課長が怒鳴り散らしている。僕に、というのはわかるが、なにを言っているのかちっともわからない。きっと日本語で怒鳴っているのだろうが、僕にはただの騒音にしか思えなかった。
「お前のような無能を雇ってやっているだけありがたく思え!」
唾を飛ばし、課長は激しい口調で怒鳴り続ける。それを薄ら笑いで聞いていた。
「なにへらへら笑ってるんだ、お前! だから契約のひとつも取れないんだろ!」
机を蹴飛ばす、大きな音が響き渡る。
ああうるさい、うるさいな。どうすれば課長は静かになるのだろう? 電源を切ればいいのかな。課長の電源、どこにあるんだろう?
ぼぅとそんなことを考えながら立ち尽くす。
「根性が足りないんだ、根性が! 一回、断られたくらいで諦めるな!」
また課長が机を蹴り、震えた文房具が落ちた。落ちた文房具を無意識に拾い上げ、唐突に課長の電源を切る方法に気づいた。カチ、カチ、とゆっくりスライダーを押していく。
「おい、お前、なにを」
僕が腕を持ち上げたのをみて課長は急に静かになったが、もうそんなのどうでもいい。それに早く電源を切ってしまわないと、きっとまたすぐにうるさくなる。
「な、待て。俺が言いすぎた。だから、な」
かまわずに腕を振り下ろす。瞬間、飛んだ液体が僕の眼鏡を汚した。
「うがーっ!」
課長がひときわ大きな騒音をまき散らす。早く、早く課長の電源を切らなければ僕に平穏は訪れない。
「おい、やめろ!」
机をまわって課長に近づこうとしたら、同僚に止められた。部内には課長だけではなく、多くの騒音に満ちている。これだけ全部、電源を切るのは大変そうだと途方に暮れた。僕はただ、静かな世界がほしいだけなのに。そうか、騒音が聞こえないようにしてしまえばいい。
胸ポケットからボールペンを引き抜き、右耳に突き立てた。僕の口からも大きな騒音が出たが、もう少しでそんなものも聞こえなくなる。迷わず左耳にもボールペンを突き立てた。
こうして僕に、静寂と平穏が訪れた。
【終】
「お前のような無能を雇ってやっているだけありがたく思え!」
唾を飛ばし、課長は激しい口調で怒鳴り続ける。それを薄ら笑いで聞いていた。
「なにへらへら笑ってるんだ、お前! だから契約のひとつも取れないんだろ!」
机を蹴飛ばす、大きな音が響き渡る。
ああうるさい、うるさいな。どうすれば課長は静かになるのだろう? 電源を切ればいいのかな。課長の電源、どこにあるんだろう?
ぼぅとそんなことを考えながら立ち尽くす。
「根性が足りないんだ、根性が! 一回、断られたくらいで諦めるな!」
また課長が机を蹴り、震えた文房具が落ちた。落ちた文房具を無意識に拾い上げ、唐突に課長の電源を切る方法に気づいた。カチ、カチ、とゆっくりスライダーを押していく。
「おい、お前、なにを」
僕が腕を持ち上げたのをみて課長は急に静かになったが、もうそんなのどうでもいい。それに早く電源を切ってしまわないと、きっとまたすぐにうるさくなる。
「な、待て。俺が言いすぎた。だから、な」
かまわずに腕を振り下ろす。瞬間、飛んだ液体が僕の眼鏡を汚した。
「うがーっ!」
課長がひときわ大きな騒音をまき散らす。早く、早く課長の電源を切らなければ僕に平穏は訪れない。
「おい、やめろ!」
机をまわって課長に近づこうとしたら、同僚に止められた。部内には課長だけではなく、多くの騒音に満ちている。これだけ全部、電源を切るのは大変そうだと途方に暮れた。僕はただ、静かな世界がほしいだけなのに。そうか、騒音が聞こえないようにしてしまえばいい。
胸ポケットからボールペンを引き抜き、右耳に突き立てた。僕の口からも大きな騒音が出たが、もう少しでそんなものも聞こえなくなる。迷わず左耳にもボールペンを突き立てた。
こうして僕に、静寂と平穏が訪れた。
【終】



