準透明人間の僕ら

 あの日から私が避けようとしなくても杉原くんが私を避けるおかげか、まだ一度も話していない。

なんだかんだで美少年が言っていた期限まで残り一週間を切ったとき。

休み時間は、教室に置かれている趣味でもない本を読んで時間を潰す。

「杉原くんってなんか変わったよね」

「確かに。前より話しかけにくくなった」

「だけど、前より壁はなくなったよね」

「うんうん、前より今の方が高校生って感じする」

クラスの女子グループが話しているのが聞こえてきた。


なんだ、自分を作るのをやめたのか。

ただの他人の言葉がここまで聞くとは。

そして、なぜか杉原くんはあれから透明化することがなくなり彼との唯一の共通点もなくなった。

本を閉じて、騒がしい教室から逃げるように誰もいない所へ。

教室を出て、どこにいこうかキョロキョロと周りを見ると、前から男女の集団が歩いてきた。

「杉原くんさ、本当に話しやすくなったよね」

「え、本当?」

「おう!前より俺らと同じ高校生って感じで俺らはいいよな」

「なんか心境の変化でもあった?」

杉原くんが話の中心で、楽しそうに見えた。

杉原くんに気付かれる前に、静かな場所に向かうため、踵を返す。

後ろから名前を呼ばれた気がしたけど、気づかなかったフリをして歩くスピードを上げた。



あっという間に美少年にあった日から一か月経った。

私は美少年と出会った図書室へ行くと、そこには杉原くんがいた。

「あっ、あのっ」

「そろったね。じゃあ、話し合いを始めようか」

あれから、ずっとずっと杉原くんのことが頭から離れてくれなかった。

だけど、それは今日でおさらばだ。

「私は消えたいから、透明人間になりたい」

美少年の目をジッと見つめ、はっきりと口にした。

「本当に?」

「本当に消えたいよ」

私は、淡々と言葉を口にした。

「じゃあ、今度は君」

「俺は・・・」

杉原くんは視線を落とす。声はどこか浮かない声だった。

「答えられないなら、お姉ちゃんの方を透明化するだけだよ」

その言葉で杉原くんはバッと顔をあげて、私を見つめてくる。

「異論はないみたいだね。じゃあ、透明化するよ」

杉原くんが口を開いたが、その前に美少年が手をパンとたたいた。

だんだんと、体が透け始めるのがわかる。

杉原くんを見ると、目を見開いていた。

「杉原くん、こっちきて」

私の声を聞いて杉原くんは綺麗な顔を歪める。

「ありがとう」

私は感謝の言葉を述べる。

だけど、杉原くんはフルフルと左右に首を振るだけだ。

「嫌だ、嫌だ」

さいごに見たのは、今にも零れ落ちそうな涙を溜めた瞳でこちらを見ている杉原くんだった。