【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

 そして、赤髪の少女へ。

「ルナ」

「なっ……なによ……」

 小さな体を震わせて、ルナが後ずさる。その緋色の瞳には、恐怖と困惑が渦巻いていた。

「君の魔力は、竜をも屠る。古代の伝説にしか登場しない、神話級の力だ」

「あ、あたしの力は、ただ暴走するだけの……。力だけあっても制御できなきゃただのゴミだわ!」

「そんなことはない」

 レオンは、穏やかに、しかし力強く告げた。

「君の炎は世界で最も美しい。その炎は、二度と君を裏切らない。僕が、そう導いてみせる」

「え……? えっ?!」

 ルナの大きな瞳から、涙が溢れそうになる。

 最後に、銀髪の弓使いへ。

「シエル」

「……なにかしら?」

 男装の少女は、警戒心を剥き出しにしてレオンを睨んでいた。だが、その碧眼の奥には、かすかな期待が揺れている。

「君の弓は、神域に達する。一度視た標的は、決して外さない。神弓の継承者。それが、君の真の姿だ」

 シエルの目が見開かれる。

「性別も、身分も、関係ない。君は君だ。籠の鳥は、いつか自由に空を翔ける。僕に手伝わせて欲しい」

 シエルの唇が、わずかに震えた。

 四人が、息を呑んでいた。

 路地裏に、沈黙が落ちる。

 風の音すら止んだような、張り詰めた静寂。

 生まれて初めてだった。

 本当に、生まれて初めて。

 彼女たちは、自分の価値を認めてもらえた。

 誰も見向きもしなかった。誰も信じてくれなかった。才能がない、役立たずだ、落ちこぼれだと、何度も何度も言われ続けてきた。

 なのに、この傷だらけの男は、初対面で。

 こんな薄汚れた路地裏で。

 彼女たちの「本当の姿」を、言い当てた。

 ルナの大きな瞳から、堪えきれなかった涙が一筋、頬を伝って落ちた。

「そ、そんなの……」

 震える声で、ルナが呟く。

「信じられない……信じられるわけ、ないじゃない……」

「信じなくていい」

 レオンは静かに答えた。

「今は、信じなくていい。でも、一つだけ言わせてくれ」

 レオンは、魂を込めて告げた。

 この言葉だけは、絶対に届けなければならない。

「君たちの才能は本物だ――」

 四つの宝石のような瞳が、レオンを見つめている。

 警戒と、期待と、恐怖と、希望が入り混じった、複雑な光。

「――世界すら、ひっくり返せる」

 沈黙が、路地裏を支配した。

 風が吹いた。

 少女たちの髪が揺れる。黒と金と赤と銀が、薄闘の中で儚く舞った。

 やがて、シエルが苦笑を漏らした。

 男装していても隠せない、その優雅な仕草。公爵令嬢として育った気品が、ふとした瞬間に滲み出る。

「世界をひっくり返す?」

 シエルは呆れたように肩をすくめた。

「随分と恥ずかしいセリフね。正気なの?」

「正気だ」

 レオンは臆さずに答えた。

「僕には未来が視えるんだ。信じられないかもしれないけど、本当に、君たちとなら――」

「嘘つき!!」

 突然、エリナが叫んだ。

 その美しい顔が、怒りで歪んでいる。

 いや、違う。

 あれは怒りじゃない、とレオンは気づいた。

 恐怖だ。

 また傷つくことへの、期待を裏切られることへの、恐怖。

「どうせあんたも同じでしょ!?」

 エリナは腰の剣に手をかけながら、叫び続けた。

「優しい言葉で近づいて、信用させて、利用して、最後には売り飛ばす! そういう奴らを、あたしは何人も見てきた! 何人にも、騙されてきた!」

 シャリン、と金属音が響く。

 錆びた刀身。手入れが行き届いていない、粗末な剣。

 だが、その構えは本物だった。

 五年間、復讐だけを糧に生きてきた戦乙女の構え。隙がない。

「そんな甘い言葉、信じられるわけないでしょ!!」

「男なんて、みんなクズよ!」

 ルナも立ち上がった。

 涙を拭いながら、その小さな手に不安定な炎が宿る。

 揺らめく赤い光。制御しきれていない、暴走寸前の魔力。

「あたしの力を見て、みんな逃げていった! まるで爆弾みたいに腫れもの扱いだわ! なのに今さら、信じろなんて……!」

「あらあら」

 ミーシャは微笑みを崩さない。

 だが、その空色の瞳は氷のように冷たく凍りついていた。

「優しい言葉で近づいてくる人は、必ず裏があるものですわ。ふふっ、聖女を演じてきた私には、よーく分かります。あなたの目的は何かしら? 私たちを売り飛ばすつもり? それとも、もっと――――下品なこと?」

 聖女の仮面の下から覗く、毒を含んだ言葉。

 シエルも弓を手に取り、矢をつがえた。

「悪いけど、ボクたちはもう騙されないよ」

 その碧眼が鋭く光る。

「消えて! 今すぐ立ち去れば、命だけは助けてあげる」

 四人の殺気が、レオンを包んだ。