これは、とある異端児達の話だ。

―“異端児”

 この年に生まれた能力者達のことを指す。
 そして――多くの異端児が生まれた十年間のことを“異端児の時代”と言うのだ。









「おはようございます、天音(あまね)様」
「おはよう。ごめんなさいね。毎朝、喜世(きよ)に甘えてばかりで」
「いえ。大丈夫です。それより、朝の支度を」


 異端児の時代に生まれた序列一位の本家、一之瀬(いちのせ)家の長女・天音は“開花の十三”に能力が開花せず、分家の中で一番身分が低い一宮(いちのみや)の養子へとなった。

 この家系は、序列が重要だ。一位の家系は特殊能力を持ち合わせた一家のみが君臨することが出来る。
 一宮は喜世のみ能力を持ち合わせている。つまり、喜世は男子特有の“開花の十八”で新たな能力が開花しないと最下位から成り上がることが不可能になる。どの家も本家になることを目指している。

 そこで唯一求めていないのが、一宮だ。だからか、何十年も最下位のまま。成り上がりなど不可能のなのだ。


「喜世、私の世話はもういいわ。どうせこの家を出ていくのだし」
「そんなっ。天音様に使えるのが私の仕事です」