披露宴の終盤、会場の照明が少し落ち、司会の声が響いた。
「それでは、新郎新婦の退場です!」
ゲストたちが一斉に立ち上がり、拍手と歓声が広がる。
優花は淡いブルーのカラードレスの裾を軽く持ち上げ、楓介と腕を組んで歩き出した。
二人の顔は赤らみながらも、幸せそのものの笑みを浮かべている。
「ありがとう!」
「おめでとう!」
ゲストたちが声をかけ、花びらが舞う中を二人はゆっくりと歩いていく。
優花は涙をこらえながらも笑顔を絶やさず、楓介は何度も深く頭を下げて感謝を伝えていた。
その光景を見つめていた彩夏は、胸の奥が熱くなり、思わず目頭を押さえた。
――準備のすべてが、この瞬間のためだった。
二人の幸せそうな姿に、心から「結婚っていいな」と思った。
横でカメラを構えていた優斗が、ふと彩夏の表情に気づき、驚いたように目を見開いた。
「彩夏さん…泣いてます?」
彩夏は慌てて笑みを作り、「ちょっと、感動しちゃって」と答える。
優斗は一瞬言葉を失い、やがて柔らかく微笑んだ。
「…いいですね。そういう涙は」
二人の視線が重なり、ほんの少しだけ心の距離が近づいたように感じられた。
やがて新郎新婦が扉の向こうへと姿を消し、会場は拍手と歓声に包まれたまま余韻を残していた。
披露宴は幕を閉じ、二人の新しい人生が静かに、そして華やかに始まっていった。
