
- 作品番号
- 1769224
- 最終更新
- 2026/01/05
- 総文字数
- 23,279
- ページ数
- 17ページ
- ステータス
- 完結
- いいね数
- 5
- ランクイン履歴
-
青春27位(2026/02/11)
この空は、僕の春の色だ。
2026.01.04 公開
※第63回キャラクター短編小説コンテスト「青春ボーイズライフ」応募作品です。
- あらすじ
- 冬休み中に高熱を出した杉本陽太は、原因不明の記憶喪失に悩まされていた。しかし、ひょんなことから出会った破天荒な同級生・鳥飼凪の登場により、陽太は振り回されながらもスクールライフを楽しんでいく。そんな中、陽太は凪に対して少しずつ「違和感」を抱いていき――。
この作品の感想ノート
この作品は、SF的な要素と青春特有の繊細な心の機微が綺麗に融合した、とても爽やかで素敵な物語でした。
冒頭で提示される「記憶喪失」というミステリーが、まさか「不登校生のためのリハビリ支援VRプログラム」という真相に着地するとは思いもよらず、その構成の巧みさに引き込まれました。物語後半、VR世界からのログアウトが「データの消去=死」ではなく「現実への帰還」であるという点が、切なくも前向きな気持ちにさせてくれます。
何よりも心を動かされたのは、陽太と凪の関係性です。出会った当初、陽太にとって凪は鬱陶しいだけの存在でしかなかったと思います。それが次第に、忘れたくない大切な親友へと変わっていく。その過程が丁寧に描かれていたからこそ、「鳥飼凪はプログラムされたAIである」という事実がより一層切なく響きました。特に屋上で凪が放った「陽太がここからいなくなればいいって思ってる」という言葉。字面だけを見れば突き放すような冷たさを感じますが、その裏には「現実へ帰ってほしい」「学校で頑張ってほしい」という、AIとしての使命を超えた「親友」としての深い愛情が込められているように感じ、胸が詰まりました。
また、現実とVR世界を繋ぐ接点として機能する田淵くんの存在も秀逸でした。VR内での行動と、現実での彼の優しさがリンクすることで、陽太がVR世界で得た温もりが、決して幻ではなく現実世界にも存在しうるものだと証明されています。不登校の理由についてもあえて「理由は特にない」とすることで、ドラマチックな解決を押し付けず、物語の輪郭がぼやけないよう配慮されていて素晴らしいと思いました。
物語全体を通して、空模様が陽太の心とリンクしている点も美しかったです。曇天のVR世界から、雲一つない快晴の現実へと還るラストシーン。「怪盗のせい」にして逃げていた彼が、最後には自らの意志で現実に「リログイン」し、見えない親友に向けて「見ててくれよ」と前を向く姿は、涙ごしに爽やかな希望を残してくれました。
素晴らしい物語をありがとうございました。
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