試合開始。
一同整列しての礼をして、各自守備につく。
先攻は深水女子。
一番打者は日佳留。
日佳留はフィールド上を見渡す。
先週の宣言通り、盾がピッチャー。
センターにアバドン、ショートにステラ。
他の守備位置に居るのは、超野球少女ではないのだろう。
直感的にそう理解する。
闘志というか、ぎらつくものが無かったからだ。
(センターとショートに向けて打つのは危ない。
とにかく転がせば、私の縮地で一塁は確実に踏めるはず!)
日佳留は右打者なので、流し打ちを意識することに決める。
「――無駄ですわよ。
貴女はわたくしからヒットを打つことは出来ない」
マウンド上の盾が宣言する。
だが、所詮煽りだ、と日佳留は判断した。
無視して意識を集中する。
第一球。
盾の身体から闘気が、緋色の炎が立ち上がる。
そして額に浮かぶ焔の字。
超野球少女として背負う能力。
正体こそわからないが、今は全力でぶつかるのみ。
日佳留は力を解き放つ。
金色の闘気が弾け、盾の炎と押し合いになる。
盾が足を上げた。
左投げの、オーバースロー。
ぐっと大きく引き上げられた腿。
そこから前へ飛び出すみたいな踏み込みを経て、白球は放たれる。
赤の闘気が乗り移り、火球となって迫る。
球速は百六十キロにも及ぶだろう。
が、日佳留には球が見えた。
変化も何も無い。
ただの剛球ストレート。
確実に狙ってのスイング。
転がすだけでいいのだ。
全力は必要ない。
だが――信じられないことが起こる。
日佳留のバットが火球を捉えた瞬間。
闘気が爆発を起こす。
衝撃に弾き返されるバットと日佳留。
そして白球は、叩きつけるような方向から打たれたにも関わらず――まるで跳ねるように高く浮き上がり、盾の方へと飛んでいった。
「な、何が起きたの!?」
尻もちをついた姿勢のまま驚く日佳留。
盾はそれに笑いもせず。
決闘に燃える、凛とした表情で答える。
「これがわたくしの奥義。魔球『炎城』ですわ」
言って、盾は落ちてきた白球を叩くように捕球する。
闘気の残り香が弾け、火の粉が舞う。
盾の身体から立ち上がる赤の輝きは衰えることなく、未だに燃え続けていた。
「どんな打法も無意味。
全ての力をわたくしの炎城はねじ伏せます。
そして必ず、わたくしの手元へ帰ってくる。
貴女達はヒットを打つことは出来ません。
例え全力のスイングでバットに捉えようとも、それをわたくしの闘気が叩き潰し、必ずフライアウトに仕留めるのですから」
盾の宣言。
その魔球の恐ろしさに、日佳留だけでない全員が打ち震えた。
想像の範疇を超えた魔球。
飛ばすことの出来ない魔球など、どうやって打てというのか。
深水女子の全員が唖然としていた。
「わたくしを打ち倒したければ、全力の力でかかってきなさい。
わたくしの焔を、貴女達のスイングで打ち消してみなさい!
見ての通り、わたくしは闘気に身を削られるような鍛え方はしていません。
この程度の魔球、何百球でも投げ続けてみせますわ。
スタミナ切れを狙っても無駄です」
言い放つ盾。
深水女子の誰一人として、盾の魔球に対向する手立てを思いつかなかった。
口を噤む。
日佳留も悲惨な様相でベンチへと戻っていく。
