いつもと同じ教室。
がやがやとした空気を、澄んだ風が横切る。
「のーあ!おはよ」
作業していた手を止め顔をあげる。
そこには仲良しの彩花が立っていた。
「おはよう、あやちゃん。なんか眠そうだね。大丈夫?」
「そうなんだよ~昨日、彼氏と寝落ち通話してさ~」
「それは大変だったね。あ、今日英語のテストあるけど勉強した?」
「え?!今日なの!?やばっ、助けて希空」
「ふふ、いいよ」
こういう、代わり映えのしない日常。
そんな空気の中___。
「水瀬~職員室まで資料とり来てくれ」
「あ、はい」
「ちょ、あの担任希空の事使いすぎ。一発ぎゃふんと言わせてやる!」
「だ、だめだよあやちゃん。ありがとう」
今にでも殴り掛かりそうなあやちゃんを横目に、私は廊下に出る。
教室の空気は、いつも少し窮屈だ。
優等生として常に完璧でいないといけない。
頼まれたことをこなして、授業も真剣に聞いて。
成績を落とすこともなく、テストはいつも上位。
「水瀬ちゃんだから」「希空ちゃんホント頼りになる!」「まさに優等生だね」
周りが見ている水瀬希空は、私が望んで作った姿。
仮面をつけることで安心している。
だけど……たまに息苦しくなる。
……いつからこうなってしまったのだろう。
本当の自分を出してしまいたい。
そうしたら楽になれるのに……
資料を受け取り、教室へ急いで戻る途中。
「ああ、希空。おはよ」
不意に後ろから声がかかった。
振り向くと、幼馴染の冬木透夜がいた。
「おはよう透夜」
「おう」