犬神少女とカゲロウ鬼

 子供の頃、神晶石に願った。
 自分を好きだと言ってくれる人と、幸せな家庭を築きたいと。

 叶わぬ願いだと思っていた。
 こんな自分に、そんな未来が訪れるはずがないと。
 けれど今は、その願いが現実になりつつある。

 あれから数日が経った。
 千咲も影朧も怪我はすっかり癒え、神晶の社には、またいつも通りの穏やかな日常が戻ってきた。

「おはよう、四鬼崎さん」
「おはようございます、狗紙さん」
「今日もお仕事、頑張ろっか」
「はいっ!」

 交わす言葉は、以前と変わらない。
 けれど、並んで歩くその距離も、向け合う視線も、確かに違っていた。

 完