月はきっと、星を願う

その夜。

私たちは、4人で天体観測に来ていた。

いつも通りの、街灯の少ない場所の川沿い。
星が、驚くくらい綺麗だった。

「やば、めっちゃ見えるじゃん、あれがオリオン座でしょ?で、あれがおおいぬ座!あっちには牡牛座!」

神楽ちゃんが楽しそうに空を指す。

「夜なのにテンション高すぎだろ、神楽」

澄井くんが呆れたように返す。

「……綺麗」

小さく呟く。

でも、違う。多分他の人には気づけないくらい__________星の配置が、わずかに歪んでいる。


終わりを示されているみたい。


「星」

隣で、晴月くんが呼ぶ。

「大丈夫か」

「……うん」

嘘をつく。

本当は、全然大丈夫じゃない。

でも、この時間を壊したくなかった。

その後、星座を見ながらその神話を話したり、1時間くらい4人で和気あいあいとしていた。


「帰るかー」

神楽が伸びをする。

「結構遅いしな」

澄井くんが時計を見て、そう言う。

私たちは、来た道を戻り始めた。4人で、並んで歩く。

どうでもいい会話をしながら。笑いながら。















至って普通の、帰り道。





















 

そのときだった。

 










____ふわっ。

 












風が吹く。反射的に、空を見る。

 








「……嘘」


 







見えた。星が、崩れる。というか、『消えていく』。

  










_________________来る。

 









理解してしまう。

 
口が、勝手に動く。

 

「……晴月くん」

声が震える。

「ん?」

振り向く。その瞬間。

遠くから、大きな…ヘッドライトの光。

速度を緩めず、ありえないスピードで、大きなトラックがこちらに向かってくる。






「っ、危な――」 

叫ぼうとした。













 

______________でも、遅い。

 

時間が、歪む。


音が消える。
 

スローモーションみたいに。


全部、見えてしまう。

 
これ、か。
 



「晴月くん!!」




人生で一番ぐらいの大声を出して、叫ぶ。

 
手を伸ばす。


届かない。


その一瞬。


彼が、こっちを見た。


驚きでも、恐怖でもなく、どこか、納得したみたいな顔で。

 



「……あぁ」

 

 

小さく、何かを言った気がした。

 
次の瞬間。

 

 

衝撃。

 

 

鈍い音。

 

 

視界が、白く弾ける。

 

 

 

「……っ!!」

 


 

声が出ない。

 

 

体が動かない。

 

 

 

気づいたときには。

 

 

 

____晴月くんが、相当離れた場所に倒れていた。

 

 

 

「……ぁあ…」

 

 

呼吸が、できない。

 

 

 

「やだ……」

 

 

 

足が、震える。

 

 

 

それでも走って、近づく。

 

 

 

一歩。

 

 

 

一歩。

 

 

 

 

晴月くんの隣に来た時、膝から崩れ落ちた。


「……晴月くん」

 
触れる。

 







温かい。

 

 

 

なのに。

 

 

 

動かない。

 

 
「晴月くん!」

叫ぶ。

「っ、澄井、救急車!早く!」

神楽が息を飲んで、すぐ澄井くんに頼む。

「分かった!」

視界の端っこで澄井くんがスマホを操作している。

「すみません大丈夫ですか…?」

トラックの運転手と見られる作業着を着た、白髪まじりのおじさんが走ってこちらに来て、声を掛ける。

「大丈夫ですか、じゃないでしょ。この状況!何言ってるんですか?!傷口圧迫するの手伝ってください!」

神楽が怒りながら、指示を出す。

「晴月くん、晴月くん!」

「北野起きろ、北野、北野!」

「救急です!男子高校生がトラックに跳ねられました!出血多量です!場所は…………」

それぞれがさっきまであんなに平和だったのに、慌ただしく動いていく。


「晴月くん、晴月くん!!!」