「それでは、本日のメインイベント『グランド・アルカナ:四花・頂上決戦』を開催します!」
アリスの高らかな宣言が会場に響き渡ると、数十万人の観客が一斉に歓喜に沸いた。
うぉぉぉぉぉ!!
割れんばかりの歓声が湖畔を埋め尽くし、その熱狂は大気そのものを震わせるほどだった。
無数のエアモンたちが興奮したように空を舞い、湖面すれすれを滑空し、まるで歓声に合わせて踊っているかのように飛びまわっている。色とりどりの光の粉が撒き散らされ、会場全体が虹色のオーロラに包まれたような幻想的な光景が広がった。
これこそが、収穫祭最大の目玉イベントの地区対抗戦。今後一年の地区の誇りが決まるイベントなのだ。
一年間この瞬間を待ち望んでいた住民たちの興奮が、肌に伝わってくるようだった。
「エアモン参加の方はエントリーを、ガーディアン参加の方は会場へ移動してください!」
アナウンスに合わせて観客席がざわめき、人々が慌ただしく動き始めた。ある者はAR眼鏡を調整しながらエアモンを呼び出し、ある者はエアモン捕獲器具の設定をしながら指定エリアへと移動していく。老人も子供も、男も女も、誰もが目を輝かせて自分の役割に就こうとしている。
『グランド・アルカナ』は、この国ならではの住民参加型イベントだった。
前半は住民全員が参加するエアモンレースで、その結果によって後半戦のハンデが決まる。そして後半は、そのハンデを背負った四人の王妃たちが直接対決を繰り広げるという二部構成になっていた。つまり、前半で住民たちがどれだけ頑張るかで、自分たちが応援する王妃の勝敗が左右されるのだ。これほど住民たちの参加意識を高める仕組みはないだろう。
タワーマンション群は赤、黒、金、銀の四つの地区に分けられており、それぞれの地区にはシンボルとなる王妃がいる。
緋色のルナ、漆黒のエリナ、黄金のミーシャ、白銀のシエル。
住民たちは自分の住む地区の王妃のために、一年間エアモンを育て、戦略を練り、この日に備えてきたのだ。中にはわざわざ推しの王妃の地区へと転居していくものまでいるくらいである。
ルールは単純だが奥深い。各地区の住民は、自分のチームカラーのユニフォームを着たエアモンを出す側と、他チームのエアモンを捕獲するガーディアン役に分かれる。エアモンを出す側は、スタートゲートからゴールまでの道のりを、敵チームのガーディアンに捕まらないように走り抜けなければならない。ガーディアンは、ARで生成された虫取り網を振り回し、自分のチーム以外のエアモンを片っ端から捕獲していく。
より多くのエアモンをゴールに到達させたチームが勝利し、その順位に応じて後半戦のハンデが決まるという仕組みだった。
◇
アリスの合図と共に、競技がスタートした。
ARで作られた黄金に輝くゲートが湖畔に出現し、その中から数十万匹ものエアモンたちが次々と飛び出してくる。ウェーブごとに区切られながら放出されるエアモンの群れは、まるで虹色の洪水のようだった。赤、黒、金、銀――四色のユニフォームを身にまとったエアモンたちが、ゴールに向かって一斉に駆け出していく。
チーターを模した足の速いエアモン、ちょこまか俊敏なネズミ型エアモン、カメレオンのように周囲に溶け込むエアモン。一年間かけて育て上げられた個性豊かなパートナーたちが、飼い主の期待を背負って疾走している。
しかし、足が速ければいいというものでもなかった。ウェーブで区切られているため、速いエアモンは最前線に出てしまい、待ち構えるガーディアンたちの格好の的になってしまう。そのため、多くの住民は小さくてすばしっこいネズミ型やウサギ型のエアモンを選んでいた。集団に紛れ、隙を見て駆け抜ける――そんな戦略が定石となっていたのだ。
エアモンを出した住民たちは、AR眼鏡を通じて自分のパートナーの視界を共有し、リアルタイムで指示を送っている。
「右だ、右に逃げろ!」「そこ、網が来てる!」「今だ、走れ!」
観客席のあちこちから、そんな悲鳴にも似た声が飛び交っていた。
ガーディアンエリアでは、網を手にした住民たちが必死の形相で駆け回っている。老人も若者も、男性も女性も、汗だくになりながら他地区のユニフォームを着たエアモンめがけて網を振るっている。一年間の地区の誇りがかかっているのだ、誰もが本気だった。
捕まったエアモンは光の粒子となって消え、その瞬間、どこかで「あぁぁぁ!」という悲痛な叫びが上がる。しかし、無事にガーディアンエリアを抜けたエアモンには、「やったー!」という歓声が送られる。
会場全体が、一つの巨大な生き物のように歓喜と落胆を繰り返していた。
◇
レオンは放送席へ移動し、実況中継に参加していた。
特設ブースからは会場全体を見渡すことができ、巨大なモニターにはあらゆる角度からの映像がリアルタイムで映し出されている。隣には、この国で最も人気のあるスポーツ解説者が座っていた。
アリスの高らかな宣言が会場に響き渡ると、数十万人の観客が一斉に歓喜に沸いた。
うぉぉぉぉぉ!!
割れんばかりの歓声が湖畔を埋め尽くし、その熱狂は大気そのものを震わせるほどだった。
無数のエアモンたちが興奮したように空を舞い、湖面すれすれを滑空し、まるで歓声に合わせて踊っているかのように飛びまわっている。色とりどりの光の粉が撒き散らされ、会場全体が虹色のオーロラに包まれたような幻想的な光景が広がった。
これこそが、収穫祭最大の目玉イベントの地区対抗戦。今後一年の地区の誇りが決まるイベントなのだ。
一年間この瞬間を待ち望んでいた住民たちの興奮が、肌に伝わってくるようだった。
「エアモン参加の方はエントリーを、ガーディアン参加の方は会場へ移動してください!」
アナウンスに合わせて観客席がざわめき、人々が慌ただしく動き始めた。ある者はAR眼鏡を調整しながらエアモンを呼び出し、ある者はエアモン捕獲器具の設定をしながら指定エリアへと移動していく。老人も子供も、男も女も、誰もが目を輝かせて自分の役割に就こうとしている。
『グランド・アルカナ』は、この国ならではの住民参加型イベントだった。
前半は住民全員が参加するエアモンレースで、その結果によって後半戦のハンデが決まる。そして後半は、そのハンデを背負った四人の王妃たちが直接対決を繰り広げるという二部構成になっていた。つまり、前半で住民たちがどれだけ頑張るかで、自分たちが応援する王妃の勝敗が左右されるのだ。これほど住民たちの参加意識を高める仕組みはないだろう。
タワーマンション群は赤、黒、金、銀の四つの地区に分けられており、それぞれの地区にはシンボルとなる王妃がいる。
緋色のルナ、漆黒のエリナ、黄金のミーシャ、白銀のシエル。
住民たちは自分の住む地区の王妃のために、一年間エアモンを育て、戦略を練り、この日に備えてきたのだ。中にはわざわざ推しの王妃の地区へと転居していくものまでいるくらいである。
ルールは単純だが奥深い。各地区の住民は、自分のチームカラーのユニフォームを着たエアモンを出す側と、他チームのエアモンを捕獲するガーディアン役に分かれる。エアモンを出す側は、スタートゲートからゴールまでの道のりを、敵チームのガーディアンに捕まらないように走り抜けなければならない。ガーディアンは、ARで生成された虫取り網を振り回し、自分のチーム以外のエアモンを片っ端から捕獲していく。
より多くのエアモンをゴールに到達させたチームが勝利し、その順位に応じて後半戦のハンデが決まるという仕組みだった。
◇
アリスの合図と共に、競技がスタートした。
ARで作られた黄金に輝くゲートが湖畔に出現し、その中から数十万匹ものエアモンたちが次々と飛び出してくる。ウェーブごとに区切られながら放出されるエアモンの群れは、まるで虹色の洪水のようだった。赤、黒、金、銀――四色のユニフォームを身にまとったエアモンたちが、ゴールに向かって一斉に駆け出していく。
チーターを模した足の速いエアモン、ちょこまか俊敏なネズミ型エアモン、カメレオンのように周囲に溶け込むエアモン。一年間かけて育て上げられた個性豊かなパートナーたちが、飼い主の期待を背負って疾走している。
しかし、足が速ければいいというものでもなかった。ウェーブで区切られているため、速いエアモンは最前線に出てしまい、待ち構えるガーディアンたちの格好の的になってしまう。そのため、多くの住民は小さくてすばしっこいネズミ型やウサギ型のエアモンを選んでいた。集団に紛れ、隙を見て駆け抜ける――そんな戦略が定石となっていたのだ。
エアモンを出した住民たちは、AR眼鏡を通じて自分のパートナーの視界を共有し、リアルタイムで指示を送っている。
「右だ、右に逃げろ!」「そこ、網が来てる!」「今だ、走れ!」
観客席のあちこちから、そんな悲鳴にも似た声が飛び交っていた。
ガーディアンエリアでは、網を手にした住民たちが必死の形相で駆け回っている。老人も若者も、男性も女性も、汗だくになりながら他地区のユニフォームを着たエアモンめがけて網を振るっている。一年間の地区の誇りがかかっているのだ、誰もが本気だった。
捕まったエアモンは光の粒子となって消え、その瞬間、どこかで「あぁぁぁ!」という悲痛な叫びが上がる。しかし、無事にガーディアンエリアを抜けたエアモンには、「やったー!」という歓声が送られる。
会場全体が、一つの巨大な生き物のように歓喜と落胆を繰り返していた。
◇
レオンは放送席へ移動し、実況中継に参加していた。
特設ブースからは会場全体を見渡すことができ、巨大なモニターにはあらゆる角度からの映像がリアルタイムで映し出されている。隣には、この国で最も人気のあるスポーツ解説者が座っていた。



