【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

 ステージでは、美奈がラストのサビを歌い上げている。

『響け Arcana 永遠(とわ)に鳴り止まない♪』
『僕たちが選び取った 最高の物語(ストーリー)♪』

「おぉ……」

 レオンはその心の奥底まで貫く歌声に思わずため息を漏らす。

『さあ、行こう 新しい夜明けへ♪』
(メジャー)アルカナの旗を 高らかに掲げて!♪』

 その歌声は、アルカナみんなの思いを乗せ、どこまでも高く、どこまでも遠く、空の果てまで届きそうだった。


        ◇


 美奈が最後の音をどこまでも伸ばし、静かに歌い終えた瞬間、会場は一瞬の静寂に包まれた。

 そして次の瞬間、堰を切ったように大歓声が爆発した。

「うぉぉぉぉぉ!!」「最高ーー!!」「美奈ちゃーーん!!」

 数十万人の声が一つになって空を震わせ、その音圧はまるで嵐のようだった。立ち上がって拍手を送る者、涙を流しながら叫ぶ者、隣の見知らぬ人と抱き合う者。会場全体が感動の渦に飲み込まれていた。

 美奈は嬉しそうに手を振りながら、その歓声に応えた。白いワンピースが風にはためき、スポットライトを浴びて輝くその姿は、まさに天使のようだった。チェストナットブラウンの髪が光を受けて金色に輝き、その笑顔は見る者すべてを魅了する美しさを湛えている。

 アリスがステージに駆け寄り、興奮した声で結果を読み上げた。

「最高のパフォーマンス! ありがとうございました! ♡が719,324個! 平均♡2.93と、ぶっちぎりの好評価ですね! おめでとうございます!!」

 その数字に、会場から再び歓声が上がった。歴代最高記録だ。今日披露されたどのパフォーマンスよりも、いや、これまでの収穫祭のどの出し物よりも高い評価。美奈の才能が、数字となって証明された瞬間だった。

 が――――。

「……は?」

 美奈の表情が凍りついた。

「何? 2.93ってどういうこと?」

 天使のような笑顔が消え、そこには不機嫌を隠そうともしない険しい顔があった。さっきまで観客に手を振っていた同じ人物とは思えないほどの、豹変ぶりだった。

「なんで3じゃないのよ!」

 その声は、マイクを通して会場全体に響き渡った。観客たちがざわめき、互いに顔を見合わせる。

「……え? 歴代最高数値……ですよ?」

 アリスが冷や汗を流しながらフォローを試みた。機械の体を持つアンドロイドでさえ狼狽するほどの、予想外の展開だった。

「歴代最高? だから何? 私の歌を聴いて♡3以外を入れる理由がどこにあるの?」

 美奈は腰に手を当て、数十万人の観客を睨みつけた。その瞳には、怒りの炎が燃えている。

「♡3を入れなかった人は何が不満なの? なんか言いたいことあんの?」

 細い指で、観客席のどこかを指さしながら怒鳴った。どこの誰を指しているのか分からないが、その指の先にいる者は今頃震え上がっているに違いない。

 会場は凍りついていた。あれほどの感動的な歌声を聴かせてくれた人物が、たった0.07ポイントの減点に激怒している。そのギャップに、誰もが言葉を失っていた。

「あー、ミスタッチしちゃうこともありますよねっ! ありがとうございましたぁぁぁ! 皆さん、盛大な拍手をお願いします!!」

 美奈の剣幕に圧倒されてはいたものの、歌そのものは素晴らしかったのだ。会場から歓声と拍手が巻き起こった。

 アリスは必死の形相で美奈の腕を取ると、強引に控え席へと引っ張っていった。わらわらと他のアリスたちも集まってきて美奈を取り囲むようにして移送していく。その動きは、火消しに奔走する現場担当者そのものだった。

「天罰落ちるからね! 覚えてなさいよ!!」

 マイクも切られた美奈だったが、引きずられながらも憤懣やるかたない様子で喚き続けていた。その声は控え席に消えていくまでずっと響いており、最後に「絶対許さないから!」という捨て台詞が微かに聞こえた気がした。


        ◇


「あの子……凄いな……」

 レオンはロイヤル席からその一部始終を見ながら、圧倒されたように呟いた。

 歌の才能が凄いのは間違いない。あの歌声は、確かに魂を揺さぶるものがあった。しかし、それ以上に凄いのは、あの精神性だった。

 数十万人の観客を前にして、歴代最高評価を叩き出して、それでもなお「満点じゃない」と怒れる神経。普通の人間なら、0.07ポイントの減点など誤差の範囲だと笑って流すだろう。しかし彼女は違った。自分の歌は満点で当然だと、心の底から信じているのだ。

 それは傲慢と言えば傲慢だが、同時に、途方もない自信の表れでもあった。自分の才能を、自分の価値を、一片の疑いもなく信じ切っている。

「あの子、自分を神様のように思ってんじゃないかな? ねぇ?」

 レオンは振り返りながら、赤いジャケットに正装して戻ってきたレヴィアに声をかけた。さっきまでのヨレヨレのフリース姿はどこへやら、今は威厳ある姿に戻っている。しかしその表情は、どこか複雑だった。

「まぁ、そうじゃろうな。間違いないわ」

 レヴィアは渋い表情を浮かべながら、ぶっきらぼうに答える。

 その言葉には、何か含みがあるように聞こえた。単なる感想ではなく、何かを確信しているような響きがある。

 レオンは首を傾げたが、レヴィアはそれ以上何も言わなかった。ただ、ステージの袖に消えていった美奈の方を、真紅の瞳でじっと見つめているだけだった。