危険すぎる恋に、落ちてしまいました。3

美羽と秋人は空港に到着した。


人の波、アナウンス、キャリーバッグの音。
秋人は近くにバイクを止めると、美羽に言った。

「俺はここまで、美羽ちゃん、先に行って!」

「え、秋人くん?」

「……早くしないと、会えなくなるよ!」

「う、うん!!」

その言葉に、美羽は頷き、走り出した。


(椿くん……!)


見渡しても、どこにもいない。胸が、ぎゅっと締めつけられる。


「椿くんっ?!椿くーんっ!!」

「どうしよう!?……間に合わなかったのかな!?」


その瞬間。


「——美羽!!」


上から響く声。見上げると、二階のロビー。
そこに、椿がいた。


「椿くん!!」


安堵した瞬間——


ドンッ。

誰かとぶつかり、よろける。


「す、すみません……!」


反射的に謝って振り返った美羽の視界に入ったのは、


キャリーバッグを引いた、がらの悪そうな男たちだった。
ぶつかった男が、わざとらしく肩を押さえる。

「おい、おいおじょーちゃん…ちょっと痛ぇんじゃねぇか?」

じろり、と値踏みするような視線。

「病院代、肩代わりしてもらおうかぁ?」

美羽は一瞬だけ目を瞬かせ、首をかしげた。

「ぶつかったのは、ごめんなさい。」
「でも……病院って、どこ診てもらうんですか?」

無自覚な煽り。
男たちは一瞬きょとんとし、次の瞬間、顔を歪めた。

「……あぁ?」

ぞろぞろと、周囲から仲間が集まり、美羽を囲む。


「冗談じゃねぇ!!調子に乗りやがってぇ!!」

「俺たちと来てもらおうかぁ!」

男の手に、鈍く光る刃物。
その光景を、二階のロビーから見ていた椿が叫ぶ。

「おいっ美羽!!逃げろ!!」

だが——
美羽は、逃げなかった。
ぎり、と歯を食いしばり、前に出る。

「……逃げる?」

そして、真っ直ぐ男たちを睨みつける。

「私は、絶対に逃げたりしない。あなたたちこそ——」

拳を握りしめ。

「私と椿くんの…"愛しい別れ"を邪魔してんじゃないわよ!!」

「上等だ、コラァ!!」

男が殴りかかる。

——次の瞬間。
美羽は一歩引き、正拳突きを瞬時にかます。

ドゴォォオ!

鈍い音と共に、男がよろける。

そのまま踏み込み、跳躍。

「——っ!」

回し蹴りが、綺麗な弧を描く。

次々倒れていく男たち。


だが。
ナイフを持った一人が、よろめきながら起き上がり、美羽に突っ込んでくる。

「美羽!!」

椿が焦り、走る。だが、距離が足りない。

(——間に合わない!)

「美羽ぇっ!!」

その叫びと同時に——

ドンッ!!

横から飛び込んできた影。

「——っ!?」

男は一瞬宙に浮き、次の瞬間、かかと落としが叩き込まれ、床に沈んだ。

「……っ」


静寂。
美羽は、目を見開く。

「……秋人くん?!」

秋人は、軽く肩を回しながら、不敵に笑った。

「大丈夫かい?Crazy girl?」

そして、ウインク。

「いや、クレイジーじゃないから!!」

即座に飛ぶ美羽のツッコミ。


そのやり取りを見て、椿は——深く、息を吐いた。


「……はぁ」


胸に溜まっていた不安が、ゆっくりとほどけてい
く。


(無事で……よかった)


美羽は振り返り、椿を見上げた。
少し強がった笑顔だった。