家柄を気にしないのは天音の友人の犬森(いぬもり)桜月(さつき)もそうだ。犬は動物の中でも最下位、そして家系序列も三位。もう諦めがついているだろう。


「喜世って、どうして制服を着ているのに上から手袋をするの?」
「落ちこぼれに見せるためです!」
「笑顔で言っても……。まぁ、手を見せたくないのも私も同じよ」


 一宮家は制服を着てから、手袋やタイツなどを履く。喜世の母曰く、能力を抑えるためらしい。喜世は真っ黒な手袋を身に着けている。制御加工がされていて、能力を抑えられる。

 喜世の能力は――能力複製(コピー)――である。能力複製(コピー)は能力者に触れるとその能力を全く同じにコピーすることが出来る。それは皆怖がり、制御加工の手袋を身に着けるようになった。


「おはようございます。美世(みよ)様、清貴(きよたか)様」
「おはよう、天音。朝食が出来ているわ。今日は天音の誕生日よね〜!」
「天音、改めておめでとう。ついに十七か。喜世も入学するし頼んだぞ」
「いえ。私が守られているようなものです」


 実際、天音は喜世に守られてばかり。何をしても執事のように、従者のように……喜世が守ってくれるのだ。


「美世様、行ってまいります。何かありましたらご連絡いたしますので」
「わかったわ。喜世、天音に迷惑かけないようにね」
「分かりました」


 喜世と天音は家を出てすぐに道路の端へと寄った。こっち側から来る人達はまだ眠っているのか、それとも支度中かで、人は喜世と天音のみだ。登校時は無言。常にあたりを見回している喜世に話しかけるのは難しい。

 天音はふと、今後について考え始めた。