FBI連邦捜査官 file 1 Liar FBI連邦捜査官シリーズ

「もう無鉄砲なことはするな」

 ジェレミーは口を離すと、冷たく囁いた。

「私が間に合わなかったら、撃たれて死んでいたぞ。捜査官なら、慎重に行動するべきだった」  
「――俺に説教するために居残ったのか」

 トラヴィスも低く言い返した。甘く舌を絡めあったキスの香りなど、唇にも残っていないような剣呑さだ。

「俺はお前の部下じゃない。説教したければ、他をあたれ」 

 腕を振り払おうとしたトラヴィスを、ジェレミーは強い力で押さえつける。

「お前を死なせないためなら、たとえお前の頭が怒りで丸焼きになろうとも全く構わない。詰ろうが貶そうが、好きにすればいい。その権利はお前にある」

 そう言うと、また口を塞ぐ。トラヴィスを押さえつけながらの喰いつくようなキスだった。

「お前……急いで帰らなくていいのか……」

 トラヴィスは小さく声を洩らした。

「アリスンは私を呼びつけたかっただけだ」
「愛されて……いるな」
「彼女が愛しているのは権力だ」

 ジェレミーはトラヴィスを優しくベッドの上に寝かせた。それから上着を脱ぎ、ネクタイを緩める。

「今日は大変な一日だった。今夜はもう寝よう」 

 トラヴィスは傍らで全ての服を脱ぐジェレミーを黙って見上げた。

「お前の裸を見ながら寝るのか?」
「そうだ」

 均整のとれた肉体が露になった。ジェレミーはトラヴィスの上に馬乗りになり、手を伸ばしてシャツのボタンをほどく。

「お前は怪我をしている。そんな時に、やれないだろう?」

 シャツは前だけをはだけたままにして、手際よくズボンやトランクスも脱がす。

「もう感じているのか?」

「悪かったな。目の前でストリップショウなんかするな。余計に寝られないだろうが」

 トラヴィスは思いっきり口悪く言ってやった。

 ジェレミーはそんな戯れ言も愉しいかのように、軽く頬にキスをする。

「わかった。それじゃ寝かせてやろう、お坊ちゃま」

 トラヴィスは何事か呟いた。だが聞こえてきたのは、熱い喘ぎだけだった。

「眠たくなったか?」

 トラヴィスは肩で息をつきながら、自分を頭上から覗き込む恋人をじろりと見た。

「……これで寝られたら……ただの阿呆だ」
「そうだな」

 ジェレミーは笑って、トラヴィスの横に寝転んだ。

「今夜はこれで終わりだ。怪我人をこれ以上興奮させたくない」

 トラヴィスを抱き寄せ、包帯の巻かれた頭を優しく撫でる。

「お前も変なところで強情だな」

 トラヴィスはおかしそうに笑った。

 ジェレミーはそのガーゼと絆創膏がトレードマークになった顔に、甘く口づけをする。

「その代わり、明日の朝目が覚めた時に、必ずそばにいる。だから、安心して目を瞑ってくれ」
「ふん、お坊ちゃまは添い寝してくれないと寝られないからな」

 トラヴィスは茶化すと、ジェレミーの頬に手を添え、逆に唇を奪う。二人は互いに抱き合い、求め合うようにキスをしあった。

「……お坊ちゃまは、添い寝だけじゃ寝られないんだぜ?」

 耳元で囁く。

「トラヴィス……」
「俺を抱きたくないのか?」

 挑発的に言った。

 ジェレミーは鼻先で大胆に誘う恋人の捜査官を、まるで言いつけの聞かない生徒を叱るかのように見つめた。だが、その表情は徐々に不敵に変わってゆく。

「もちろん、抱きたいに決まっている」

 声がかすれたのは、トラヴィスの悪戯のせいだ。

「じゃあ、抱けよ……遠慮するな。俺はお前に抱かれたいんだ」

 トラヴィスは無邪気に誘惑する。

 ジェレミーはゆっくりと口許で笑みを広げた。それが返事だった。

 トラヴィスを仰向けにすると、その上に覆いかぶさる。

「……興奮しすぎて、怪我が悪化しても、文句を言うな」
「文句を言われるために来たんだろう?……思い切り悪態をついてやるぜ」

 そうして、二人は愉しげに笑いあった。