光が、ゆっくりと収まっていった。
黄金の輝きが薄れ、牢獄に再び闇が戻ってくる。けれど、その闇はもう、絶望の色ではなかった。
レオンが、ゆっくりと目を開ける。
その瞳の色が――変わっていた。
未来を視るだけの「観測者」の翠色から。
未来を創造する「創造主」の、荘厳なる黄金色へと。
輝く黄金の瞳が、暗闇の中で燃えている。
それは、希望の光。
そして――勝利を創り出す者の光。
「みんな……」
レオンが、静かに、けれど確信に満ちた声で呟いた。
その声には、もう震えはない。迷いもない。ただ、揺るぎない確信だけがある。
「見えるよ……僕たちが勝つ未来が……はっきりと、見える」
その言葉に、四人の顔に笑みが浮かんだ。
エリナが、小さく頷く。
ルナが、拳を握る。
シエルが、涙を拭う。
ミーシャが、静かに微笑む。
希望が戻った。光が戻ってきた。
絶望は、終わったのだ。
今こそ――反撃の時だ。
◇
運命を書き換える力。
その力は、神の領域への挑戦に等しかった。
【運命創造】――凍てついた「確定した未来」の奔流に干渉する、禁忌の権能。
望む未来がどれほど奇跡に近くとも、相応の寿命を支払えば、どんな運命さえも捻じ曲げ、引き寄せることができる。
それは運命という絶対の法則に、人の意志で干渉する力だった。
しかし――。
そのための代償は『寿命』、それはあまりにも残酷だった。
レオンの視界に、金色の文字が浮かび上がる。
【スタンピードの完全停止、及び闇の組織『蝕月の鷲《・イーグル》』の壊滅に必要な生命エネルギー……寿命にして、二百年分】
その一文を読んだ瞬間、レオンの心臓が凍りついた。
二百年――――。
人の身では、到底持ち得ぬ寿命。
どんなに長生きしても、人間が生きられるのは精々百年。二百年など、不可能だ。
仲間を、世界を救う道が、目の前にある。
けれど、その扉を開ける鍵がない。
手が届きそうで、届かない。
希望が見えて、それが打ち砕かれる。
その絶望は、何も見えない闇よりも、遥かに残酷だった。
「そんな……」
レオンの声が、震える。
己の無力さに、レオンは唇を噛みしめた。血が滲む――――。
その時――彼の目に、インクが滲んだように小さく書き添えられた注釈が飛び込んできた。
【――その魂の限り、運命を共にすると誓った者たちの寿命を束ねることも可】
一瞬、心に希望の火が灯った。
仲間たちとみんなで、寿命を出し合えば。
一人あたり四十年。それなら、何とか――。
けれど、その希望は、すぐに消えた。
いや、消えたのではない。
罪悪感という、冷たい水に消されたのだ。
四十年。
人生の半分近く。
それは、仲間たちに若くして死を強いるのと同じではないか。
青春も、未来も、全てを奪うことになる。
人生これからだというのにスキルに命を差し出す――――。
それで、いいのか。
自分一人の覚悟で済む話ではない。
仲間たちの未来を、人生を、この絶望的な戦いに巻き込んで良いはずがない。
レオンの顔が、蒼白になる。
全身が、震え始める。
選択できない。
世界を救うために、仲間たちの人生を奪う。
それが、正しいことなのか。
分からない。
何も、分からない。
「レオン……?」
エリナが、不安そうに声をかけた。
「ど、どうしたの? 顔色が悪いわよ?」
ルナも、心配そうに覗き込んでくる。
「大丈夫ですか……?」
ミーシャが、優しく手を伸ばす。
「レオン……?」
シエルも、不安そうに見つめている。
仲間たちの優しい眼差し。
心配してくれる声。
それが、レオンの心を深く、深く締め付けた。
こんなに優しい仲間たちの、未来を奪うのか。
人生を、犠牲にするのか。
言えない。
言えるはずがない。
けれど――言わなければ、世界が滅ぶ。
レオンは、震える唇を開いた。
「実は……」
その声は、か細く、震えていた。
黄金の輝きが薄れ、牢獄に再び闇が戻ってくる。けれど、その闇はもう、絶望の色ではなかった。
レオンが、ゆっくりと目を開ける。
その瞳の色が――変わっていた。
未来を視るだけの「観測者」の翠色から。
未来を創造する「創造主」の、荘厳なる黄金色へと。
輝く黄金の瞳が、暗闇の中で燃えている。
それは、希望の光。
そして――勝利を創り出す者の光。
「みんな……」
レオンが、静かに、けれど確信に満ちた声で呟いた。
その声には、もう震えはない。迷いもない。ただ、揺るぎない確信だけがある。
「見えるよ……僕たちが勝つ未来が……はっきりと、見える」
その言葉に、四人の顔に笑みが浮かんだ。
エリナが、小さく頷く。
ルナが、拳を握る。
シエルが、涙を拭う。
ミーシャが、静かに微笑む。
希望が戻った。光が戻ってきた。
絶望は、終わったのだ。
今こそ――反撃の時だ。
◇
運命を書き換える力。
その力は、神の領域への挑戦に等しかった。
【運命創造】――凍てついた「確定した未来」の奔流に干渉する、禁忌の権能。
望む未来がどれほど奇跡に近くとも、相応の寿命を支払えば、どんな運命さえも捻じ曲げ、引き寄せることができる。
それは運命という絶対の法則に、人の意志で干渉する力だった。
しかし――。
そのための代償は『寿命』、それはあまりにも残酷だった。
レオンの視界に、金色の文字が浮かび上がる。
【スタンピードの完全停止、及び闇の組織『蝕月の鷲《・イーグル》』の壊滅に必要な生命エネルギー……寿命にして、二百年分】
その一文を読んだ瞬間、レオンの心臓が凍りついた。
二百年――――。
人の身では、到底持ち得ぬ寿命。
どんなに長生きしても、人間が生きられるのは精々百年。二百年など、不可能だ。
仲間を、世界を救う道が、目の前にある。
けれど、その扉を開ける鍵がない。
手が届きそうで、届かない。
希望が見えて、それが打ち砕かれる。
その絶望は、何も見えない闇よりも、遥かに残酷だった。
「そんな……」
レオンの声が、震える。
己の無力さに、レオンは唇を噛みしめた。血が滲む――――。
その時――彼の目に、インクが滲んだように小さく書き添えられた注釈が飛び込んできた。
【――その魂の限り、運命を共にすると誓った者たちの寿命を束ねることも可】
一瞬、心に希望の火が灯った。
仲間たちとみんなで、寿命を出し合えば。
一人あたり四十年。それなら、何とか――。
けれど、その希望は、すぐに消えた。
いや、消えたのではない。
罪悪感という、冷たい水に消されたのだ。
四十年。
人生の半分近く。
それは、仲間たちに若くして死を強いるのと同じではないか。
青春も、未来も、全てを奪うことになる。
人生これからだというのにスキルに命を差し出す――――。
それで、いいのか。
自分一人の覚悟で済む話ではない。
仲間たちの未来を、人生を、この絶望的な戦いに巻き込んで良いはずがない。
レオンの顔が、蒼白になる。
全身が、震え始める。
選択できない。
世界を救うために、仲間たちの人生を奪う。
それが、正しいことなのか。
分からない。
何も、分からない。
「レオン……?」
エリナが、不安そうに声をかけた。
「ど、どうしたの? 顔色が悪いわよ?」
ルナも、心配そうに覗き込んでくる。
「大丈夫ですか……?」
ミーシャが、優しく手を伸ばす。
「レオン……?」
シエルも、不安そうに見つめている。
仲間たちの優しい眼差し。
心配してくれる声。
それが、レオンの心を深く、深く締め付けた。
こんなに優しい仲間たちの、未来を奪うのか。
人生を、犠牲にするのか。
言えない。
言えるはずがない。
けれど――言わなければ、世界が滅ぶ。
レオンは、震える唇を開いた。
「実は……」
その声は、か細く、震えていた。



