暗闇の世界で君だけが光だった

彼の視線は私の手元に落ちている。
「あの担任また希空に押し付けたのか」
「いいんだよ。先生も忙しいからさ」
「……」
「ほら、ホームルーム始まるよ」
時計をちらりと見てつぶやくと。
「んじゃいくか」
私の持っていた資料の半分をひょいっと取って歩き出した。
「ちょ、待ってよ」
廊下にはばらばらだけど一つのような靴音が軽く響いていた。



チャイムが鳴る。
けだるげな学級委員の声から授業が始まった。
一時間目は英語だ。
予告していた通り、プリントが配られ小テストが始まる。
予習していたところだからあまり時間はかからなかった。
「先生できました」
「おお、水瀬は安定に一番だな。どれ……満点だ」
クラスの視線が集まる。
「安定だよな」「スゲー」
とクラスがざわめく。
「静かにしなさい。まだ終わってないだろう」
先生が一括し、はーいと言って問題とにらめっこを再開していた。
設定されたタイマーがなったのはそれから少ししてから。
「じゃー解説するぞ。水瀬。問三なんて書いた?」
「はい」
そういって立ち上がった。
すっと息を吸い、滑らかに英文を読み上げる。
声の調子、大きさ、姿勢でさえもまるでお手本のように整っている。
「完璧だ。座っていいぞ」
拍手が起こる。
「安定だわー」「帰国子女?めっちゃ発音きれいなんだけど」「希空に任せとけば安心だよね」