砂浜に足を踏み入れた瞬間、
じりっと焼けるような太陽と、きらきら光る海が一気に視界いっぱいに広がった。

「わぁ……！」

思わず声がこぼれる。

波が砕ける音、潮の匂い、遠くから聞こえる笑い声。
全部が「夏だよ」と言っているみたいだった。

「テンション上がるねぇ～！」

莉子がサンダルを脱ぎ捨て、砂浜に駆け出す。

「待って莉子！転ぶよ！」

美羽が慌てて追いかけようとした、その瞬間。

「――危ねぇ」

背後から腕を引かれ、体がぐっと引き戻された。

「きゃっ……！」

気づけば、椿の胸にぶつかっていた。

「足、砂に取られてただろ。」

低い声が、すぐ近くで聞こえる。

「……あ、ありがとう。」

顔を上げると、至近距離に椿の顔。
サングラス越しでもわかる、真剣な視線。

美羽の心臓が、ばくんと大きく跳ねた。

「おーいおーい！開始五秒でいちゃつかないでよ～！」

悠真の声に、はっと我に返る。

「い、いちゃついてない！」

「してたよね～？」

「してねぇ。」

遼が肩をすくめる。

「まあまあ。とりあえず海入ろうぜ？」

碧はすでに準備万端で、浮き輪を持っている。

「泳ぐ前に、準備体操を忘れずに！」

「碧くん、真面目すぎ！！」

「怪我は怖いですから。」

玲央はパラソルの下で、なぜかノートパソコンを開いていた。

「……日差し、強すぎだな。」

「玲央くん、何しに来たの！？」