準透明人間の僕ら





 俺はただ、誰かに見てほしかった。

飾っている『杉原××』じゃなくて、素の『杉原××』を。

だからこそ、知ったように話す相馬さんにイラついたし、傷ついたりもした。

どの人にいっても同じようなことが返ってくる。

『君が頑張る必要なんてないよ。ありのままにいればいい』

そんなことができたら、とっくのまえにしている。

透明化するということは、相馬さんも何かに悩んでいるんだと、勝手に同じだと思ってた。

なのに、大人と同じようなことを言った。

『自分のことを見てこないやつなんかのせいで、消えるなんてクソじゃん』

『本当に自分を受け入れてくれる人に出逢えるきっかけになるよ』

出会えるわけがない。

漫画でも小説でもないのだから。

それでも、知っていた。

相馬さんがどんな人なのか、わかってた。

今思えば、あれも彼女なりの優しさだった。

俺を傷つけて、自分が消えた後で俺が苦しまないようにしようとしてた。

そんな彼女が俺に言ったのだ。

「捨ててしまえ」と。

相馬さんだって自分の話をしてくれて。それにはすごく勇気がいることだと知っている。

なら、彼女が言った通り、捨ててみようと思った。

大人たちと同じ言葉、だけど彼女は確かに『俺』を見て言ったんだ。

なら、その言葉を信じてやってみるしかない。

翌日、学校に行き自分が透明化していることに気付いた。これじゃ、素を出す前に誰にも話すこともない。

大事なことを忘れていて、肩を落としているときだった。

「あれ?杉原、どうした。元気ないじゃん」

前までよく話しかけてきた田中が話しかけてきたのだ。

「俺が見えるの?」

「?なに言ってんだ?見えるにきまってるだろ」

田中は「変な杉原」とだけ言い教室に入っていった。

なぜ、急に見えるようになったのか。

相馬さんも見えるようになっているのか。

疑問が絶えることなく浮かび上がるが、とりあえず授業を受けた。

休み時間に、彼女を見かけ名前を呼ぶも届かない。

彼女のクラスの女子に声をかけ、相馬という女子生徒はいるか聞いた。

だが、そんな子はいないと。

相馬さんはまだ、透明化している。

そこである仮説を立てた。

相馬さんは消えたいと願っている。

俺は前を向き始めた。

「透明化は、消えたいと願ってる人にしか起きない?」

この仮説が正しければ、相馬さんも消えたいと思わなくなれば、存在できる。

次、あったときに話そうと意気込んでいた。



 「ねぇ、完全に透明化するには時間がかかるんだ」

相馬さんが消えていったのをただ、見ているしかできなかった。

「何が言いたい?」

「そのままだよ。お姉ちゃんはまだ完全に透明化なんてしてないんだ」

「まだ、間に合う?」

「さあ?どうだろうね。でも、時間の問題だよ」

そう言って、綺麗な顔をした少年は消えていった。

相馬さんを見つけることができれば、まだ望みはある。

だけど、問題はどこにいるのか。

相馬さんがどういう人なのかは知っていても、好きな物や趣味は全く知らなかった。

「何も知らないじゃん」

よく思い出せ。

今までの相馬さんからどこに行きそうか、予測するんだ。

あそこかもしれない。

可能性は低いけど、そこしか思いつかない。

俺は、相馬さんがいるであろう場所へと走り出した。

この学校の敷地内はものすごく広く、移動するのに五分以上かかる。

移動教室の時はみんな慌ただしく用意をし移動し始める。

走っていると言っても、相馬さんが消えてから数分経っている。

間に合うか、正直わからない。

もしその場所にいなければ、相馬さんには一生会えないだろう。

「相馬さんっ」

彼女は不器用だった。

実際、手先も不器用だったし彼女自身も不器用だ。

わざと俺を突き放すことを言って、自分が消えた後の俺のことを気にしてた。

はじめてだった。

運動場で子供みたいに走って、紙飛行機を飛ばしたりしても、呆れながらも一緒にしてくれた。

素の俺を否定せずにいてくれた。

だから、気づいたときには好きになってた。

呆れながらも、俺の遊びに付き合ってくれて。

ちょっと手先が不器用で、気遣いができて。

少しむきになるところとか、憎まれ口叩いてるのに俺に向ける視線は気を許しているのがわかる。

そういうところが全部、好きになった。

相馬さんが勇気を出させてくれた。

まだ、何も言えてない。

好きという言葉も、ありがとうという感謝も。

言わなきゃいけないことがたくさんある。

向かっていた先は、いつも彼女と話していた校舎裏。

(ひかり)っ!」

俺は姿の見えないがそこにいると信じて、これからも一緒にいたい彼女の名前を叫ぶ。