「では、これから大逆転するぞ。いいね?」
レオンは静かに、けれど力強く宣言した。その翠色の瞳の奥で、黄金の光が確かに輝いている。
「もっちろん!」
ルナが真っ先に拳を突き上げた。運命を結んだばかりの少女の瞳には、かつてない輝きが宿っている。
「あの魔物どもなんて、吹き飛ばしてやって!」
シエルが銀髪を揺らしながらグッと拳を握った。
「全てあなたにお任せしますわ。ね? 私の旦那様?」
ミーシャが爽やかな微笑みを浮かべる。その空色の瞳には、深い信頼と、隠しきれない愛情が溢れていた。
「……早くやっちゃって」
エリナも挑戦的な笑みを見せた。
五人は、互いを見つめ合った。
言葉はいらなかった。視線を交わすだけで、互いの想いが伝わってくる。
寿命を差し出す覚悟は、とうに決まっている。世界を救うために。大切な人たちを守るために。
そして何より――この五人で、共に生きていくために。
レオンはゆっくりと目を閉じた。
四つの温もりが、魂の奥底で繋がっているのを感じる。まるで、五本の指が一つの手になるように。五つの川が一つの大河になるように。別々だった魂が、今、一つに溶け合おうとしている。
エリナの強さが、ミーシャの聡明さが、ルナの情熱が、シエルの純真さが、レオンの中に流れ込んでくる。
その全てがレオンの中で一つになり、巨大な力へと収束していく。胸の奥で何かが目覚め、血潮が熱く滾り始める。これが――運命を創る力。世界の理を書き換える、神の領域の力。
レオンは天を仰ぎ、魂の底から叫んだ。
「我が願いに応え、邪悪な者どもに終焉の鉄槌を!」
その声は牢獄の壁を震わせ、天井を揺らし、大地の奥深くまで響いていく。それは祈りであり、誓いであり、そしてイザベラへの宣戦布告だった。
「【運命創造】!!」
レオンがぐっと拳を掲げた瞬間――奇跡が顕現した。
ブワァァァッ!
五人の身体から、黄金の輝きが吹き上がった。それは生き物のように渦を巻き、螺旋を描きながら天井へと昇っていく。五つの魂が一つの奔流となり、五つの命が一つの奇跡となって、世界を塗り替える力へと変わっていく。
眩い。あまりにも眩い。
辺りが――黄金の光に包まれた。闇を払い、絶望を焼き尽くし、全てを塗り替える圧倒的な輝きの奔流。牢獄の壁が、天井が、鉄格子が、その光の中で透けていくように見える。
レオンは不思議な感覚に包まれていた。
身体が、軽い。いや――身体がない。幽体離脱のように、下の方に自分の肉体が牢獄に残っているのが見える。
意識だけが――黄金の輝きの渦に乗って、上空へと舞い上がっていく。
牢獄の天井をすり抜け、石造りの遺跡を貫通する。冷たい岩盤を、湿った土を、全てを透過して昇っていく。そして――空へ。
青い空がレオンを迎えた。どこまでも広がる、澄み渡った蒼穹。
地下の牢獄とは全く違う無限の青。風が頬を撫でる感覚がある。身体がないはずなのに、風を感じる。不思議な感覚だった。まるで魂そのものが空を泳いでいるような――鳥になった気分とはこういうものなのだろうか。自由で、軽やかで、どこまでも行けそうな――そんな解放感。
けれど、その感慨は長くは続かなかった。
ぐぐぐっと一気に王都の方へと流されていき――眼下を見下ろした瞬間、その心臓が凍りついた。
そこには地獄絵図が広がっていた。
十万の魔物。黒く、おぞましい大軍勢が、王都を目指して森を進軍している。森の木々を草のようになぎ倒し、大地を蹂躙しながら進んでいく。ゴブリン、オーク、ワーウルフ、そして名も知らぬ異形の魔物たち。それらが波のように、津波のように、大地を覆い尽くしていた。
黒い絨毯。死の行軍。見渡す限りの、殺意の海。
その中心には、まるで恐竜のような見たこともない巨大な魔獣たちが闊歩している。城壁すら一撃で崩すであろう、破壊の権化たち。一歩進むたびに大地が震え、一声吼えるたびに空気が震撼する。
「なんて……凄まじいんだ……」
レオンは戦慄した。背筋を冷たいものが這い上がる。あれが王都に到達したら、何十万という罪なき人々が虐殺される。子供たちが。老人たちが。明日を夢見る若者たちが。全てが、あの黒い波に飲み込まれるだろう。
軍勢の先頭には、クリスタルで作られた豪華な輿が見えた。陽光を受けて妖しく煌めくその上に、白い人影が立っている。イザベラだ。彼女がこの地獄を指揮している。美しい微笑みを浮かべながら、破滅の指揮者として君臨している。まるで死神が人の皮を被っているかのような、その美しさがかえって恐ろしかった。
彼らの運命を――街を滅ぼすという運命を、今から塗り替える。
けれど、どうやって?
こんな凄まじい死の行軍を止める方法など、あるのだろうか。レオンは首を傾げた。
【運命創造】が何をするのか、まだ分からない。ただ、魂の奥底で何かが動き始めているのを感じる。巨大な歯車がゆっくりと回り始めるような、運命そのものが書き換えられていく予感。世界の理が軋む音が、確かに聞こえる。
レオンは静かに、けれど力強く宣言した。その翠色の瞳の奥で、黄金の光が確かに輝いている。
「もっちろん!」
ルナが真っ先に拳を突き上げた。運命を結んだばかりの少女の瞳には、かつてない輝きが宿っている。
「あの魔物どもなんて、吹き飛ばしてやって!」
シエルが銀髪を揺らしながらグッと拳を握った。
「全てあなたにお任せしますわ。ね? 私の旦那様?」
ミーシャが爽やかな微笑みを浮かべる。その空色の瞳には、深い信頼と、隠しきれない愛情が溢れていた。
「……早くやっちゃって」
エリナも挑戦的な笑みを見せた。
五人は、互いを見つめ合った。
言葉はいらなかった。視線を交わすだけで、互いの想いが伝わってくる。
寿命を差し出す覚悟は、とうに決まっている。世界を救うために。大切な人たちを守るために。
そして何より――この五人で、共に生きていくために。
レオンはゆっくりと目を閉じた。
四つの温もりが、魂の奥底で繋がっているのを感じる。まるで、五本の指が一つの手になるように。五つの川が一つの大河になるように。別々だった魂が、今、一つに溶け合おうとしている。
エリナの強さが、ミーシャの聡明さが、ルナの情熱が、シエルの純真さが、レオンの中に流れ込んでくる。
その全てがレオンの中で一つになり、巨大な力へと収束していく。胸の奥で何かが目覚め、血潮が熱く滾り始める。これが――運命を創る力。世界の理を書き換える、神の領域の力。
レオンは天を仰ぎ、魂の底から叫んだ。
「我が願いに応え、邪悪な者どもに終焉の鉄槌を!」
その声は牢獄の壁を震わせ、天井を揺らし、大地の奥深くまで響いていく。それは祈りであり、誓いであり、そしてイザベラへの宣戦布告だった。
「【運命創造】!!」
レオンがぐっと拳を掲げた瞬間――奇跡が顕現した。
ブワァァァッ!
五人の身体から、黄金の輝きが吹き上がった。それは生き物のように渦を巻き、螺旋を描きながら天井へと昇っていく。五つの魂が一つの奔流となり、五つの命が一つの奇跡となって、世界を塗り替える力へと変わっていく。
眩い。あまりにも眩い。
辺りが――黄金の光に包まれた。闇を払い、絶望を焼き尽くし、全てを塗り替える圧倒的な輝きの奔流。牢獄の壁が、天井が、鉄格子が、その光の中で透けていくように見える。
レオンは不思議な感覚に包まれていた。
身体が、軽い。いや――身体がない。幽体離脱のように、下の方に自分の肉体が牢獄に残っているのが見える。
意識だけが――黄金の輝きの渦に乗って、上空へと舞い上がっていく。
牢獄の天井をすり抜け、石造りの遺跡を貫通する。冷たい岩盤を、湿った土を、全てを透過して昇っていく。そして――空へ。
青い空がレオンを迎えた。どこまでも広がる、澄み渡った蒼穹。
地下の牢獄とは全く違う無限の青。風が頬を撫でる感覚がある。身体がないはずなのに、風を感じる。不思議な感覚だった。まるで魂そのものが空を泳いでいるような――鳥になった気分とはこういうものなのだろうか。自由で、軽やかで、どこまでも行けそうな――そんな解放感。
けれど、その感慨は長くは続かなかった。
ぐぐぐっと一気に王都の方へと流されていき――眼下を見下ろした瞬間、その心臓が凍りついた。
そこには地獄絵図が広がっていた。
十万の魔物。黒く、おぞましい大軍勢が、王都を目指して森を進軍している。森の木々を草のようになぎ倒し、大地を蹂躙しながら進んでいく。ゴブリン、オーク、ワーウルフ、そして名も知らぬ異形の魔物たち。それらが波のように、津波のように、大地を覆い尽くしていた。
黒い絨毯。死の行軍。見渡す限りの、殺意の海。
その中心には、まるで恐竜のような見たこともない巨大な魔獣たちが闊歩している。城壁すら一撃で崩すであろう、破壊の権化たち。一歩進むたびに大地が震え、一声吼えるたびに空気が震撼する。
「なんて……凄まじいんだ……」
レオンは戦慄した。背筋を冷たいものが這い上がる。あれが王都に到達したら、何十万という罪なき人々が虐殺される。子供たちが。老人たちが。明日を夢見る若者たちが。全てが、あの黒い波に飲み込まれるだろう。
軍勢の先頭には、クリスタルで作られた豪華な輿が見えた。陽光を受けて妖しく煌めくその上に、白い人影が立っている。イザベラだ。彼女がこの地獄を指揮している。美しい微笑みを浮かべながら、破滅の指揮者として君臨している。まるで死神が人の皮を被っているかのような、その美しさがかえって恐ろしかった。
彼らの運命を――街を滅ぼすという運命を、今から塗り替える。
けれど、どうやって?
こんな凄まじい死の行軍を止める方法など、あるのだろうか。レオンは首を傾げた。
【運命創造】が何をするのか、まだ分からない。ただ、魂の奥底で何かが動き始めているのを感じる。巨大な歯車がゆっくりと回り始めるような、運命そのものが書き換えられていく予感。世界の理が軋む音が、確かに聞こえる。



