〇ルカリで婚約指輪を買いました

1,被疑者
 ●石●●己(男) 昭和56年2月29日生まれ(満20歳)

2,鑑定事項
 a)被疑者は、犯行当時、妄想性障害(特定不能型)であった。
   ※妄想性障害とは、、持続した妄想が続く精神病性の精神障害である。
    妄想が最低1か月続き、かつそれが他の精神疾患によらないことが認定条件。
    統合失調症の場合妄想の他に幻覚、支離滅裂な言動、陰性症状(意欲低下・引きこもりなど)を引き起こすが、
    妄想性障害の場合は主症状として妄想のみが現れる。
 
b)被疑者は、×宿火葬場で身元不明の女性が火葬されると知り、
  その遺体が自分の婚約者であると思い込み、その妄想から犯行に至った。
  彼女を弔うのには自分が最もふさわしいると、×宿町職員が席を外した隙をついて遺骨を奪取。
  遺骨を自宅へ持ち帰った。

 c)被疑者が語った、婚約者(注・被疑者の認識)との関係性を以下に記す。

 「出会ったのは月のない美しい夜でした。
  父も死に、母も死に、天涯孤独だった私の元へ彼女が突然現れたのです。
  自宅の布団で眠っていると、窓の外に立っていました。
  私は彼女に一目惚れし、一緒に暮らすようになったのです。
  しかし、ある日。彼女は風呂の水に吸い込まれて、私の前からいなくなりました。
  姿を消したのです。
  私は懸命に彼女を捜しました。彼女が行きそうな場所――全てです。
  しかし、彼女は見つかりません。連絡も取れません。
  諦めかけていた時、私は彼女の遺体が見つかったという記事を見つけました。
  海で、溺れ死んでいたそうです。
  しかも、白無垢を着て。僕たちは結婚の約束をしていました。
  彼女はきっと、たとえ死んでも私と結婚したいと意思表示のために白無垢を着ていたのだと思います。
  私以外に、彼女を弔うのにふさわしい者はいません」

  以上。
  鑑識者の調べによると、被疑者が語っているような女性との関係性は事実確認できず。
  上記の通り通り、証言には支離滅裂な言動が随所に見られる。
  妄想性障害にしては妄想の奇異性が高く、本来ならば統合失調症に分類して然るべきだが、
  陰性症状(意欲低下や引きこもりなど)がほとんど見られない。
  本人の受け答えもしっかりしており、妄想部分以外は筋が通っているため、
  妄想性障害と診断した。

  被疑者は強固な妄想に取りつかれており、その影響を受けて犯行に及んだ。
  善悪の判断能力はあるが、その判断に従って行動する能力が著しく低下している状態である。

3,鑑定主文
 a)被疑者は,犯行当時,妄想性障害(特定不能型)であった。
 b)本件犯行は,妄想性障害による妄想や幻覚等に直接に影響された可能性が高い。
 c)被疑者の善悪の判断能力及びその判断に従って行動する能力は失われていた。