「おぉ、もう抜け出したのか……あれ?」
レオンは目を細めた。何かがおかしい。画面に映る光景に、違和感がある。
「金色が……多くないですか?」
「うーん……、確かにそうですね」
サキサカも眉をひそめた。
「例年、この段階でこれほど差がつくことはないんですが……あれっ?!」
サキサカが声を上げる。モニターに映し出された俯瞰映像を見て、レオンも目を見開いた。
湖畔寄りのルートに、異様な光景が広がっていた。金色のエアモンばかりが走っているラインがくっきりと形成され、まるで黄金の川が流れているかのようだ。他の色のエアモンは、その道に近づくことすらできず、右往左往している。
「どうやら金色の道ができてますね」
「金色の道? 一体どういうことだ?」
レオンは身を乗り出してモニターを凝視した。確かに、金色のエアモンだけがスムーズに駆け抜けていくルートが、明確に存在している。
「なんでこんなことに!?」
レオンが素っ頓狂な声を上げると、サキサカは感心したように顎に手を当てた。
「あー、なるほど。ミーシャ様は考えましたね」
「え? どういうことですか?」
「自チームのガーディアンたちで道を作っているんですよ」
サキサカは解説者の顔に戻り、淡々と説明を始めた。
「金色チームのガーディアンを一列に並べて通路を作っている。他チームのエアモンが近づこうとすれば即座に捕獲されますが、金色のエアモンは当然捕獲されない。そして、金色チームのエアモンたちをその安全な道に集中させているんです。いわば『黄金の通路』ですね」
「な、なんと……」
レオンは額に手を当てた。
あの腹黒聖女め。あの涼しい顔の裏で、こんなとんでもない作戦を練っていたのか。住民たちを組織的に動かし、事前に綿密な打ち合わせをしていなければ、こんな戦術は実現できない。おそらく何ヶ月も前から準備していたのだろう。
「アイツめ……そんなの違反じゃないんですか?!」
「ルール上は違反ではないですよ」
サキサカは苦笑しながら首を振った。
「ガーディアンをどこに配置するかは各チームの自由です。他のガーディアンに物理的に干渉するのはルール違反ですが、この配置自体は何も問題ありません」
「うーん、違反じゃないんですか……」
レオンは複雑な表情で頭を掻いた。ルール違反ではないが、明らかに想定外の戦術だ。来年からルールを改定すべきかもしれない。しかし今年は、もう手遅れだ。
「さすがと言うかなんと言うか……」
「むしろ、よく考えていると思いますよ」
サキサカの声には、純粋な感嘆の色があった。
「戦場では、ルールの範囲内でいかに相手の裏をかくかが勝敗を分けます。ミーシャ様は、まさにそれを実践している。住民たちを組織的に動かし、事前に綿密な作戦を立て、完璧なタイミングで実行する。これは一朝一夕にできることではありません」
サキサカの言葉に、レオンは黙り込んだ。
確かに、その通りだった。ミーシャは単にずる賢いだけではない。自分の地区の住民たちを信頼し、彼らを導き、一つの目標に向かって結束させた。それは、リーダーとしての才能の証だ。
「しかし、これは他チームはたまりませんね」
モニターには、困惑する他チームのガーディアンたちの姿が映し出されていた。金色の道を崩そうにも、他のガーディアンに干渉すればルール違反になってしまう。かといって放置すれば、金色のエアモンだけがどんどんゴールしていく。完全に裏をかかれた形だった。
「後半戦が荒れそうだな……」
レオンは、どこかで燃え上がっているであろう三人の姿を想像しながら、乾いた笑いを漏らした。
◇
その頃、王妃たちの控室では、まさに修羅場が繰り広げられていた。
「ちょっと! 何よこれぇ!!」
ルナが真っ赤な顔でミーシャに食って掛かった。緋色の髪が怒りで逆立ち、吊り目気味の瞳には炎が宿っていた。
「あら? ルール違反じゃないのに何を怒っているのかしら? ふふっ」
ミーシャは涼しい顔でコーヒーカップを傾けながら、聖女の微笑みを浮かべていた。しかしその空色の瞳の奥には、明らかに「してやったり」という光が宿っている。表向きは天然聖女、しかしその本性は極めて冷静な現実主義者にして腹黒。まさにミーシャの真骨頂だった。
「違反しなきゃ何してもいいってわけじゃないでしょ!?」
シエルも憤懣やるかたない様子で、ミーシャをビシッと指さした。
「あらあら、シエルまで。こういうのも含めて【競技】だと思いますわよ」
ミーシャは悪びれる様子もなく、優雅にコーヒーをすすった。
「知恵を絞り、戦略を練り、相手の裏をかく。それも実力のうちですわ。文句があるなら、来年はルールを変えたらいかがかしら? ふふっ」
その言葉に、ルナとシエルはぐぬぬと歯噛みした。悔しいが、ミーシャの言うことは正論だった。
レオンは目を細めた。何かがおかしい。画面に映る光景に、違和感がある。
「金色が……多くないですか?」
「うーん……、確かにそうですね」
サキサカも眉をひそめた。
「例年、この段階でこれほど差がつくことはないんですが……あれっ?!」
サキサカが声を上げる。モニターに映し出された俯瞰映像を見て、レオンも目を見開いた。
湖畔寄りのルートに、異様な光景が広がっていた。金色のエアモンばかりが走っているラインがくっきりと形成され、まるで黄金の川が流れているかのようだ。他の色のエアモンは、その道に近づくことすらできず、右往左往している。
「どうやら金色の道ができてますね」
「金色の道? 一体どういうことだ?」
レオンは身を乗り出してモニターを凝視した。確かに、金色のエアモンだけがスムーズに駆け抜けていくルートが、明確に存在している。
「なんでこんなことに!?」
レオンが素っ頓狂な声を上げると、サキサカは感心したように顎に手を当てた。
「あー、なるほど。ミーシャ様は考えましたね」
「え? どういうことですか?」
「自チームのガーディアンたちで道を作っているんですよ」
サキサカは解説者の顔に戻り、淡々と説明を始めた。
「金色チームのガーディアンを一列に並べて通路を作っている。他チームのエアモンが近づこうとすれば即座に捕獲されますが、金色のエアモンは当然捕獲されない。そして、金色チームのエアモンたちをその安全な道に集中させているんです。いわば『黄金の通路』ですね」
「な、なんと……」
レオンは額に手を当てた。
あの腹黒聖女め。あの涼しい顔の裏で、こんなとんでもない作戦を練っていたのか。住民たちを組織的に動かし、事前に綿密な打ち合わせをしていなければ、こんな戦術は実現できない。おそらく何ヶ月も前から準備していたのだろう。
「アイツめ……そんなの違反じゃないんですか?!」
「ルール上は違反ではないですよ」
サキサカは苦笑しながら首を振った。
「ガーディアンをどこに配置するかは各チームの自由です。他のガーディアンに物理的に干渉するのはルール違反ですが、この配置自体は何も問題ありません」
「うーん、違反じゃないんですか……」
レオンは複雑な表情で頭を掻いた。ルール違反ではないが、明らかに想定外の戦術だ。来年からルールを改定すべきかもしれない。しかし今年は、もう手遅れだ。
「さすがと言うかなんと言うか……」
「むしろ、よく考えていると思いますよ」
サキサカの声には、純粋な感嘆の色があった。
「戦場では、ルールの範囲内でいかに相手の裏をかくかが勝敗を分けます。ミーシャ様は、まさにそれを実践している。住民たちを組織的に動かし、事前に綿密な作戦を立て、完璧なタイミングで実行する。これは一朝一夕にできることではありません」
サキサカの言葉に、レオンは黙り込んだ。
確かに、その通りだった。ミーシャは単にずる賢いだけではない。自分の地区の住民たちを信頼し、彼らを導き、一つの目標に向かって結束させた。それは、リーダーとしての才能の証だ。
「しかし、これは他チームはたまりませんね」
モニターには、困惑する他チームのガーディアンたちの姿が映し出されていた。金色の道を崩そうにも、他のガーディアンに干渉すればルール違反になってしまう。かといって放置すれば、金色のエアモンだけがどんどんゴールしていく。完全に裏をかかれた形だった。
「後半戦が荒れそうだな……」
レオンは、どこかで燃え上がっているであろう三人の姿を想像しながら、乾いた笑いを漏らした。
◇
その頃、王妃たちの控室では、まさに修羅場が繰り広げられていた。
「ちょっと! 何よこれぇ!!」
ルナが真っ赤な顔でミーシャに食って掛かった。緋色の髪が怒りで逆立ち、吊り目気味の瞳には炎が宿っていた。
「あら? ルール違反じゃないのに何を怒っているのかしら? ふふっ」
ミーシャは涼しい顔でコーヒーカップを傾けながら、聖女の微笑みを浮かべていた。しかしその空色の瞳の奥には、明らかに「してやったり」という光が宿っている。表向きは天然聖女、しかしその本性は極めて冷静な現実主義者にして腹黒。まさにミーシャの真骨頂だった。
「違反しなきゃ何してもいいってわけじゃないでしょ!?」
シエルも憤懣やるかたない様子で、ミーシャをビシッと指さした。
「あらあら、シエルまで。こういうのも含めて【競技】だと思いますわよ」
ミーシャは悪びれる様子もなく、優雅にコーヒーをすすった。
「知恵を絞り、戦略を練り、相手の裏をかく。それも実力のうちですわ。文句があるなら、来年はルールを変えたらいかがかしら? ふふっ」
その言葉に、ルナとシエルはぐぬぬと歯噛みした。悔しいが、ミーシャの言うことは正論だった。



