椿の目が、ゆっくりと見開かれる。
「……本当か?」
美羽は、涙越しに笑った。
「はい…、よろしくお願いします。椿くん!」
その瞬間、
椿は堪えきれないように、美羽を抱き寄せた。
「美羽!……ありがとう」
震える声で、そう言って、美羽の頬に手を添える。
「大好きだ」
美羽も、同じように囁く。
「私も……ずっと、ずっと大好きだよ」
椿はゆっくりと顔を近づけ、そっと、美羽の唇に触れた。
それは、離れていた時間を埋めようとする、
優しいキスだった。
四年分の想いが、
言葉にならない温度となって、静かに溶け合う。
ゆっくりとお互いの唇が離れたあと、
美羽は少し照れたように笑った。
「……眼鏡、かけてないんだね」
椿は苦笑して、
「今日は必要ねぇだろ?」
と言い、もう一度、ぎゅっと抱きしめた。
周囲から、いつの間にか拍手が起こっていた。
知らない誰かの祝福の声。
けれど二人には、それすらも遠く感じられた。
美羽は、椿の胸に顔を埋めて、空を見上げる。
ガラス越しの空は、どこまでも青く、
まるで未来そのもののように広がっていた。
椿は、静かに囁く。
「もう離さねぇ」
美羽は、笑って頷いた。
「うん、ずっと一緒だよ!」
――こうして。
危険すぎるほど真っ直ぐで、不器用で、騒がしくて、それでも誰よりも愛おしい恋は、“永遠”という名前を手に入れた。
空は、どこまでも澄み渡っていた。



