「よお秋庭ーお前、このあと同好会行く?」
「あー……今日はいかねぇかも」
「なんだよ、サボりかよ!」
「いやぁ、ちょっと腹痛くってさー」
「嘘つけ、ピンピンしてんじゃんか!」
「すまん花田、先輩に上手く言っといてくれね?」
片手を顔の前に立ててお願いのポーズをすると、花田は腕組みしてフンと鼻を鳴らした。
「しゃーねーなぁ、一つ貸しだぞ!」
「はは、頼むな」
花田に手を振って、俺は校門に向かった。
──それが彼との最後の会話になった。
俺は、藤実大学二年生、秋庭穂浪。
男バス同好会所属で、身長181cm。
見た目はワイルド。まあ、見た目だけなんだが。
自他共に認めるヘタレな自分を変えたかった俺は、大学一年の終わり、髪をルーズにして顎ヒゲを生やしてみた。
そしたら一瞬だけモテた。
かわいい彼女もできた。
だが、喜んだのもつかの間。
「見た目と中身、ぜんぜん違うねー」と言われ、俺は見事、三ヶ月でフラレた。
次にできた彼女にも、似たような理由でフラレた。
そんなことが続けば、恋愛に後ろ向きになってしまうのも当然だろう。
太陽が東から昇ったり、水が上から下に流れるのと同じように、誰もが陥る自然の摂理である。
要するに俺は、傷つくのが嫌で、恋愛から遠ざかっていた。
まぁ、恋愛以外も似たようなものではある。
よく言えば優しい。悪く言えば気が弱い。自信がないともいう。
体を動かすのは嫌いじゃないが、積極的にガツガツ行くタイプではない。
人と揉めたり、争うのも好きじゃない。
平和主義といえば聞こえはいいが、本質はやっぱりヘタレなのだ。
そんな自分が、
「雪生さんに、さわんなやぁぁあぁッッ!!!!」
女子を背中に庇って、必死にゾンビと戦ったり、
「ガアァァアッッッ!!!」
「……っしゃ!」
ラスボス的クリーチャーと死闘を演じることになろうだなんて、俺自身、まったく予想もしてなかったんだよな……
本当、世の中って分からん。
……というわけで。
これは、ヘタレな普通の大学生である俺が、ゾンビパンデミックに巻き込まれ、必死にあがいて、いつしか国の存亡に関わっていく……はずの、物語だ。
