卒業式の日。
空はどこまでも澄みわたり、校舎を囲む桜は、まるで今日のために咲いたかのように満開だった。
風が吹くたび、花びらが舞い、
白い校舎と黒い制服の間を、淡いピンクが静かに流れていく。
——なのに。
美羽の胸は、どこか落ち着かなかった。
(……椿くん、いないんだ)
椿は、今日ここにはいない。
飛行機の時間があるため、卒業式には出られないと、前日に短い連絡が来ただけだった。
式が終わり、体育館を出た瞬間。
拍手と笑い声、写真を撮る音があちこちから聞こえる。
その中で、美羽はひとり、立ち止まっていた。
「美羽」
呼ばれて振り返ると、そこには美羽の父・優聖の姿があった。
グレーがかったスーツを着こなし、いつもより背筋が伸び、珍しく真剣な表情をしている。
父は、無言で封筒を差し出した。
「卒業おめでとう。」
「あと……これを」
美羽が中を見ると、そこには——
アメリカ行きの航空券。
「……パパ」
「美羽、今まですまないことをした。パパが悪かったよ。もう椿くんの反対はしないよ。後は……自分で決めなさい」
それだけ言ってうっすらと笑い、父は背を向けた。
桜の花びらが、封筒の上に一枚、そっと落ちる。
(……選ぶって、こういうことなのかな)
そのときだった。
「美羽ちゃん!?」
聞き慣れた声。
振り向くと、秋人がバイクの横で必死に手を振っていた。
「え?秋人くん?」
「椿からの連絡みた?!飛行機の時間、予定より早まったって!!今すぐ空港行こう!!」
「え……!?そうなの?!やば!スマホがサイレントになってて気付かなかった!」
考える暇もなく、美羽はヘルメットを受け取り、秋人の背中にしがみついた。
空はどこまでも澄みわたり、校舎を囲む桜は、まるで今日のために咲いたかのように満開だった。
風が吹くたび、花びらが舞い、
白い校舎と黒い制服の間を、淡いピンクが静かに流れていく。
——なのに。
美羽の胸は、どこか落ち着かなかった。
(……椿くん、いないんだ)
椿は、今日ここにはいない。
飛行機の時間があるため、卒業式には出られないと、前日に短い連絡が来ただけだった。
式が終わり、体育館を出た瞬間。
拍手と笑い声、写真を撮る音があちこちから聞こえる。
その中で、美羽はひとり、立ち止まっていた。
「美羽」
呼ばれて振り返ると、そこには美羽の父・優聖の姿があった。
グレーがかったスーツを着こなし、いつもより背筋が伸び、珍しく真剣な表情をしている。
父は、無言で封筒を差し出した。
「卒業おめでとう。」
「あと……これを」
美羽が中を見ると、そこには——
アメリカ行きの航空券。
「……パパ」
「美羽、今まですまないことをした。パパが悪かったよ。もう椿くんの反対はしないよ。後は……自分で決めなさい」
それだけ言ってうっすらと笑い、父は背を向けた。
桜の花びらが、封筒の上に一枚、そっと落ちる。
(……選ぶって、こういうことなのかな)
そのときだった。
「美羽ちゃん!?」
聞き慣れた声。
振り向くと、秋人がバイクの横で必死に手を振っていた。
「え?秋人くん?」
「椿からの連絡みた?!飛行機の時間、予定より早まったって!!今すぐ空港行こう!!」
「え……!?そうなの?!やば!スマホがサイレントになってて気付かなかった!」
考える暇もなく、美羽はヘルメットを受け取り、秋人の背中にしがみついた。



