体育館と校舎をつなぐ渡り廊下。
人の流れから少し外れた物陰で、三つの影がぴったりと並んでいた。
「…………」
しばしの沈黙。
そして、一番最初に口を開いたのは椿だった。
「……で?」
低く、訝しげな声。
「俺はいったい、何を見させられてんだ?」
美羽と秋人の間に立ったまま、廊下の向こうで向き合う遼と莉子を指差している。
「つーかこれ、俺ら見てて大丈夫なやつなのか?」
ちらり、と横目で秋人を見る。
秋人は一瞬きょとんとしたあと、
すぐにいつものキラキラした笑顔を浮かべた。
「いやぁ~だってさぁ。可愛い妹の晴れ舞台だからね」
胸に手を当て、どや顔。
「兄としては、微笑ましい限りだよ?」
「どの立場で言ってんだよ……」
椿は即座にツッコミを入れる。
その横で、美羽はというと——
「えー!?」
目を輝かせ、両手をぎゅっと握りしめていた。
「だってだって!私と秋人くんの共同作戦だよ?!」
少し胸を張る。
「ここまできたら見届けないと損じゃない!!」
そして、椿の方を振り返り、にへっと笑う。
「もう~椿くんたら、わかってないんだから~」
完全にデレている。
椿は、その様子をじーっと見つめてから、ゆっくりと目を細めた。
「……はーん」
納得したように、低く唸る。
「なるほどな。それで最近、お前ら仲良しこよししてたんだな」
じとーっ、と美羽と秋人を交互に見つめる。
「え?」
秋人は一瞬きょとんとして、すぐにニヤリと笑った。
「もぅ~何々?嫉妬はカッコ悪いよ?椿~」
肩をすくめ、余裕の表情。
「してねぇ」
椿は即答し、ふいっと顔を逸らした。
耳が、ほんのり赤い。
「はいはい」
秋人は楽しそうに笑う。
そんな二人のやり取りをよそに、美羽は廊下の向こうを見つめて感極まったように小さく跳ねた。
「でもでも!!これってさ、ほぼカップル誕生じゃない?!」
両手を口元に当てて、目を潤ませる。
「きゃー!感動なんだけど!!」
秋人は、その様子を見て首をかしげた。
「え?あれって付き合ったの?」
「ただイチャついてただけじゃない?」
「えー?!今の距離感はもう、カレカノレベル超えてるよ?!」
美羽は全力で反論する。
椿は、二人のテンションに耐えきれなくなったのか大きくため息をついた。
「……はぁ」
頭の後ろをがしがしとかきながら、立ち上がる。
「もう終わっただろ。片付け行くぞー」
さっさと歩き出す椿。
「え?!ちょっと椿くん?!待ってよー!!」
美羽は慌てて追いかける。
「もう、置いてかないでってばぁ~!」
二人の背中を見送りながら、秋人は一瞬だけ立ち止まり、再び廊下の向こうに目を向けた。
まだ話している遼と莉子。
ぎこちなくて、でも少しだけ距離が近くなった二人。
秋人は、誰にも聞こえない声で呟く。
「……よかったね、莉子」
その声は、
どこか兄らしく、
ほんの少しだけ切なかった。
やがて、体育祭の終了を告げるアナウンスが校内に響く。
歓声と拍手。
片付けのざわめき。
こうして——
笑って、泣いて、すれ違って、それでも一歩前に進んだドキドキの体育祭は、幕を下ろした。
そしてそれぞれの恋は、まだ始まったばかりだった。
人の流れから少し外れた物陰で、三つの影がぴったりと並んでいた。
「…………」
しばしの沈黙。
そして、一番最初に口を開いたのは椿だった。
「……で?」
低く、訝しげな声。
「俺はいったい、何を見させられてんだ?」
美羽と秋人の間に立ったまま、廊下の向こうで向き合う遼と莉子を指差している。
「つーかこれ、俺ら見てて大丈夫なやつなのか?」
ちらり、と横目で秋人を見る。
秋人は一瞬きょとんとしたあと、
すぐにいつものキラキラした笑顔を浮かべた。
「いやぁ~だってさぁ。可愛い妹の晴れ舞台だからね」
胸に手を当て、どや顔。
「兄としては、微笑ましい限りだよ?」
「どの立場で言ってんだよ……」
椿は即座にツッコミを入れる。
その横で、美羽はというと——
「えー!?」
目を輝かせ、両手をぎゅっと握りしめていた。
「だってだって!私と秋人くんの共同作戦だよ?!」
少し胸を張る。
「ここまできたら見届けないと損じゃない!!」
そして、椿の方を振り返り、にへっと笑う。
「もう~椿くんたら、わかってないんだから~」
完全にデレている。
椿は、その様子をじーっと見つめてから、ゆっくりと目を細めた。
「……はーん」
納得したように、低く唸る。
「なるほどな。それで最近、お前ら仲良しこよししてたんだな」
じとーっ、と美羽と秋人を交互に見つめる。
「え?」
秋人は一瞬きょとんとして、すぐにニヤリと笑った。
「もぅ~何々?嫉妬はカッコ悪いよ?椿~」
肩をすくめ、余裕の表情。
「してねぇ」
椿は即答し、ふいっと顔を逸らした。
耳が、ほんのり赤い。
「はいはい」
秋人は楽しそうに笑う。
そんな二人のやり取りをよそに、美羽は廊下の向こうを見つめて感極まったように小さく跳ねた。
「でもでも!!これってさ、ほぼカップル誕生じゃない?!」
両手を口元に当てて、目を潤ませる。
「きゃー!感動なんだけど!!」
秋人は、その様子を見て首をかしげた。
「え?あれって付き合ったの?」
「ただイチャついてただけじゃない?」
「えー?!今の距離感はもう、カレカノレベル超えてるよ?!」
美羽は全力で反論する。
椿は、二人のテンションに耐えきれなくなったのか大きくため息をついた。
「……はぁ」
頭の後ろをがしがしとかきながら、立ち上がる。
「もう終わっただろ。片付け行くぞー」
さっさと歩き出す椿。
「え?!ちょっと椿くん?!待ってよー!!」
美羽は慌てて追いかける。
「もう、置いてかないでってばぁ~!」
二人の背中を見送りながら、秋人は一瞬だけ立ち止まり、再び廊下の向こうに目を向けた。
まだ話している遼と莉子。
ぎこちなくて、でも少しだけ距離が近くなった二人。
秋人は、誰にも聞こえない声で呟く。
「……よかったね、莉子」
その声は、
どこか兄らしく、
ほんの少しだけ切なかった。
やがて、体育祭の終了を告げるアナウンスが校内に響く。
歓声と拍手。
片付けのざわめき。
こうして——
笑って、泣いて、すれ違って、それでも一歩前に進んだドキドキの体育祭は、幕を下ろした。
そしてそれぞれの恋は、まだ始まったばかりだった。



