青春はナニイロだ?

カランッ!
「「かんぱーい!」」
僕らは声を合わせ、ラムネ瓶をぶつけ合った。心地良いガラス音が鳴り響き、僕の気分を高揚させる。
ゴクッゴクッとラムネが通っていくような感覚が、これまた涼しくて堪らない。
10月に飲むには少し冷たいかな。とか考えたけど、2日飲み続けてるし今更か。
「…ふぅ、涼し…っ」
苑田の話し方からはいつものおちゃらけた感じが抜けていて、かなりリラックス状態のようだ。
一方僕は、今日も今日とてラムネ瓶を透かしていた。
おぉっ、橙色ォ…!
子供っぽい感想を述べる。綺麗だからとまた、暫し眺めていると…
「…あれ。紫も混ざってきてる」
次第に藍色の更に濃い色が入ったり、綿菓子みたいな薄い雲が侵入したり。ラムネ瓶の中は大騒ぎだ!
でも、これってなんか…
「僕の想い描く青春…?」
苑田の眉がぴくっと動く。僕はそれに気づき、苑田の表情(かお)を横目に見ると、先程とは打って変わり真面目な顔つきになっていた。
「…荻ちゃんは、わちゃわちゃ青春したいの?」
不意に苑田が質問してきた。
少しふざけようとしたけど、苑田の表情(かお)を思い出し、思い止まる。真面目に答えよう…
「いや、違う気がする…」
「じゃあ、そんなのを観る傍観者?」
それも違う…
「ふぅん」
そう言って、神妙な顔つきになる苑田。
僕は少し苛ついて、「何が言いてぇんだよ」と言葉を発した。
「…いや、ちょっとね。荻ちゃんの"青春について"よ」
「僕の青春について?」
訝しげに苑田の顔をみた。
「荻ちゃんは、もうそーゆー青春をしてるんじゃない?」
「…っあ…」
ハッとした。
苑田って、まるで解ったように核心を突いてくるじゃん。それが苑田らしいんだけど。
ていうか。…へぇ、そうかぁ…
「僕って、青春してたんじゃん」
「っぽいねぇ」
沁み沁みと想い耽る僕に、同じテンションで同意する苑田。
てゆーか、僕の自論。覆されちゃった。これに関しては笑って済ませるしかない。別にそこまで重要と言う訳じゃないし、どうでもいいかな。
「あー!主演組が勝手に外出てるー!?」
ビクッッ
突然、女の子の驚く声が聞こえた。僕らは揃って振り返ると、こちらを指差す人影が複数。
「「げぇ…っ!」」
クラスメイトに見つかったっぽいな、これ。やばい、お仕置きか…?
ビクビクしていると、クラスメイト達は瞬時に僕らの近くに移動した。
「俺らを置いて駄菓子屋なんて、どうかしてるぜ?」
苑田の肩に、吉野(よしの)がまるで"仲間だよ☆"とでも言いたげな顔で手を置いた。
「吉野…」
苑田が感動したような声を上げた。
「そうそう、俺らも混ぜてもらわないと?」
北野(きたの)も悪戯っ子に笑いながら、僕の肩に手を置いた。
僕も苑田同様、「北野…」と感動したように声を上げる。特に話したことはないんだがな。ここは雰囲気に呑まれて置かなければ後々後悔しそうだ。
「まってまって、男同士の友情はなくない!?」
「あーしらも混ぜてもらわないと困るよん♪」
女子のカースト上位まで当たり前のように参戦。この雰囲気に感動しそうなところで、STOPが掛かった。
お約束の紀田さんだ。紀田さんは僕と苑田の肩を掴んだ。
「さぁて、2人共。お仕置きよ」
う"っ、やっぱあるか。
僕らは固唾を飲んで、罰が下る瞬間を待つ。
「それは……」
先生へのチクリとかかなぁ…。考えながらトホホという言葉が漏れそうだ。
「クラスメイトのラムネを奢る、よ!!」
「「え〜!?」」
なんと、思ったよりも軽い処罰だ。
「ええってなによぉ、ええって!」
肩をぐっと掴んできた紀田さん。
「いだっ、痛い痛い!!」
ハイトーンボイスで悲鳴を上げる苑田。
クラスメイトが現れた一瞬で、こんなに煩くなるとは。流石の僕も驚きだ。
「…くっ、ははっ。あはは…っ!」
思いがけず笑ってしまい、あたりがシーンと静まり返った。…空気を変にしちゃったかも。
「俺、荻が笑ってんの初めて見たかも…」「うちもどーい」なんて会話が飛び交ってた気がするが、気の所為に決まっている。
…はぁ、空気を変にしちゃったのは僕のせいだし。仕方ねーか。
「仕方ねぇな。そ…"(このみ)が奢る分まで、僕が奢っちゃるわ!!」
僕がヤケクソ気味に宣言すると、みんながキョトンッとした。だが次の瞬間、「「うおぉぉぉぉぉ!!」」という、熱くけたたましい声が響いた。思わず耳を塞ぎたくなるような。簡単に言えば近所迷惑。または傍迷惑な大声。1人だけでも煩いのに、僕と菓を省く34人も入れば当然の大声だ。
まぁ、それだけ喜ばしいことなのだろう。僕は微笑んだ。
そんな中、一人ついていけてない人物がいた。…菓だ。
「えっ、ちょ。…荻ちゃん?」
多分、僕が菓のことを急に名前呼びしたからだろう。
困惑気味な顔をした彼に僕は、
「…わりぃ、迷惑か…?」
菓の様子を伺った。
「いっ、いや、全然。寧ろ嬉しい…!!」
身振り手振りで教えてくれるので、僕は安堵の息を漏らした。実はこの際、菓が僕にとってのなんなのかを考えたんだ。そして思いついたのが…
「あのさ。僕ね、思ったんだよ。菓は僕の…心友なんじゃないかって」
真剣に。でも口調はぶっきらぼう。そんな感じで言うと、急にわなわなと震えだした菓。
「っえ、それって。…親に友で親友…?」
菓は不思議そうで感動してる。そんな何ともいえない顔で僕に問いを投げかけた。
「いや、心に友の方…」
心に友の方だよ。そう言い終える前に、菓が僕に飛びついてきた。
「あ、あ、…蒼ちゃぁぁぁああん!!」
ぐしょぐしょな涙と鼻水まみれの汚い顔。これが本当にイケメンなのか目を疑う。
「おまッ、抱きつくなっ!この残念イケメンがァ!!」
僕は新たに、…というか。とっくの昔に、心友(しんゆう)青春(アオハル)を手に入れていたのだった。