目が覚めると、いつも世界は真っ白だった。
 正確に言えば、人に対する感情だけがまっさらな紙のように白く塗りつぶされている。昨日まで仲良く笑い合っていた友達も、苦手だった教師も、全てが初対面の他人になる。
 そんな朝を私は二年間繰り返してきた。

 高校二年生の春。桜の花びらが風に舞う朝、私ーー白石梨紗(しらいしりさ)は、また一人教室の隅で静かに息をしていた。