「おはよう、梨紗」
声を掛けられて顔を上げる。茶色い髪を無造作に撫でつけた男子生徒が、人懐っこい笑顔で隣の席に座った。
「......おはよう」
名前はわからない。でも、この席に座る権利がある人なんだろう。そう判断して私は小さく頷いた。
「今日もいい天気だな」
「......そうだね」
彼は何か言いたそうに私を見ていたけれど、私にはその視線の意味がわからなかった。
昼休み。いつものように一人で屋上に向かおうとすると、また同じ男子生徒が追いかけてきた。
「梨紗、一緒に食べない?」
「......ごめん。一人がいいの」
「そっか」
彼は少しだけ寂しそうに笑って、それでも諦めずに隣を歩いた。
「なぁ、梨紗は今、俺のこと覚えてる?」
突然の質問に、私の足が止まった。
「......どういう意味?」
「昨日のこと、今朝のこと、さっきのこと。俺と話したこと覚えてる?」
心臓が大きく跳ねた。この質問の意味を、私は理解してしまった。
「なんで......」
「図書館で偶然見ちゃったんだ。梨紗が毎朝、ノートに『今日会った人リスト』を書き込んでいること。それで調べて、わかった」
彼は真っ直ぐに私を見つめた。
「人への感情だけが、毎朝リセットされるんだろ?」
膝から力が抜けそうになった。誰にも知られたくなかった秘密。それを、この見知らぬ男子生徒は知っている。
「誰にも......言わないで」
「誰にも言わないよ。約束する」
彼は優しく微笑んだ。
「俺、桐島和哉梨沙の隣の席で、同じクラスで、りさのことが好きな男子だ」
声を掛けられて顔を上げる。茶色い髪を無造作に撫でつけた男子生徒が、人懐っこい笑顔で隣の席に座った。
「......おはよう」
名前はわからない。でも、この席に座る権利がある人なんだろう。そう判断して私は小さく頷いた。
「今日もいい天気だな」
「......そうだね」
彼は何か言いたそうに私を見ていたけれど、私にはその視線の意味がわからなかった。
昼休み。いつものように一人で屋上に向かおうとすると、また同じ男子生徒が追いかけてきた。
「梨紗、一緒に食べない?」
「......ごめん。一人がいいの」
「そっか」
彼は少しだけ寂しそうに笑って、それでも諦めずに隣を歩いた。
「なぁ、梨紗は今、俺のこと覚えてる?」
突然の質問に、私の足が止まった。
「......どういう意味?」
「昨日のこと、今朝のこと、さっきのこと。俺と話したこと覚えてる?」
心臓が大きく跳ねた。この質問の意味を、私は理解してしまった。
「なんで......」
「図書館で偶然見ちゃったんだ。梨紗が毎朝、ノートに『今日会った人リスト』を書き込んでいること。それで調べて、わかった」
彼は真っ直ぐに私を見つめた。
「人への感情だけが、毎朝リセットされるんだろ?」
膝から力が抜けそうになった。誰にも知られたくなかった秘密。それを、この見知らぬ男子生徒は知っている。
「誰にも......言わないで」
「誰にも言わないよ。約束する」
彼は優しく微笑んだ。
「俺、桐島和哉梨沙の隣の席で、同じクラスで、りさのことが好きな男子だ」
