危険すぎる恋に、落ちてしまいました。番外編

夜の別荘は、昼間とはまるで別の顔をしていた。
白い外壁は月明かりを受けて淡く輝き、窓からこぼれるオレンジ色の灯りが、海の闇に溶け込んでいる。

「すごいね、この別荘……!」

美羽はきょろきょろと見回しながら、感嘆の声を上げた。

「とっても綺麗!知り合い伝いとか?」

「家の親の別荘でな。今日は貸し切りだ。」

玲央がメガネの奥でどやっと胸を張る。

「えぇ~!?」

「さすが玲央くん!」

莉子は目を輝かせて拍手していた。

「美羽、知らないの?玲央くんの両親、藤堂グループの代表取締役だよ?」

「えっ……あのCMでよく見る藤堂グループ!?」

美羽は目を白黒させる。

「すご……そんな大企業の……」

「親が偉大なだけだ。俺は関係ない。」

玲央は照れたように視線を逸らした。

「それより夜はバイキングだぞ!」

悠真が一番テンション高く声を張り上げる。

「美羽ちゃん!一緒に食べよ!」

「バイキング!?食べる食べるぅ~!」

美羽は即答で立ち上がり、莉子も慌てて後を追う。

「待って美羽~!私も~!」

遼はその様子を見ながら、椿の肘をつついた。

「美羽ちゃんたら、色気より食い気だねぇ?」

「……人の女をそういう目で見るなよ。」

椿は低く睨み、遼は肩をすくめる。

「はいはい。独占欲強すぎ~ごちでーす!」




*ー夜のディナータイムー

食卓には、海鮮、肉料理、色とりどりのサラダやデザートがずらりと並んでいた。

「すご……全部おいしそう……!」

美羽と莉子は目を輝かせ、皿をいっぱいにしていく。

「いただきまーす!」

「美羽、食べ過ぎないでよ~?」

「大丈夫!今は別腹!」

碧は真剣な顔でシェフに尋ねていた。

「すみません。プロテイン系のメニューは……」

「碧くんー!?」

美羽は思わず吹き出す。

椿は静かに、ナイフとフォークで上品に食事をしていた。

(椿くん、……何しても様になるなぁ)

ちらっと見るだけで、胸がきゅっとする。

「てか玲央くん、食べないの?」

「あとでいい。今大事なデータをまとめているんだ。」

パソコンを叩きながらぶつぶつ言う玲央に、美羽は苦笑した。

こうして、にぎやかで楽しいディナーの時間は過ぎていった。




*ーそして夜の海へー

食後、外へ出ると、潮風が肌を撫でる。

「ね、ね!夜に集まるってことは……」

美羽は目を輝かせる。

「やっぱり花火かな?!」

「違う違う!」

「え?」

莉子が意味深に笑った。

「夏といえば……」

「……夏といえば?」

美羽が聞き返した、その瞬間。

「肝試しでしょ!!」

「………………へ?」

美羽の表情が、一気に凍りついた。

「え?美羽?」

「……あ、あはは……」

次の瞬間、美羽はくるっと踵を返した。

「私、急にお腹痛くなったから帰るね!」

「ちょっと待ってぇぇ!?」

莉子が慌てて腕を掴む。

「ど、どどどうしたの!?美羽ぇ?!」

「私は!寝るの!!今すぐぅぅ!!」

引っ張り合いになる二人。

実は――
美羽は喧嘩は強いが、おばけや肝試しがとにかく苦手なのだ。