危険すぎる恋に、落ちてしまいました。番外編

「はいはーい!次はスイカ割りね!」

莉子の号令で、砂浜に大きなスイカが置かれる。

「目隠しするよ~!」

最初に選ばれたのは――

「美羽ちゃん!」

「えっ、私!?」

目隠しをされ、棒を持たされる。

「右!もっと右!」

「違う違う、左!」

「そのまま前!」

「いや後ろ!」

「えーー?!どっち!?」

完全に混乱。

そのとき。

「……美羽。」

低い声。

「俺の声だけ聞け。」

椿の声だけが、すっと耳に届く。

「一歩前。……そこで、振れ。」

美羽は言われるまま、棒を振り下ろした。

――ごんっ!

「割れたー!!」

歓声が上がる。

目隠しを外すと、椿がすぐ近くにいた。

「すごい……椿くん、ありがとう!!」

「はっ、当然だろ。」

当たり前みたいに言うのが、なんだか嬉しい。






*ー休憩タイムー




パラソルの下。

美羽はタオルで髪を拭きながら、海を眺めていた。

「楽しいね。」

隣に座る椿が、短く頷く。

「ああ。」

少しの沈黙。

波の音だけが、ふたりの間を満たす。

「……美羽。」

「なに?」

「さっきの、大丈夫か?」

「?」

「怖かったら、無理すんなよ。」

その言葉に、胸がじんわり温かくなる。

「大丈夫。椿くんがいるし!」

椿は一瞬、言葉を失った。

「……可愛い事言うなよ…」

「え?」

「いや、なんでもねぇ。」

椿は立ち上がり、手を差し出す。

「もう一回、行くぞ。」

美羽はその手を取った。

「うん!」

ぎゅっと繋がれた手は、
太陽よりも、海よりも、熱かった。

こうして――
黒薔薇メンバーと過ごす、
騒がしくて、甘くて、忘れられない夏の一日は、
まだまだ続いていくのだった。