「きゃーーっ!」「キャハハハ!」「あたしが先ー!」
ドタドタと、小さな足音が寝室に響いた。
まるで、小動物の群れが突っ込んでくるような賑やかさ。
「ん……うるさいなぁ……」
安眠を破られたレオンは、毛布を引き上げて潜り込もうとした。
昨日は遅くまで会議が続いたのだ。
あと三十分……いや、せめて十五分だけでも――。
幼女たちが一斉にベッドに飛び乗り、容赦なく毛布を引き剥がしにかかる。
「ダメぇ!」「起きて!」「ママが呼んでるよ!」
小さな手が、あちこちから伸びてくる。
「何すんだお前ら! メッ!!」
レオンは慌てて毛布を取り返そうとした。
しかし、相手は四人。
こちらは寝ぼけ眼の一人。
勝敗は、最初から決まっていた。
「何すんの!」「起きなきゃダメなんだよ!」「パパ、いつまで寝てるの!」「お寝坊さんはメッ! だよ!」
四人の幼女たちと揉み合いになる。
毛布の争奪戦。
勝ち目のない戦い。
「寝かせろぉ!!」
グイッと毛布を引っ張った直後――。
バランスを崩した幼女たちが、レオンの顔の上に落ちてきた。
グハァッ!
小さいとはいえ、四人分の重さが顔面を直撃する。
息が、できない。
「危ないよぉ!」「メッ!」
「昨日遅かったんだよぉ……」
レオンはなんとか抜け出すと、渋い顔で幼女たちを横に座らせた。
髪はボサボサ、目は半開き。
とても王様とは思えない姿だった。
「起きた起きた!」「ヤッタァ!」「パパ起こせたー!」「あたしたちの勝ちー!」
幼女たちが、嬉しそうにはしゃいでいる。
金髪、銀髪、赤い髪、黒い髪――四人の娘たち。
みんな、ママそっくりの可愛い顔をしている。
ミーシャの面影を持つ金髪の子は、璃愛。
シエルに似た銀髪の子は、星羅。
ルナの血を引く赤毛の子は、緋奈。
エリナの黒髪を受け継いだ子は、凛。
どの子も三歳で、元気盛りのやんちゃ盛り。
レオンは大きくあくびをすると、両腕を大きく広げて、一気に抱き寄せる。
「うおりゃあ!」
「キャハハハ!」「パパぁ!」「くすぐったーい!」「もっとぎゅーってしてー!」
四人の小さな身体が、レオンの胸に収まる。
温かい。
柔らかい。
この上なく、愛おしい。
幼児特有の甘い香りが、鼻腔をくすぐった。
幸せだ――――。
心の底から、そう思った。
十数年前、追放された夜には想像もできなかった光景。
こんな未来が、待っているなんて。
こんな幸せが、訪れるなんて。
レオンは改めてぎゅっと幸せを抱きしめた。
◇
その時――ツーっと、青い影が壁に映し出された。
小さな龍の姿。
翼を羽ばたかせながら、こちらに近づいてくる。
「おっと、餌の時間だったな……」
レオンは枕元の眼鏡に手を伸ばし、かけた。
すると世界が一変――何もなかった空間に可愛い子龍の姿が浮かび上がる。
青い鱗を輝かせ、つぶらな瞳で嬉しそうにこちらを見つめているではないか。
そう、この眼鏡はAR眼鏡。
デジタルで合成された世界を、現実世界に重ね合わせて表示できるデジタル世界への入り口だった。
レヴィアと連日激しいディスカッションを繰り返し、たどり着いた自慢のインターフェースなのだ。
声やジェスチャーでもいろいろな操作ができるが、手のひらを見ればそこにスマホ画面のようにアイコンが並び、スマホのように操作できる。
今や大アルカナ王国の国民は、誰もがこの眼鏡を通じて、拡張された現実を生きている。
最初はいぶかしく思っていた国民たちも、今ではこのデバイスなしではどう生きていったらいいのか分からないくらいまでになじんでいた。
レオンは近づいてくる子龍を、そっと撫でてやった。
指先に、微かな振動が伝わる。
触覚フィードバック機能。
まるで、本当に生きているかのような感触。
「パパ、リューちゃんだー!」
「あたしも撫でるー!」
娘たちも、それぞれの子供用AR眼鏡をかけて、子龍に手を伸ばした。
子龍は嬉しそうに、四人の小さな手に頬を擦り寄せる。
レオンは指先でくるっと操作して、餌を放った。
キュォォォ!
子龍は嬉しそうに喉を鳴らすと、光る餌を頬張った。
もぐもぐと、幸せそうに咀嚼している。
「今日はお前にも活躍してもらわないとな。頑張れよ?」
キュィ!
子龍は、力強く頷いた。
その青い瞳には、確かな知性の光が宿っている。
ただのプログラムではない。
AIによって生み出された、一つの生命。
レヴィアが設計した、この国を支える無数の存在の一つなのだ。
「さぁ、パパも準備しないとな」
「朝ごはーん!」
「お腹すいたー!」
娘たちに手を引かれ、レオンは寝室を後にした。
ドタドタと、小さな足音が寝室に響いた。
まるで、小動物の群れが突っ込んでくるような賑やかさ。
「ん……うるさいなぁ……」
安眠を破られたレオンは、毛布を引き上げて潜り込もうとした。
昨日は遅くまで会議が続いたのだ。
あと三十分……いや、せめて十五分だけでも――。
幼女たちが一斉にベッドに飛び乗り、容赦なく毛布を引き剥がしにかかる。
「ダメぇ!」「起きて!」「ママが呼んでるよ!」
小さな手が、あちこちから伸びてくる。
「何すんだお前ら! メッ!!」
レオンは慌てて毛布を取り返そうとした。
しかし、相手は四人。
こちらは寝ぼけ眼の一人。
勝敗は、最初から決まっていた。
「何すんの!」「起きなきゃダメなんだよ!」「パパ、いつまで寝てるの!」「お寝坊さんはメッ! だよ!」
四人の幼女たちと揉み合いになる。
毛布の争奪戦。
勝ち目のない戦い。
「寝かせろぉ!!」
グイッと毛布を引っ張った直後――。
バランスを崩した幼女たちが、レオンの顔の上に落ちてきた。
グハァッ!
小さいとはいえ、四人分の重さが顔面を直撃する。
息が、できない。
「危ないよぉ!」「メッ!」
「昨日遅かったんだよぉ……」
レオンはなんとか抜け出すと、渋い顔で幼女たちを横に座らせた。
髪はボサボサ、目は半開き。
とても王様とは思えない姿だった。
「起きた起きた!」「ヤッタァ!」「パパ起こせたー!」「あたしたちの勝ちー!」
幼女たちが、嬉しそうにはしゃいでいる。
金髪、銀髪、赤い髪、黒い髪――四人の娘たち。
みんな、ママそっくりの可愛い顔をしている。
ミーシャの面影を持つ金髪の子は、璃愛。
シエルに似た銀髪の子は、星羅。
ルナの血を引く赤毛の子は、緋奈。
エリナの黒髪を受け継いだ子は、凛。
どの子も三歳で、元気盛りのやんちゃ盛り。
レオンは大きくあくびをすると、両腕を大きく広げて、一気に抱き寄せる。
「うおりゃあ!」
「キャハハハ!」「パパぁ!」「くすぐったーい!」「もっとぎゅーってしてー!」
四人の小さな身体が、レオンの胸に収まる。
温かい。
柔らかい。
この上なく、愛おしい。
幼児特有の甘い香りが、鼻腔をくすぐった。
幸せだ――――。
心の底から、そう思った。
十数年前、追放された夜には想像もできなかった光景。
こんな未来が、待っているなんて。
こんな幸せが、訪れるなんて。
レオンは改めてぎゅっと幸せを抱きしめた。
◇
その時――ツーっと、青い影が壁に映し出された。
小さな龍の姿。
翼を羽ばたかせながら、こちらに近づいてくる。
「おっと、餌の時間だったな……」
レオンは枕元の眼鏡に手を伸ばし、かけた。
すると世界が一変――何もなかった空間に可愛い子龍の姿が浮かび上がる。
青い鱗を輝かせ、つぶらな瞳で嬉しそうにこちらを見つめているではないか。
そう、この眼鏡はAR眼鏡。
デジタルで合成された世界を、現実世界に重ね合わせて表示できるデジタル世界への入り口だった。
レヴィアと連日激しいディスカッションを繰り返し、たどり着いた自慢のインターフェースなのだ。
声やジェスチャーでもいろいろな操作ができるが、手のひらを見ればそこにスマホ画面のようにアイコンが並び、スマホのように操作できる。
今や大アルカナ王国の国民は、誰もがこの眼鏡を通じて、拡張された現実を生きている。
最初はいぶかしく思っていた国民たちも、今ではこのデバイスなしではどう生きていったらいいのか分からないくらいまでになじんでいた。
レオンは近づいてくる子龍を、そっと撫でてやった。
指先に、微かな振動が伝わる。
触覚フィードバック機能。
まるで、本当に生きているかのような感触。
「パパ、リューちゃんだー!」
「あたしも撫でるー!」
娘たちも、それぞれの子供用AR眼鏡をかけて、子龍に手を伸ばした。
子龍は嬉しそうに、四人の小さな手に頬を擦り寄せる。
レオンは指先でくるっと操作して、餌を放った。
キュォォォ!
子龍は嬉しそうに喉を鳴らすと、光る餌を頬張った。
もぐもぐと、幸せそうに咀嚼している。
「今日はお前にも活躍してもらわないとな。頑張れよ?」
キュィ!
子龍は、力強く頷いた。
その青い瞳には、確かな知性の光が宿っている。
ただのプログラムではない。
AIによって生み出された、一つの生命。
レヴィアが設計した、この国を支える無数の存在の一つなのだ。
「さぁ、パパも準備しないとな」
「朝ごはーん!」
「お腹すいたー!」
娘たちに手を引かれ、レオンは寝室を後にした。



