「はっ!」
がくんと頭が落ち、目が覚める。目の前には煌々と明るい画面、誰もいない室内は電気を落とされ、暗い。
「ヤバ、寝てた……」
ずり落ちた眼鏡を押し上げ、目を細めて画面を睨む。そこにはいつの間にか仕事ができあがっていた。
「おわっ、た……」
パソコンを落とし、ふらふらと立ち上がる。夜中というよりもすでに早朝の街は、おそりしく静かだ。
昨日、終業時間ギリギリで翌日の納品物を仕上げたところ。
『オレの提案した仕様の変更、先方から採用されたから。よろしく』
と、肩を叩かれて遠い目になり、十時間。長い戦いを俺は無事に制した。
駅へと向かいながら、街の誘蛾灯へと無意識に身体は引き込まれる。
「イラッシャイマセー」
ぎこちない声を聞きながら席に座り、無意識で端末を操作した。頼むのは納豆定食と決まっている。なぜなら、ワンコインで済むからだ。
なにをするでもなく、ぼーっと壁を見つめてものが出ていくるのを待つ。完全に虚無で、なにひとつ考えたくない。
「オマタセシマシター」
目の前に置かれた定食はほかほかと湯気を立てている。納豆を手に取り、視線はどこでもない宙を見ながら完全に自動運転でぐるぐると掻き混ぜた。ご飯の上にのせ、ゆっくりと掻き込む。滑らかな納豆がご飯を飲み物に変え、ずるずると胃の中へと消えていった。半分ほど納豆でご飯を食べたところで、味噌汁で口をリセットする。ワカメと申し訳程度に入った豆腐の味噌汁だが、なぜか身体に染みる。昨日の夜はエナドリだけだし、当たり前と言えた。ある程度、味噌汁を啜ったら今度は卵だ。黄身をぐるっと一周するくらいに醤油を回しかけ、箸で黄身と白身を混ぜていく。適当なところでそれを、残ったご飯にかけた。白いご飯がまだらに残るぐらいで混ぜるのはやめ、味付け海苔を開ける。海苔で卵かけご飯を包んで食べれば、もう優勝と言っていい。
黙々と海苔巻き卵かけご飯を平らげ、最後に残っていた味噌汁を飲み干す。
「はーっ」
息をついてようやく、俺は人間に戻っていた。
「ごちそうさまでした」
しっかりと前を見て手をあわせ、立ち上がる。
「アリガトウゴザイマシター」
これで家に帰ったら人間として、ぐっすり眠れそうだ。……とはいえ、二時間後には起きなければいけないが。
【終】
がくんと頭が落ち、目が覚める。目の前には煌々と明るい画面、誰もいない室内は電気を落とされ、暗い。
「ヤバ、寝てた……」
ずり落ちた眼鏡を押し上げ、目を細めて画面を睨む。そこにはいつの間にか仕事ができあがっていた。
「おわっ、た……」
パソコンを落とし、ふらふらと立ち上がる。夜中というよりもすでに早朝の街は、おそりしく静かだ。
昨日、終業時間ギリギリで翌日の納品物を仕上げたところ。
『オレの提案した仕様の変更、先方から採用されたから。よろしく』
と、肩を叩かれて遠い目になり、十時間。長い戦いを俺は無事に制した。
駅へと向かいながら、街の誘蛾灯へと無意識に身体は引き込まれる。
「イラッシャイマセー」
ぎこちない声を聞きながら席に座り、無意識で端末を操作した。頼むのは納豆定食と決まっている。なぜなら、ワンコインで済むからだ。
なにをするでもなく、ぼーっと壁を見つめてものが出ていくるのを待つ。完全に虚無で、なにひとつ考えたくない。
「オマタセシマシター」
目の前に置かれた定食はほかほかと湯気を立てている。納豆を手に取り、視線はどこでもない宙を見ながら完全に自動運転でぐるぐると掻き混ぜた。ご飯の上にのせ、ゆっくりと掻き込む。滑らかな納豆がご飯を飲み物に変え、ずるずると胃の中へと消えていった。半分ほど納豆でご飯を食べたところで、味噌汁で口をリセットする。ワカメと申し訳程度に入った豆腐の味噌汁だが、なぜか身体に染みる。昨日の夜はエナドリだけだし、当たり前と言えた。ある程度、味噌汁を啜ったら今度は卵だ。黄身をぐるっと一周するくらいに醤油を回しかけ、箸で黄身と白身を混ぜていく。適当なところでそれを、残ったご飯にかけた。白いご飯がまだらに残るぐらいで混ぜるのはやめ、味付け海苔を開ける。海苔で卵かけご飯を包んで食べれば、もう優勝と言っていい。
黙々と海苔巻き卵かけご飯を平らげ、最後に残っていた味噌汁を飲み干す。
「はーっ」
息をついてようやく、俺は人間に戻っていた。
「ごちそうさまでした」
しっかりと前を見て手をあわせ、立ち上がる。
「アリガトウゴザイマシター」
これで家に帰ったら人間として、ぐっすり眠れそうだ。……とはいえ、二時間後には起きなければいけないが。
【終】



