月はきっと、星を願う

付き合ったことを神楽と澄井くんに報告するか、二人で迷った末、2ヶ月経った今日、報告した。

「えっとー、あの二人にそろそろ言わないといけないなーて事があって…」

「え何?」

座っている神楽が立っている私に上目遣いで聞いてくる。

「あの実は、北野くん…晴月くんと付き合ってます」

神楽ちゃんの声が一拍遅れて広がる。

「え、ちょ、まって……え?」

目をぱちぱちさせながら、私と晴月くんを交互に見る。

「……あ、マジ?」

横で、澄井くんがぽつりと呟く。

「マジ」

晴月くんが、いつも通りのトーンで答える。

「いやいやいや、いつから!?」

神楽ちゃんが一歩前に出てくる。

「……2ヶ月前」

「え、全然気づかなかったんだけど!?ねぇ玲央!」

「まぁでも……」

澄井くんは少しだけ目を細めて、こっちを見る。

「なんとなくは思ってた」

「え、うそ!?」

「いや、雰囲気…明らかに北野と天河の雰囲気、変わってたし」

さらっと言われて、思わず言葉に詰まる。

「え、そんな分かりやすかった……?」

驚いて、思わずつっこむ。

「分かるやつには分かる」

そう言って、少しだけ笑う。

「……星」

神楽ちゃんの声が、少しだけトーンを落とす。
いつからか、お互いちゃん付けで呼び合うのをやめた。
 
「ちゃんと、分かってる?」

その一言で、空気が変わる。

「……ん?」

「付き合ってるって、どういうことか」

胸が、どくんと鳴る。

言葉にされていないのに、分かってしまう。

 
「……分かってるよ」

 
少しだけ間を置いて、答える。

「お互い分かってて、選んだの」

神楽が晴月くんを見てから、じっと私を見る。

そのあと、ふっと息を吐いて、

「そっかー」

それだけ言った。

でも、いつもの軽さは全くなかった。

「……止めないの?」 

思わず聞いてしまう。すると神楽ちゃんは、少しだけ笑った。

「止めたらやめるの?」

答えられない。

「ほら〜」

思わず肩をすくめる。

「それに相手が北野じゃ、噂信じてないから、止めるなんて無意味でしょ?」

そして、少しだけ視線を逸らして。

「まぁ、でもさ」

小さく、続ける。

「ちゃんと最後まで、一緒にいなよ」

その言葉。

『最後まで』という言い方が、胸に刺さる。

「中途半端が一番最悪だから」

静かに言う。

「……うん」

「それに北野も、星のこと悲しませたら許さないからね」

「あーい、分かってる。一目惚れした相手のこと、泣かせるほど俺人情なしじゃねーから」

「え、そうなの?」

驚いて、思わず晴月くんの事を見る。

「そうだけど?」

平然とした顔で言う。

その横で。

「まぁ、やっと付き合ったか、って感じか」 

澄井くんが呟く。

「え?」

「いや、お前らずっとそれっぽかったし。5月くらいからお互いのこと好きだっただろ?」

二人揃って絶句してしまう。

「そうなの!?」

神楽ちゃんが食いつく。

三人揃ってそれを流す。

「……無理だけは、すんなよ」

ぽつりと、言う。

「どっちもな」 

その一言に、全部見透かされてる気がした。

「……ありがと」
「ありがとな」 

小さく言う。その瞬間。

 

 

 

____ふわっ。

 

 


風が、吹いた。

 

 

 

反射的に、空を見る。

 

 

 

「……っ」

 

 

はっきりと、見える。

星の並びが、崩れていく。

 










まるで______________終わりに向かうみたいに。

 

 

 

 

「星?」

 

 

 

神楽ちゃんの声。

でも、返事ができない。

 

 

 

 









_____________近い。

 

 

 









 

確信してしまう。



 

「どうした」

 

 

晴月くんが、いつも通りに聞いてくる。

 

 

その『いつも通り』が、どうしようもなく、苦しかった。