披露宴が幕を閉じ、ゲストたちは名残惜しそうに会場を後にしていった。
花びらの香りがまだ漂うチャペルの外で、優花と楓介は互いに視線を交わし、静かに笑みを浮かべていた。
二人の頬には疲れの色も見えたが、それ以上に幸福の輝きが宿っていた。
「本当に、ありがとう」
優花が小さく呟くと、楓介は彼女の手を握り返し、深く頷いた。
「これからも、ずっと一緒に」
その姿を見つめていた彩夏は、胸の奥が温かく満ちていくのを感じた。
準備のすべてが、この瞬間のためだった。
二人の笑顔と両親の涙、ゲストの祝福
――そのすべてが重なり合い、結婚式という一日が完成したのだ。
ふと横を見ると、優斗がカメラを下ろし、静かに息をついていた。
「いい式でしたね」
その言葉に彩夏は微笑みを返し、目尻を指でそっと拭った。
「うん…本当に」
優斗は少し驚いたように彼女を見つめ、やがて柔らかく笑った。
「彩夏さんが泣くなんて、やっぱり珍しいですよ」
彩夏は照れくさそうに視線を逸らしながらも、心の奥で小さな芽が確かに育ち始めているのを感じていた。
夜の空気は澄み渡り、星が瞬いていた。
二人の新しい人生が始まるその日を支えた彩夏と優斗もまた、静かに自分たちの物語を歩み始めていた。
