笛の音が、体育館の空気を切り裂いた。
「ピーッ!」
試合開始。
ボールが高く放られ、床に弾む乾いた音が響く。
その瞬間、体育館の温度が一段上がった。
「Aチーム、ボール!」
悠真が軽やかに走り出す。
「椿!パスいくよ~!」
「……あぁ」
椿は短く答え、視線を一瞬だけコートの向こうへ向けた。
――秋人。
余裕のある立ち姿。
まるでこの空間すべてを楽しんでいるかのような、軽い笑み。
(……気に入らねぇ)
歯を食いしばり、椿はボールを受け取った。
「椿くんがボール持ったー!!」
「やばっ、オーラ強すぎ!」
「顔が本気モードなんだけど!!」
黄色い歓声が一斉に弾ける。
椿はドリブルで前に出る。
だが、次の瞬間――
「っと」
軽やかに、秋人が前に立った。
無駄のない動き。
距離感は完璧で、余裕の笑みすら浮かべている。
「そんなに睨まなくてもさ」
秋人は、ボールを見ずに椿を見ていた。
「集中しなよ?椿」
「……うるせぇ」
低く吐き捨てた、その直後。
一歩。
ほんの一歩、秋人が踏み込む。
「なっ――!」
「はい、もらい」
ボールは秋人の手の中へ。
「きゃあああ!!今の見た!?」
「うそ、奪った!?余裕すぎ!!」
「秋人くんかっこよすぎるんだけど!!」
体育館が揺れるほどの悲鳴。
秋人はそのままドリブルで前へ出る。
走りながら、ちらりと椿を振り返る。
「焦ってる?」
その一言が、完全に火をつけた。
「……っ」
椿は無言で追いかける。
足音が床を叩く。
秋人は止まらない。
むしろ――楽しそうだった。
ゴール前。
「いくよ?」
そう言って、秋人はジャンプ。
軽やかに体をひねり、ワンハンドで放つ。
――スパッ。
綺麗な音を立てて、ネットが揺れた。
「きゃああああ!!!」
「なに今の!?映画!?」
「王子様じゃん!!」
Bチームに点が入る。
碧は拍手しながら、
「さすがです!無駄がありませんね!」
「でしょ?」
秋人は笑って、軽く手を振る。
その姿は、あまりにも余裕で、あまりにも“見せつけ”だった。
椿は、拳をぎゅっと握る。
(……ふざけんな)
脳裏に浮かぶのは、美羽の顔。
図書室で、秋人に引き留められていたあの距離。
「……取られるわけねぇだろ」
低く呟き、次のプレイへ。
「悠真!」
「おっけー!」
ボールが回る。
椿は一気にスピードを上げた。
「速っ!」
「椿、顔怖いんだけど!!」
秋人がマークにつく。
二人の距離が、また縮まる。
「さっきより本気じゃん」
秋人は余裕を崩さない。
「……黙れ」
フェイント。
体を入れ替え、ゴールへ一直線。
「いけぇ!!」
――ダンッ。
踏み切り。
両手で叩き込む。
――ゴンッ、スパッ。
決まった。
「きゃあああ!!!」
「椿くんもやばい!!」
「どっちもかっこいいとか何この展開!?」
歓声が、体育館を震わせる。
着地した椿は、息を整えながら秋人を見る。
「……俺は」
低く、はっきりと。
「美羽を譲る気はねぇ」
秋人は一瞬だけ目を見開き――
すぐに、楽しそうに笑った。
「知ってるよ」
肩をすくめる。
そして、ドリブルを続けながら、静かに語る。
「美羽ちゃんはさ、どこまでも純粋で…強くて…逞しいんだよね。だけど本当は、か弱くいたいんだよね。」
その声は、挑発なのに、どこか優しい。
「そんな可愛い子、俺がほっとくと思う?」
「…っ!」
椿は反射的にボールを狙う。
「秋人に、美羽の何がわかんだよ」
視線を逸らしながら吐き捨てる。
額から汗が、ぽたりと落ちた。
「わかるよ」
秋人は、ほんの一瞬だけ寂しそうに笑う。
「俺も、同じだったから」
その言葉に、椿は目を見開く。
次の瞬間。
秋人はくるりと体勢を変え――
遠い位置から、放った。
――スパッ。
リングに吸い込まれるボール。
秋人は振り返り、リストバンドで汗を拭いながら言う。
「美羽ちゃんも言ってくれたんだ。こんな俺を綺麗だって…椿と同じだよ」
微笑みながら、まっすぐに。
「だから、俺も諦めないよ」
椿は、その場に一瞬立ち尽くした。
悔しさが、胸に刺さる。
「……っ」
「も~何やってんだよ!椿!!とられちゃったじゃんん!!」
悠真の叫びが飛ぶ。
「うるせぇ。次は外さねぇ」
イライラを隠さず、椿は言った。
笛の音。
ボールを受け取り、ドリブルしながら椿は言う。
「秋人、俺はお前を否定しねぇ。」
一歩、前へ。
「けど、美羽を好きなのは、誰にも負けねぇ」
――放つ。
遠い位置からのシュート。
――スパッ。
決まった。
「おぉぉ!!」
男子たちの歓声が響く。
二人の視線が、再びぶつかる。
恋と意地と独占欲が、
体育館の中央で火花を散らしている。
「ピーッ!」
試合開始。
ボールが高く放られ、床に弾む乾いた音が響く。
その瞬間、体育館の温度が一段上がった。
「Aチーム、ボール!」
悠真が軽やかに走り出す。
「椿!パスいくよ~!」
「……あぁ」
椿は短く答え、視線を一瞬だけコートの向こうへ向けた。
――秋人。
余裕のある立ち姿。
まるでこの空間すべてを楽しんでいるかのような、軽い笑み。
(……気に入らねぇ)
歯を食いしばり、椿はボールを受け取った。
「椿くんがボール持ったー!!」
「やばっ、オーラ強すぎ!」
「顔が本気モードなんだけど!!」
黄色い歓声が一斉に弾ける。
椿はドリブルで前に出る。
だが、次の瞬間――
「っと」
軽やかに、秋人が前に立った。
無駄のない動き。
距離感は完璧で、余裕の笑みすら浮かべている。
「そんなに睨まなくてもさ」
秋人は、ボールを見ずに椿を見ていた。
「集中しなよ?椿」
「……うるせぇ」
低く吐き捨てた、その直後。
一歩。
ほんの一歩、秋人が踏み込む。
「なっ――!」
「はい、もらい」
ボールは秋人の手の中へ。
「きゃあああ!!今の見た!?」
「うそ、奪った!?余裕すぎ!!」
「秋人くんかっこよすぎるんだけど!!」
体育館が揺れるほどの悲鳴。
秋人はそのままドリブルで前へ出る。
走りながら、ちらりと椿を振り返る。
「焦ってる?」
その一言が、完全に火をつけた。
「……っ」
椿は無言で追いかける。
足音が床を叩く。
秋人は止まらない。
むしろ――楽しそうだった。
ゴール前。
「いくよ?」
そう言って、秋人はジャンプ。
軽やかに体をひねり、ワンハンドで放つ。
――スパッ。
綺麗な音を立てて、ネットが揺れた。
「きゃああああ!!!」
「なに今の!?映画!?」
「王子様じゃん!!」
Bチームに点が入る。
碧は拍手しながら、
「さすがです!無駄がありませんね!」
「でしょ?」
秋人は笑って、軽く手を振る。
その姿は、あまりにも余裕で、あまりにも“見せつけ”だった。
椿は、拳をぎゅっと握る。
(……ふざけんな)
脳裏に浮かぶのは、美羽の顔。
図書室で、秋人に引き留められていたあの距離。
「……取られるわけねぇだろ」
低く呟き、次のプレイへ。
「悠真!」
「おっけー!」
ボールが回る。
椿は一気にスピードを上げた。
「速っ!」
「椿、顔怖いんだけど!!」
秋人がマークにつく。
二人の距離が、また縮まる。
「さっきより本気じゃん」
秋人は余裕を崩さない。
「……黙れ」
フェイント。
体を入れ替え、ゴールへ一直線。
「いけぇ!!」
――ダンッ。
踏み切り。
両手で叩き込む。
――ゴンッ、スパッ。
決まった。
「きゃあああ!!!」
「椿くんもやばい!!」
「どっちもかっこいいとか何この展開!?」
歓声が、体育館を震わせる。
着地した椿は、息を整えながら秋人を見る。
「……俺は」
低く、はっきりと。
「美羽を譲る気はねぇ」
秋人は一瞬だけ目を見開き――
すぐに、楽しそうに笑った。
「知ってるよ」
肩をすくめる。
そして、ドリブルを続けながら、静かに語る。
「美羽ちゃんはさ、どこまでも純粋で…強くて…逞しいんだよね。だけど本当は、か弱くいたいんだよね。」
その声は、挑発なのに、どこか優しい。
「そんな可愛い子、俺がほっとくと思う?」
「…っ!」
椿は反射的にボールを狙う。
「秋人に、美羽の何がわかんだよ」
視線を逸らしながら吐き捨てる。
額から汗が、ぽたりと落ちた。
「わかるよ」
秋人は、ほんの一瞬だけ寂しそうに笑う。
「俺も、同じだったから」
その言葉に、椿は目を見開く。
次の瞬間。
秋人はくるりと体勢を変え――
遠い位置から、放った。
――スパッ。
リングに吸い込まれるボール。
秋人は振り返り、リストバンドで汗を拭いながら言う。
「美羽ちゃんも言ってくれたんだ。こんな俺を綺麗だって…椿と同じだよ」
微笑みながら、まっすぐに。
「だから、俺も諦めないよ」
椿は、その場に一瞬立ち尽くした。
悔しさが、胸に刺さる。
「……っ」
「も~何やってんだよ!椿!!とられちゃったじゃんん!!」
悠真の叫びが飛ぶ。
「うるせぇ。次は外さねぇ」
イライラを隠さず、椿は言った。
笛の音。
ボールを受け取り、ドリブルしながら椿は言う。
「秋人、俺はお前を否定しねぇ。」
一歩、前へ。
「けど、美羽を好きなのは、誰にも負けねぇ」
――放つ。
遠い位置からのシュート。
――スパッ。
決まった。
「おぉぉ!!」
男子たちの歓声が響く。
二人の視線が、再びぶつかる。
恋と意地と独占欲が、
体育館の中央で火花を散らしている。



