ガヤガヤと騒がしい休み時間に終わりを告げるチャイムが鳴り響く中、私は一人席を立つ。
だけどそんなことに目もくれず日直が声をあげた。
「起立。礼」
私はそれを冷めた視線で傍観する。
今日も私は透明人間になった。
「あれ?」
高校に入って二回目の春がやってきたころだった。
授業中に手をあげても、先生はこちらを見てくれない。そんな先生にクラスメイトは何も言わない。だから、試しに教室の中を歩き回ってみた。なのに、一向に先生もクラスメイトと目が合わないし、注意の声があがらない。
そこで、どうやら透明人間になったのだと理解する。どこまで認識されないのか、教室から出て学校中歩き回った。
結論から言うと、学校の中では誰にも認識されないことが分かった。
見えてないだけで、接触できたりはするから、休み時間にぶつかることがある。
驚くことに、ぶつかることで見えるらしいが、私のことをはっきり覚えているわけではないらしい。
一度、仲が良かった友人にぶつかったが、「すみません」と他人行儀に言われた。
でも、授業をサボると後で困るのは自分なので、授業はちゃんと受けていた。
それでも、眠くなった時や体育の時はよく、学校内を散歩していた。
桜の木が散り、葉が付き始めたことに同じ状況の人に出逢った。
「あれ?こんな時間になにしてるの?」
「え?見えてるの?」
彼も私と同じで学校内で透明化していたらしい。
「まさか、俺と同じで透明化している人がいるとは思わなかった」
「私も」
「まあ、こんな感じだし。困ったことがあれば、なんか言ってね」
そうして、私は彼とちょくちょく授業を抜け出しては話していた。
「あれ、今日も授業聞かなくていいの?」
心配そうに聞いてきた彼・杉原くんの隣に腰を下ろす。
杉原くんと話すときは、校舎裏の日当たりがよい場所だった。
この時間は、数学だった。私は数学が平均スレスレで、前までは授業を聞いていたけど。
「だって、家ですることがなくて予習してね。それでやったところ、説明されてもって感じなの」
「ああ、なるほどね。予習するなんて相馬さんらしくないね」
「何、そんなに勉強してないように見えるって言いたいの?」
まるで、私が勉強することがないような口ぶりで話す杉原くんを少しばかり睨んでやる。
「いーや、そうは思ってないよ。ただ、期末の時期になって泣きつかれてもね」
「あの時は苦手なところだったのもあるし、まさかテストするとは思わなくてっ」
しかも、まさかテストは透明化がなくなるとか思わなくて当日、友人に話しかけられて気づいたのだ。
その日のテストは散々だった。まだ、二日残っていたから、彼にお願いして勉強を見てもらった。
皮肉なことにテストは、一週間前から勉強したテストの点数と変わらなかった。
「俺は、別に家で勉強すれば点数はとれるしね」
杉原くんは学校で有名だった。頭もよければ運動神経もよく、顔も男の人は言われるのを嫌がるだろうが綺麗だった。
それに比べて私は頭も平均より上だけどそこまでいいわけでもなく、運動神経もできるわけでもできないわけでもなかった。
顔に至っては、映画の主人公たちとすれ違うだけのような所謂映画ではモブでどこにでもいるようなもの。
強いて言うなら、母譲りの色素が薄い髪。それがサラサラのストレートだったらもっと喜んだ。実際は、癖毛であちらこちらにはねる髪を整えるのに時間がに十分ほどかかる。最近は見られるのが杉原くんだけなので、全く髪の毛を整えることがなくなった。
「今日は何でサボってるの?」
「体育だから」
体育の日は参加しように誰も見えていないから、サボると決めている。
だから、杉原くんに会い来た。
「そっかー、あ。じゃあ、運動場空いてる?」
「男子は保健だから空いてると思うけど」
誰もいない、運動場。そんなところで何をするんだろう。
「いいこと、しない?」
ニヤッと意地悪そうな顔で笑う杉原くんを見て、眉間に皺が寄った。
「おお!誰もいない運動場って広いねー」
「いや、変わらないと思うけど」
冷ややかな目で杉原くんを見るも、そんなことなんかに目もくれない。
「で、何するの?」
「誰もいない運動場ですると言えば、かけっこでしょ!」
「・・・子供」
「勝った方が、ジュース奢られる」
「・・・拒否権は?」
「ないよ?」
曇りのない笑顔で言われも、恐怖しか湧かない。
「ここから、あの木のところまで」
ここから木まで百メートル以上ある。
運動が得意な杉原くん。
運動ができるものとできないものがある私。
そして、私は走るのが苦手だ。
「・・・負けた」
「早くない?」
でも、ジュースはただで欲しいのでスタートラインに立つ。
「よーい、スタート!!」
杉原くんの声を合図に地面を思い切り、蹴る。
杉原くんは運動神経がいいだけ、速い。
杉原くんに勉強でも負け、こんなゲームでも負けるのは癪だ。
「負けたくない」
だから、走るのが苦手だとか今は置いとく。
ぐんと足と足の幅を広げ、足を速く前に出しては地面を蹴る。
少しずつ、少しずつ、彼の隣へと。
ゴールまで五メートルのところでスピードを上げる。
「ふー!疲れたっ!!!」
木の下で疲れつき、倒れるように寝転ぶ。
「誰なの、負けるとか言っておきながら勝ったやつ」
悪態をつきながらも、私を起こすために手を差し伸べてくれる。
「ありがと」
「いーえ。じゃあ、ジュース買いに行こうか」
汗だくなりながらも、笑っている杉原くんをジーと観察する。
こういうところ、見たことがなかった。
「じゃあ、おー〇、で」
「ああ、あれね」
「冷たいやつ」
「了解しました」
結局、おー〇お茶は、売り切れていてチョコをもらった。
チョコは、ものすごく甘くて夕方になった後でもずっと口に残っていた。
だけどそんなことに目もくれず日直が声をあげた。
「起立。礼」
私はそれを冷めた視線で傍観する。
今日も私は透明人間になった。
「あれ?」
高校に入って二回目の春がやってきたころだった。
授業中に手をあげても、先生はこちらを見てくれない。そんな先生にクラスメイトは何も言わない。だから、試しに教室の中を歩き回ってみた。なのに、一向に先生もクラスメイトと目が合わないし、注意の声があがらない。
そこで、どうやら透明人間になったのだと理解する。どこまで認識されないのか、教室から出て学校中歩き回った。
結論から言うと、学校の中では誰にも認識されないことが分かった。
見えてないだけで、接触できたりはするから、休み時間にぶつかることがある。
驚くことに、ぶつかることで見えるらしいが、私のことをはっきり覚えているわけではないらしい。
一度、仲が良かった友人にぶつかったが、「すみません」と他人行儀に言われた。
でも、授業をサボると後で困るのは自分なので、授業はちゃんと受けていた。
それでも、眠くなった時や体育の時はよく、学校内を散歩していた。
桜の木が散り、葉が付き始めたことに同じ状況の人に出逢った。
「あれ?こんな時間になにしてるの?」
「え?見えてるの?」
彼も私と同じで学校内で透明化していたらしい。
「まさか、俺と同じで透明化している人がいるとは思わなかった」
「私も」
「まあ、こんな感じだし。困ったことがあれば、なんか言ってね」
そうして、私は彼とちょくちょく授業を抜け出しては話していた。
「あれ、今日も授業聞かなくていいの?」
心配そうに聞いてきた彼・杉原くんの隣に腰を下ろす。
杉原くんと話すときは、校舎裏の日当たりがよい場所だった。
この時間は、数学だった。私は数学が平均スレスレで、前までは授業を聞いていたけど。
「だって、家ですることがなくて予習してね。それでやったところ、説明されてもって感じなの」
「ああ、なるほどね。予習するなんて相馬さんらしくないね」
「何、そんなに勉強してないように見えるって言いたいの?」
まるで、私が勉強することがないような口ぶりで話す杉原くんを少しばかり睨んでやる。
「いーや、そうは思ってないよ。ただ、期末の時期になって泣きつかれてもね」
「あの時は苦手なところだったのもあるし、まさかテストするとは思わなくてっ」
しかも、まさかテストは透明化がなくなるとか思わなくて当日、友人に話しかけられて気づいたのだ。
その日のテストは散々だった。まだ、二日残っていたから、彼にお願いして勉強を見てもらった。
皮肉なことにテストは、一週間前から勉強したテストの点数と変わらなかった。
「俺は、別に家で勉強すれば点数はとれるしね」
杉原くんは学校で有名だった。頭もよければ運動神経もよく、顔も男の人は言われるのを嫌がるだろうが綺麗だった。
それに比べて私は頭も平均より上だけどそこまでいいわけでもなく、運動神経もできるわけでもできないわけでもなかった。
顔に至っては、映画の主人公たちとすれ違うだけのような所謂映画ではモブでどこにでもいるようなもの。
強いて言うなら、母譲りの色素が薄い髪。それがサラサラのストレートだったらもっと喜んだ。実際は、癖毛であちらこちらにはねる髪を整えるのに時間がに十分ほどかかる。最近は見られるのが杉原くんだけなので、全く髪の毛を整えることがなくなった。
「今日は何でサボってるの?」
「体育だから」
体育の日は参加しように誰も見えていないから、サボると決めている。
だから、杉原くんに会い来た。
「そっかー、あ。じゃあ、運動場空いてる?」
「男子は保健だから空いてると思うけど」
誰もいない、運動場。そんなところで何をするんだろう。
「いいこと、しない?」
ニヤッと意地悪そうな顔で笑う杉原くんを見て、眉間に皺が寄った。
「おお!誰もいない運動場って広いねー」
「いや、変わらないと思うけど」
冷ややかな目で杉原くんを見るも、そんなことなんかに目もくれない。
「で、何するの?」
「誰もいない運動場ですると言えば、かけっこでしょ!」
「・・・子供」
「勝った方が、ジュース奢られる」
「・・・拒否権は?」
「ないよ?」
曇りのない笑顔で言われも、恐怖しか湧かない。
「ここから、あの木のところまで」
ここから木まで百メートル以上ある。
運動が得意な杉原くん。
運動ができるものとできないものがある私。
そして、私は走るのが苦手だ。
「・・・負けた」
「早くない?」
でも、ジュースはただで欲しいのでスタートラインに立つ。
「よーい、スタート!!」
杉原くんの声を合図に地面を思い切り、蹴る。
杉原くんは運動神経がいいだけ、速い。
杉原くんに勉強でも負け、こんなゲームでも負けるのは癪だ。
「負けたくない」
だから、走るのが苦手だとか今は置いとく。
ぐんと足と足の幅を広げ、足を速く前に出しては地面を蹴る。
少しずつ、少しずつ、彼の隣へと。
ゴールまで五メートルのところでスピードを上げる。
「ふー!疲れたっ!!!」
木の下で疲れつき、倒れるように寝転ぶ。
「誰なの、負けるとか言っておきながら勝ったやつ」
悪態をつきながらも、私を起こすために手を差し伸べてくれる。
「ありがと」
「いーえ。じゃあ、ジュース買いに行こうか」
汗だくなりながらも、笑っている杉原くんをジーと観察する。
こういうところ、見たことがなかった。
「じゃあ、おー〇、で」
「ああ、あれね」
「冷たいやつ」
「了解しました」
結局、おー〇お茶は、売り切れていてチョコをもらった。
チョコは、ものすごく甘くて夕方になった後でもずっと口に残っていた。



