月はきっと、星を願う

『ねぇ、ねぇってば!晴月(はるき)君!目覚ましてよ!』

草原に寝転がる俺に、彼女は泣きながら、叫ぶように声をかけている。

…きれいな顔だな。
目は大きく、瞳はビー玉みたいにキラキラしている。
目の上で切り揃えられている前髪。
胸元くらいの髪は茶色でふんわりと巻かれている。


なんでだろう。


どこか見たことがある気がする。
聞いたことのある心地いい声な気がする。

満天の星空の下。
月がないからか、星が主役になって、空を彩っている。

静かに空を見つめている俺と、膝立ちを崩したような格好をして、俺のそばで大泣きしている彼女。


他の人にはどう見えているんだろう。



なにか言葉を発しようとしても、うまく声が出ない。




『晴月君が私の我が儘に付き合ってくれて、生徒会長になってくれて、部活承認してくれて、天文学部。やっと設立できたんだよ?
なのに、なのに、なのになんで…』



彼女は誰なんだろう。探ろうとすればするほど、深いところに落ちていく。

























___あぁもう無理だ。





















『ねぇ、晴月君!目覚ましてよ!晴月君!』


空をただ見つめているから目は開いているのに、ずっと彼女は目を覚ませと言ってくる。

きっと彼女は俺の知っている人だ。
…いや、そんなレベルじゃない。



 










_____こいつは俺の大切な大好きな人だ。


    











彼女の名前。思い出せ。えっと…









  














_____あ、天河星(あまがわほし)、だ。


























『…っ!』

涙が俺の頬を伝った。

軽く息を呑む。そして何故か、笑みがこぼれてきた。

月がいない方が、星は輝けるんだ。

君が教えてくれたじゃないか。

それに君は…星は、選ばれた人間だったんだよ。

だから、な。もう、大丈夫だろ。

そして俺は、ゆっくりと目を閉じた。