町の中心にあるイルミネーションストリート。
夜の帳が降り、街全体が光の海に包まれていた。
通り沿いの木々は金色に縁取られ、建物の窓には白や青の光が瞬いている。
その中心にそびえ立つ、巨大なクリスマスツリー。
赤と金のオーナメントが、まるで星屑のように揺れていた。
「……わぁ……」
美羽は思わず立ち止まり、息をのむ。
「すごい……ほんとに、絵本の中みたい……」
しかし、その感動は——
隣に立つ“眼鏡の椿”を視界に入れた瞬間、全部吹き飛んだ。
「……」
ちら。
「……はぅ……」
ぱっと顔を隠す。
「……」
また、ちら。
「……はぅぅ……」
今度は両手で顔を覆う。
「……おい」
椿は呆れたようにため息をついた。
「いい加減慣れろよ。こっちが恥ずかしいだろ」
「む、無理だよ……!」
美羽は真っ赤なまま必死に首を振る。
「だって!こんなレアなメガネ椿くん、一生拝めないかもしれないんだよ!!」
「大げさだっつーの……」
そう言いながらも、椿の胸の内は、少しだけ満たされていた。
(……まぁ、こんな可愛い顔で俺だけ見てくれんの、悪くねぇか)
独占欲が、静かにくすぐられる。
椿は、美羽の手首を軽く引き、クリスマスツリーの真正面に立たせた。
「美羽」
「……?」
「目、瞑れ」
「やだ!」
即答で美羽は拒否をした。
「まだ!まだメガネ椿くん見たい!!」
「ばーか」
椿は苦笑して、低く言った。
「今日はずっとつけてるから。とらねぇよ」
「……ほんと?」
「あぁ。」
それを聞いて、美羽はしぶしぶ目を閉じた。
「……開けていい?」
「まだだ」
椿は、そっと美羽の背後に回る。
指先が、首元に触れた。
ひんやりとした金属の感触。
「……ん?」
「動くなよ」
カチリ、と小さな音。
「……よし。開けていいぞ」
美羽はゆっくり目を開く。
「え?」
首元に、きらりと光るもの。
「……ネックレス?」
小さな雪の結晶を模したペンダント。
ツリーの光を反射して、優しく輝いている。
「……メリークリスマス、美羽」
椿は、少し照れたように笑った。
「えええ?!これ、プレゼント?!わぁ!可愛いっ!!」
美羽は思わず首元を押さえる。
「ありがとう!椿くん、一生大事にする!!」
「お、おう……」
椿は照れ隠しに視線を逸らす。
「そんな大げさに喜んでくれんなら、あげたかいがあるな」
美羽は笑顔のまま、今度は自分のバッグを探った。
「……あのね、私も、椿くんに」
小さな箱を差し出す。
「プレゼントがあるの」
「……俺に?」
「うん」
少しだけ、真剣な声。
「まだ使う時期じゃないかもしれないけど…大人になった椿くんに、着けてほしい」
椿は静かに箱を開けた。
中にあったのは、青とシルバーが溶け合う、上品なネクタイピン。
「……美羽……」
言葉を失う。
椿は、しばらくそれを見つめ——
ふっと、少し寂しそうに笑った。
「……さんきゅ」
「いつか大人になって、これが似合う男になって…美羽を迎えに行くよ」
美羽の目が潤む。
「……うん」
椿は、美羽の頬に手を伸ばし、そっとキスを落とした。
光に包まれた、静かな口づけ。
唇が離れたあと、美羽は照れ笑いする。
「……眼鏡、ちょっと当たっちゃうね」
「……だろ?だからいらねーよ」
椿も小さく笑った。
帰り道。
二人は指を絡め、ゆっくり歩く。
イルミネーションの光が、二人の影を長く伸ばしていた。
美羽は、少し考えたあと、口を開く。
「……あのね、椿くん」
「うん」
「私、今まで自分のことばっかりで、椿くんしか見えてなかった。」
椿は、黙って聞いている。
「でもね…椿くんや、莉子や、秋人くんや…皆と出会って、少しずつ変われたの」
椿は、驚いたように目を見開く。
「……美羽」
「パパの本音も、今までちゃんと聞こうとしてなかった。けど、それを繋いでくれたのも椿くんなんだよね。」
立ち止まり、美羽は深呼吸した。
「……本当はね。私も、一緒にアメリカ、行きたいよ」
椿の胸が、ぎゅっと締め付けられる。
「でも…私、大きな夢ができちゃったから」
美羽は、涙を浮かべながら笑った。
「椿くんと、幸せになる夢!」
「……美羽」
「だから…、堂々と椿くんの隣にいられるように。私、頑張って大人になる。」
声が震える。
「……だからね、椿くんも…私のこと、待っててくれる……?」
涙が零れ落ちる。
椿は、何も言わず——
美羽を、強く、優しく抱き締めた。
そして、耳元で囁く。
「ばーか、当たり前だ」
"待ってる"
美羽は、ゆっくり目を開き——
涙のまま、笑った。
「……うん」
夜空には、オリオン座が静かに輝いていた。
まるで、二人の未来を見守るように。
——この冬、
二人は“別れ”ではなく、これからの未来の“約束”を手に入れた。
夜の帳が降り、街全体が光の海に包まれていた。
通り沿いの木々は金色に縁取られ、建物の窓には白や青の光が瞬いている。
その中心にそびえ立つ、巨大なクリスマスツリー。
赤と金のオーナメントが、まるで星屑のように揺れていた。
「……わぁ……」
美羽は思わず立ち止まり、息をのむ。
「すごい……ほんとに、絵本の中みたい……」
しかし、その感動は——
隣に立つ“眼鏡の椿”を視界に入れた瞬間、全部吹き飛んだ。
「……」
ちら。
「……はぅ……」
ぱっと顔を隠す。
「……」
また、ちら。
「……はぅぅ……」
今度は両手で顔を覆う。
「……おい」
椿は呆れたようにため息をついた。
「いい加減慣れろよ。こっちが恥ずかしいだろ」
「む、無理だよ……!」
美羽は真っ赤なまま必死に首を振る。
「だって!こんなレアなメガネ椿くん、一生拝めないかもしれないんだよ!!」
「大げさだっつーの……」
そう言いながらも、椿の胸の内は、少しだけ満たされていた。
(……まぁ、こんな可愛い顔で俺だけ見てくれんの、悪くねぇか)
独占欲が、静かにくすぐられる。
椿は、美羽の手首を軽く引き、クリスマスツリーの真正面に立たせた。
「美羽」
「……?」
「目、瞑れ」
「やだ!」
即答で美羽は拒否をした。
「まだ!まだメガネ椿くん見たい!!」
「ばーか」
椿は苦笑して、低く言った。
「今日はずっとつけてるから。とらねぇよ」
「……ほんと?」
「あぁ。」
それを聞いて、美羽はしぶしぶ目を閉じた。
「……開けていい?」
「まだだ」
椿は、そっと美羽の背後に回る。
指先が、首元に触れた。
ひんやりとした金属の感触。
「……ん?」
「動くなよ」
カチリ、と小さな音。
「……よし。開けていいぞ」
美羽はゆっくり目を開く。
「え?」
首元に、きらりと光るもの。
「……ネックレス?」
小さな雪の結晶を模したペンダント。
ツリーの光を反射して、優しく輝いている。
「……メリークリスマス、美羽」
椿は、少し照れたように笑った。
「えええ?!これ、プレゼント?!わぁ!可愛いっ!!」
美羽は思わず首元を押さえる。
「ありがとう!椿くん、一生大事にする!!」
「お、おう……」
椿は照れ隠しに視線を逸らす。
「そんな大げさに喜んでくれんなら、あげたかいがあるな」
美羽は笑顔のまま、今度は自分のバッグを探った。
「……あのね、私も、椿くんに」
小さな箱を差し出す。
「プレゼントがあるの」
「……俺に?」
「うん」
少しだけ、真剣な声。
「まだ使う時期じゃないかもしれないけど…大人になった椿くんに、着けてほしい」
椿は静かに箱を開けた。
中にあったのは、青とシルバーが溶け合う、上品なネクタイピン。
「……美羽……」
言葉を失う。
椿は、しばらくそれを見つめ——
ふっと、少し寂しそうに笑った。
「……さんきゅ」
「いつか大人になって、これが似合う男になって…美羽を迎えに行くよ」
美羽の目が潤む。
「……うん」
椿は、美羽の頬に手を伸ばし、そっとキスを落とした。
光に包まれた、静かな口づけ。
唇が離れたあと、美羽は照れ笑いする。
「……眼鏡、ちょっと当たっちゃうね」
「……だろ?だからいらねーよ」
椿も小さく笑った。
帰り道。
二人は指を絡め、ゆっくり歩く。
イルミネーションの光が、二人の影を長く伸ばしていた。
美羽は、少し考えたあと、口を開く。
「……あのね、椿くん」
「うん」
「私、今まで自分のことばっかりで、椿くんしか見えてなかった。」
椿は、黙って聞いている。
「でもね…椿くんや、莉子や、秋人くんや…皆と出会って、少しずつ変われたの」
椿は、驚いたように目を見開く。
「……美羽」
「パパの本音も、今までちゃんと聞こうとしてなかった。けど、それを繋いでくれたのも椿くんなんだよね。」
立ち止まり、美羽は深呼吸した。
「……本当はね。私も、一緒にアメリカ、行きたいよ」
椿の胸が、ぎゅっと締め付けられる。
「でも…私、大きな夢ができちゃったから」
美羽は、涙を浮かべながら笑った。
「椿くんと、幸せになる夢!」
「……美羽」
「だから…、堂々と椿くんの隣にいられるように。私、頑張って大人になる。」
声が震える。
「……だからね、椿くんも…私のこと、待っててくれる……?」
涙が零れ落ちる。
椿は、何も言わず——
美羽を、強く、優しく抱き締めた。
そして、耳元で囁く。
「ばーか、当たり前だ」
"待ってる"
美羽は、ゆっくり目を開き——
涙のまま、笑った。
「……うん」
夜空には、オリオン座が静かに輝いていた。
まるで、二人の未来を見守るように。
——この冬、
二人は“別れ”ではなく、これからの未来の“約束”を手に入れた。



