昼過ぎの体育館は、春の名残と初夏の匂いが混ざったような空気に包まれていた。
高い天井から差し込む光が、床に白い四角を落とし、ボールの影が跳ねる。
「よーし、今日はバスケだ。各自あてらてたグループになり対決するように~。」
体育教師の笛の音が、体育館に響く。
「いえ~い。久々のバスケだねぇ。椿~!同じグループじゃん!よろしくねぇ~♪」
悠真は相変わらずのテンションで、軽くジャンプしながら椿に近づいた。
だが――
椿は、明らかに様子がおかしかった。
眉間には深い皺。
視線は、ずっと一点を捉えている。
「……」
「え、椿どうしたの?!そんなに俺と組むの嫌なの?!ひどくない?! 」
悠真は胸に手を当て、今にも泣き出しそうな顔を作る。
その横から、遼がすっと入り込んだ。
「悠真くん~?椿はね、今それどころじゃないんだよ~」
椿の肩に腕を回し、にやにやと笑う。
「ライバルができちゃったからねぇ~」
「ちっ、るせぇ。」
椿は舌打ちし、視線を外さない。
その先にいるのは――
黒薔薇学園の制服を着崩し、余裕の立ち姿を見せる秋人だった。
秋人のチームには、碧がいる。
「なんと!秋人くんと同じチームなんてレアですね!頑張りましょうね!」
碧は相変わらずの無邪気さで、状況をまるで理解していない。
「あぁ、よろしくね。」
秋人は爽やかに答えながら、リストバンドのついた手で髪をかきあげた。
その仕草一つで、女子の視線が一斉に集まる。
椿は、昨日の図書室の光景を思い出していた。
美羽のほんのり赤くなった頬と戸惑った顔。
秋人の、あの距離。
(……くそ。)
秋人は、その視線に気づいていた。
オッドアイを細め、挑むように椿を見る。
遼は、少し引きつった笑顔で心の中で呟く。
(うわぁ……あからさまにバチバチじゃん……)
試合前から、すでに火花は散っていた。
コートの端では、休憩中の女子生徒たちが集まっている。
「椿くんかっこいい~!」
「いやいや、秋人くんでしょ!?」
「どっちが勝つのかなぁ~!」
「やーん、どっちも勝ってほしい~!!」
まるでファンクラブのような盛り上がりだ。
笛が鳴る。
「ではAチーム!Bチーム!並べ~。」
椿と悠真のいるチームがA。
秋人と碧のいるチームがB。
遼はCなので、観客ポジションだ。
整列した瞬間、秋人が一歩前に出た。
「ねぇ椿、さっきはごめんね?それでさ、俺と勝負しない?」
「……勝負?」
椿は訝しげに眉をひそめる。
「そう。どちらかがシュートを多く決めた方が、
美羽ちゃんと今日一緒に帰れるっていうのはどうかな?」
秋人は、にやりと笑った。
「何?」
椿の目が、鋭く細められる。
「ふふ、今は椿の彼女でも、俺には関係ないよ。どう?勝負受けるの?受けないの?」
挑発するような声。
「は?秋人、お前ふざけて…」
椿が一歩踏み出した瞬間。
「はいはい、椿!秋人くんも!喧嘩しな~いの!」
悠真が慌てて二人の間に割って入った。
「秋人く~ん?僕もいること忘れないでね?」
その声は、珍しく本気だった。
だが秋人は、悠真を見て肩をすくめる。
「へぇ、そうなんだ?美羽ちゃんにあんまり相手にされてないように見えるけど?」
「むきぃぃ!!」
悠真の顔が真っ赤になる。
「もう悠真くんは怒った!!いくぞ!椿!!
こんなやつこてんぱんにしてやるぅぅ!!」
「は?おい!!悠真!?」
椿は引きずられるようにコートへ向かう。
その様子を、秋人はクスクスと笑って見ていた。
「秋人くん!美羽さんと付き合いたいなら、美羽さんに勝たないといけませんよ?」
碧が、珍しく真顔で言った。
「はは、大丈夫。」
秋人はウインクする。
「まずは椿に勝たないとね?」
笛が鳴り、試合開始。
体育館の空気が、一気に熱を帯びる。
――美羽をかけた戦いが、始まろうとしていた。
その頃。
まったく事情を知らない美羽は、別の教室で数学の授業を受けていた。
静かな教室。
チョークの音。
「……くしゅん!」
小さなくしゃみをして、鼻をすする。
(ん~?風邪かなぁ……?)
窓の外は、春の光がきらきらしていた。
その光の下で、
彼女を巡る男たちの戦いが始まっていることなど、
知る由もなく――。
高い天井から差し込む光が、床に白い四角を落とし、ボールの影が跳ねる。
「よーし、今日はバスケだ。各自あてらてたグループになり対決するように~。」
体育教師の笛の音が、体育館に響く。
「いえ~い。久々のバスケだねぇ。椿~!同じグループじゃん!よろしくねぇ~♪」
悠真は相変わらずのテンションで、軽くジャンプしながら椿に近づいた。
だが――
椿は、明らかに様子がおかしかった。
眉間には深い皺。
視線は、ずっと一点を捉えている。
「……」
「え、椿どうしたの?!そんなに俺と組むの嫌なの?!ひどくない?! 」
悠真は胸に手を当て、今にも泣き出しそうな顔を作る。
その横から、遼がすっと入り込んだ。
「悠真くん~?椿はね、今それどころじゃないんだよ~」
椿の肩に腕を回し、にやにやと笑う。
「ライバルができちゃったからねぇ~」
「ちっ、るせぇ。」
椿は舌打ちし、視線を外さない。
その先にいるのは――
黒薔薇学園の制服を着崩し、余裕の立ち姿を見せる秋人だった。
秋人のチームには、碧がいる。
「なんと!秋人くんと同じチームなんてレアですね!頑張りましょうね!」
碧は相変わらずの無邪気さで、状況をまるで理解していない。
「あぁ、よろしくね。」
秋人は爽やかに答えながら、リストバンドのついた手で髪をかきあげた。
その仕草一つで、女子の視線が一斉に集まる。
椿は、昨日の図書室の光景を思い出していた。
美羽のほんのり赤くなった頬と戸惑った顔。
秋人の、あの距離。
(……くそ。)
秋人は、その視線に気づいていた。
オッドアイを細め、挑むように椿を見る。
遼は、少し引きつった笑顔で心の中で呟く。
(うわぁ……あからさまにバチバチじゃん……)
試合前から、すでに火花は散っていた。
コートの端では、休憩中の女子生徒たちが集まっている。
「椿くんかっこいい~!」
「いやいや、秋人くんでしょ!?」
「どっちが勝つのかなぁ~!」
「やーん、どっちも勝ってほしい~!!」
まるでファンクラブのような盛り上がりだ。
笛が鳴る。
「ではAチーム!Bチーム!並べ~。」
椿と悠真のいるチームがA。
秋人と碧のいるチームがB。
遼はCなので、観客ポジションだ。
整列した瞬間、秋人が一歩前に出た。
「ねぇ椿、さっきはごめんね?それでさ、俺と勝負しない?」
「……勝負?」
椿は訝しげに眉をひそめる。
「そう。どちらかがシュートを多く決めた方が、
美羽ちゃんと今日一緒に帰れるっていうのはどうかな?」
秋人は、にやりと笑った。
「何?」
椿の目が、鋭く細められる。
「ふふ、今は椿の彼女でも、俺には関係ないよ。どう?勝負受けるの?受けないの?」
挑発するような声。
「は?秋人、お前ふざけて…」
椿が一歩踏み出した瞬間。
「はいはい、椿!秋人くんも!喧嘩しな~いの!」
悠真が慌てて二人の間に割って入った。
「秋人く~ん?僕もいること忘れないでね?」
その声は、珍しく本気だった。
だが秋人は、悠真を見て肩をすくめる。
「へぇ、そうなんだ?美羽ちゃんにあんまり相手にされてないように見えるけど?」
「むきぃぃ!!」
悠真の顔が真っ赤になる。
「もう悠真くんは怒った!!いくぞ!椿!!
こんなやつこてんぱんにしてやるぅぅ!!」
「は?おい!!悠真!?」
椿は引きずられるようにコートへ向かう。
その様子を、秋人はクスクスと笑って見ていた。
「秋人くん!美羽さんと付き合いたいなら、美羽さんに勝たないといけませんよ?」
碧が、珍しく真顔で言った。
「はは、大丈夫。」
秋人はウインクする。
「まずは椿に勝たないとね?」
笛が鳴り、試合開始。
体育館の空気が、一気に熱を帯びる。
――美羽をかけた戦いが、始まろうとしていた。
その頃。
まったく事情を知らない美羽は、別の教室で数学の授業を受けていた。
静かな教室。
チョークの音。
「……くしゅん!」
小さなくしゃみをして、鼻をすする。
(ん~?風邪かなぁ……?)
窓の外は、春の光がきらきらしていた。
その光の下で、
彼女を巡る男たちの戦いが始まっていることなど、
知る由もなく――。



