■ 高天家 大広間 婚約の儀 夜
紅蓮は双葉の前に膝をつくと彼女の手を取り求愛の言葉を口にする。
双葉は顔を真っ赤にしながらただただ狼狽える。
双葉「お戯れを、紅蓮様。私の様な醜い者を花嫁になど望むはずもございませんでしょうに」
紅蓮「何を言う。双葉は誰よりも美しい。それはこのオレが保証しよう」
双葉はカッ両目を大きく見開くほど驚いた様子で紅蓮を見る。
双葉〈物心ついた頃から実の家族からも醜いと蔑まされ続けて来た私が美しいですって? そんなわけあるわけがない。きっとこの御方は私をからかっているんだわ」
双葉「呪いの仮面を外せばこれよりももっとおぞましき素顔が曝け出されることになります。それでも私が美しいとおっしゃるのですか?」
すると、紅蓮は何も言わず双葉の呪いの仮面に手をかける。
双葉は呪いの電撃が発動することを恐れ身構える。
紅蓮「怯えるな。オレを信じてくれ。今すぐ君を呪縛から解き放ってやろう」
双葉は息を呑み込むと目を閉じ身を任せた。
紅蓮は右手に霊力を込めると、呪いの仮面に手をかける。
たちまち凄まじい電撃が迸るが、双葉にダメージは無かった。代わりに紅蓮の右手が焼き焦げる。
双葉「紅蓮様、お止めください! 呪いの反動が貴方に返っております!」
しかし、紅蓮は何も答えずただ優しく微笑んだ。
その微笑に双葉は胸をときめかせる。
次の瞬間、紅蓮は双葉から呪いの仮面を引き剥がした。
呪いを仮面を引き剥がすと、双葉の素顔が露わになる。彼女の右頬には蛇の痣が濃く浮き出ていて、その胴体は首筋を通って胸部の方にまで伸びていた。
双葉の素顔は蛇の痣を除けば目鼻が整った純和風の美しさが際立っていた。
紅蓮「やはり双葉は美しい」
紅蓮は双葉の素顔を見るや笑顔でそう呟く。
双葉はその言葉に偽りが無いことを感じながら生まれて初めてかけられる優しい言葉にうれし涙を流した。
紅蓮「何を泣く?」
紅蓮は右手で双葉の頬を伝う涙を拭おうとする。だが、その右手は黒く焼き焦げていた。
それを見て双葉は蒼白しながら慌てて手拭いを取り出す。
双葉「紅蓮様⁉ 御手は大丈夫ですか⁉ 今、手当を致します!」
双葉は慌てつつも落ち着いて紅蓮の焼き焦げた右手に手拭いを巻く。
紅蓮は右手に巻かれた手拭いを見て嬉しそうに微笑む。
紅蓮「助けられるのはこれで二度目だな」
双葉「なんのことですか?」
紅蓮「いや、こちらのことだ。ありがとう、双葉」
紅蓮はニコッと笑いながら双葉に言う。
双葉〈何て優しい笑顔なの? 私、こんなに優しくされたのは生まれて初めて。何だか胸が春の陽気のようにぽかぽかします〉
父・正道「紅蓮様、納得のいくご説明をお願いします!」
父・正道の怒声が響き渡る。
名指しされた紅蓮は優し気な微笑を捨て、静かで激しい怒りを湛えながら冷徹な眼光を放つ。
紅蓮「説明とは?」
父・正道「お戯れもほどほどになさっていただきたい! 花嫁に我が娘白雪ではなく双葉を望んだことでございます!」
紅蓮「これは異なことを。双葉も貴様の娘ではないのか?」
父・正道「そのようなおぞましきこと、一度も思ったこともございませぬ!」
母・八重「そうですとも。誰が好き好んでそのような呪われた娘を実の子供などと思いましょうや」
双葉は両親の言葉を前に胸が締め付けられ苦しそうに眉根を寄せる。
それに気づいた紅蓮は双葉を優しく自分の傍に抱き寄せる。
紅蓮は双葉には視線を向けずそのまま双葉の両親に話しかける。
紅蓮「何か誤解をしているようだが、オレは高天家の美しき御息女を花嫁に迎え入れたいと申し込んだのだ。それについて何か間違っている点はあるか?」
白雪「ですから、それは私のことでございましょう⁉ それの何処が美しいのですか⁉ 蛇の痣は頬だけじゃなく、全身に刻まれているんですのよ? 醜いを通り越しておぞましいにもほどがあると思うのが普通の人間というものでございましょうや⁉」
紅蓮は白雪のことなど見向きもせず、皮肉めいた口調で父・正道に話しかける。
紅蓮「高天家御当主殿、オレの願いを聞き入れていただき感謝申し上げる。双葉と言う麗しい花嫁をいただいたばかりか高天家随一醜いと噂の御息女にもこうして会わせていただけたのだからな」
白雪「な、なんですって⁉ わ、私の何処が醜いとおっしゃるんですか⁉」
白雪はカアッと顔を真っ赤にして怒りを露わにする。
紅蓮「逆に問うが、実の家族を奴隷同然に扱い、醜女と蔑むばかりか生まれ持った痣だけで家族と認めぬ非道なる者の何処を美しいと思うのだ? 確かにお前の見た目は美しいのかもしれぬ。だが、心は妖や怪異よりもおぞましく醜い。いや、お前達はそれ以下だ。オレが断言してやろう、虫けらどもとな」
紅蓮はそう言ってニタリ、とほくそ笑む。
双葉の両親を始めとして高天家の者達は殺気立った眼光を紅蓮に放つ。
紅蓮は自身に注がれた殺気など意に介した様子も見せず言葉を続ける。
紅蓮「双葉を花嫁に迎え入れる前に一度見ておきたかったのだ。オレの花嫁を虐げてきた者達がいかに醜悪なのかを。おかげで心置きなく双葉を連れて行くことが出来るというものだ」
紅蓮はそう言って傍らに抱き寄せた双葉に柔和な笑みを向けた。
白雪「……さない……そんなの、絶対に許さないから!」
白雪は激高すると、全身から霊力を放出する。
白雪「双葉の分際で紅蓮様を私から奪おうとするなんて絶対に許さないわ⁉ 殺す、殺してやる!」
白雪は叫ぶと、霊力を攻撃霊術に変換して双葉に向かって放った。
紅蓮「愚か者が!」
紅蓮は咄嗟に双葉を庇うと、身を挺して白雪の放った攻撃霊術を防ぐ為に防御霊術を展開する。
いともたやすく白雪の攻撃霊術を防いだ紅蓮は、即座に白雪の間合いに入る。
紅蓮はそのまま白雪の首を掴み上げると烈火のごとき怒りのオーラを立ち昇らせた。
紅蓮「オレの花嫁を弑しようとしたのだ。覚悟は出来ているのだろうな?」
白雪は首を掴み上げられ苦しそうにもがく。
父・正道「お、お止めください、紅蓮様⁉ 白雪が死んでしまいます!」
紅蓮「まさしくそうしようとしているところだ」
父・正道「そのようなこと、許されるわけが……!」
紅蓮「誰がこのオレを、九頭竜家を罰せられるというのか?」
紅蓮は残酷な笑みを浮かべる。
たちまち蒼白する双葉の両親。
母・八重は土下座をして白雪の助命嘆願する。
母・八重「お慈悲を、紅蓮様! 娘がいなくなったら私達は生きてはいられません!」
そこに自分の存在が含まれていないことに双葉は少しだけショックを受ける。
だが、双葉は意を決すると紅蓮の腕にしがみつく。
双葉「紅蓮様、私からもお願い申し上げます。どうか妹にお慈悲を!」
紅蓮「双葉はそれでいいのか? こやつらには恨みつらみが山ほどあるだろう。双葉が望むなら、今宵高天家を滅ぼしてやってもいい。双葉さえいれば高天家の血筋が絶えることもないのだから」
ギラっと紅蓮は鋭い眼光を双葉の両親に放つ。
双葉の両親を含めた高天家の者達は顔面蒼白状態になる。
双葉〈恐らく紅蓮様のお力が噂通りなら、きっとその通りにしてしまうだろう。だからこそ止めなければならない!〉
双葉「恨んでいないと言えば嘘になります。それでも白雪は私の大切な妹、家族なんです。どうかこの通りです、妹をお助けください」
双葉はそう言いながら土下座をして白雪の助命を嘆願する。
紅蓮「分かった。双葉の望み通りにしよう」
紅蓮は白雪を乱雑に放り投げると双葉を抱き起した。
床に倒れ込んだ白雪は苦しそうに咳き込む。
紅蓮「双葉に免じ先程の無礼は忘れてやろう。だが、次は無いと肝に銘じよ。今後、双葉に対する侮辱はオレに対する侮辱。それすなわち九頭竜家への敵対行為だと知れ」
紅蓮はそう言って鋭い眼光を放つ。
紅蓮「だが、約束は果たそう。高天家御当主、明日より高天家の序列を3位にまで格上げとする」
父・正道「そ、それは真ですか⁉」
たちまち双葉の両親の目の色が変わり、周囲から歓喜の声が上がる。
紅蓮が合図をすると、背後に控えていた執事達が100個ものジュラルミンケースを運んでくる。
紅蓮「これは結納金だ。双葉を花嫁に貰い受けるにしては、はした金だが快く受け取っていただきたい」
父・正道「はい! どうか我が娘双葉をよろしくお願いいたします!」
双葉の両親は媚びへつらう様な笑顔で紅蓮に首を垂れる。
紅蓮「ご尊父、ご母堂の許可も得たことだしそろそろ行こうか、双葉」
双葉「行くって何処にですか?」
紅蓮「もちろん、九頭竜家の本家……いや、オレ達の家にだ」
紅蓮は双葉の手を引くとそのまま大広間を出て行く。
序列3位に格上げになったことで大賑わいになっている大広間。
だが、白雪だけは二人が立ち去った後を夜叉のごとき形相で睨みつけていた。
白雪「いつか復讐してやる。醜女と、私を侮辱した九頭竜紅蓮、絶対に許さないんだから……!」
紅蓮は双葉の前に膝をつくと彼女の手を取り求愛の言葉を口にする。
双葉は顔を真っ赤にしながらただただ狼狽える。
双葉「お戯れを、紅蓮様。私の様な醜い者を花嫁になど望むはずもございませんでしょうに」
紅蓮「何を言う。双葉は誰よりも美しい。それはこのオレが保証しよう」
双葉はカッ両目を大きく見開くほど驚いた様子で紅蓮を見る。
双葉〈物心ついた頃から実の家族からも醜いと蔑まされ続けて来た私が美しいですって? そんなわけあるわけがない。きっとこの御方は私をからかっているんだわ」
双葉「呪いの仮面を外せばこれよりももっとおぞましき素顔が曝け出されることになります。それでも私が美しいとおっしゃるのですか?」
すると、紅蓮は何も言わず双葉の呪いの仮面に手をかける。
双葉は呪いの電撃が発動することを恐れ身構える。
紅蓮「怯えるな。オレを信じてくれ。今すぐ君を呪縛から解き放ってやろう」
双葉は息を呑み込むと目を閉じ身を任せた。
紅蓮は右手に霊力を込めると、呪いの仮面に手をかける。
たちまち凄まじい電撃が迸るが、双葉にダメージは無かった。代わりに紅蓮の右手が焼き焦げる。
双葉「紅蓮様、お止めください! 呪いの反動が貴方に返っております!」
しかし、紅蓮は何も答えずただ優しく微笑んだ。
その微笑に双葉は胸をときめかせる。
次の瞬間、紅蓮は双葉から呪いの仮面を引き剥がした。
呪いを仮面を引き剥がすと、双葉の素顔が露わになる。彼女の右頬には蛇の痣が濃く浮き出ていて、その胴体は首筋を通って胸部の方にまで伸びていた。
双葉の素顔は蛇の痣を除けば目鼻が整った純和風の美しさが際立っていた。
紅蓮「やはり双葉は美しい」
紅蓮は双葉の素顔を見るや笑顔でそう呟く。
双葉はその言葉に偽りが無いことを感じながら生まれて初めてかけられる優しい言葉にうれし涙を流した。
紅蓮「何を泣く?」
紅蓮は右手で双葉の頬を伝う涙を拭おうとする。だが、その右手は黒く焼き焦げていた。
それを見て双葉は蒼白しながら慌てて手拭いを取り出す。
双葉「紅蓮様⁉ 御手は大丈夫ですか⁉ 今、手当を致します!」
双葉は慌てつつも落ち着いて紅蓮の焼き焦げた右手に手拭いを巻く。
紅蓮は右手に巻かれた手拭いを見て嬉しそうに微笑む。
紅蓮「助けられるのはこれで二度目だな」
双葉「なんのことですか?」
紅蓮「いや、こちらのことだ。ありがとう、双葉」
紅蓮はニコッと笑いながら双葉に言う。
双葉〈何て優しい笑顔なの? 私、こんなに優しくされたのは生まれて初めて。何だか胸が春の陽気のようにぽかぽかします〉
父・正道「紅蓮様、納得のいくご説明をお願いします!」
父・正道の怒声が響き渡る。
名指しされた紅蓮は優し気な微笑を捨て、静かで激しい怒りを湛えながら冷徹な眼光を放つ。
紅蓮「説明とは?」
父・正道「お戯れもほどほどになさっていただきたい! 花嫁に我が娘白雪ではなく双葉を望んだことでございます!」
紅蓮「これは異なことを。双葉も貴様の娘ではないのか?」
父・正道「そのようなおぞましきこと、一度も思ったこともございませぬ!」
母・八重「そうですとも。誰が好き好んでそのような呪われた娘を実の子供などと思いましょうや」
双葉は両親の言葉を前に胸が締め付けられ苦しそうに眉根を寄せる。
それに気づいた紅蓮は双葉を優しく自分の傍に抱き寄せる。
紅蓮は双葉には視線を向けずそのまま双葉の両親に話しかける。
紅蓮「何か誤解をしているようだが、オレは高天家の美しき御息女を花嫁に迎え入れたいと申し込んだのだ。それについて何か間違っている点はあるか?」
白雪「ですから、それは私のことでございましょう⁉ それの何処が美しいのですか⁉ 蛇の痣は頬だけじゃなく、全身に刻まれているんですのよ? 醜いを通り越しておぞましいにもほどがあると思うのが普通の人間というものでございましょうや⁉」
紅蓮は白雪のことなど見向きもせず、皮肉めいた口調で父・正道に話しかける。
紅蓮「高天家御当主殿、オレの願いを聞き入れていただき感謝申し上げる。双葉と言う麗しい花嫁をいただいたばかりか高天家随一醜いと噂の御息女にもこうして会わせていただけたのだからな」
白雪「な、なんですって⁉ わ、私の何処が醜いとおっしゃるんですか⁉」
白雪はカアッと顔を真っ赤にして怒りを露わにする。
紅蓮「逆に問うが、実の家族を奴隷同然に扱い、醜女と蔑むばかりか生まれ持った痣だけで家族と認めぬ非道なる者の何処を美しいと思うのだ? 確かにお前の見た目は美しいのかもしれぬ。だが、心は妖や怪異よりもおぞましく醜い。いや、お前達はそれ以下だ。オレが断言してやろう、虫けらどもとな」
紅蓮はそう言ってニタリ、とほくそ笑む。
双葉の両親を始めとして高天家の者達は殺気立った眼光を紅蓮に放つ。
紅蓮は自身に注がれた殺気など意に介した様子も見せず言葉を続ける。
紅蓮「双葉を花嫁に迎え入れる前に一度見ておきたかったのだ。オレの花嫁を虐げてきた者達がいかに醜悪なのかを。おかげで心置きなく双葉を連れて行くことが出来るというものだ」
紅蓮はそう言って傍らに抱き寄せた双葉に柔和な笑みを向けた。
白雪「……さない……そんなの、絶対に許さないから!」
白雪は激高すると、全身から霊力を放出する。
白雪「双葉の分際で紅蓮様を私から奪おうとするなんて絶対に許さないわ⁉ 殺す、殺してやる!」
白雪は叫ぶと、霊力を攻撃霊術に変換して双葉に向かって放った。
紅蓮「愚か者が!」
紅蓮は咄嗟に双葉を庇うと、身を挺して白雪の放った攻撃霊術を防ぐ為に防御霊術を展開する。
いともたやすく白雪の攻撃霊術を防いだ紅蓮は、即座に白雪の間合いに入る。
紅蓮はそのまま白雪の首を掴み上げると烈火のごとき怒りのオーラを立ち昇らせた。
紅蓮「オレの花嫁を弑しようとしたのだ。覚悟は出来ているのだろうな?」
白雪は首を掴み上げられ苦しそうにもがく。
父・正道「お、お止めください、紅蓮様⁉ 白雪が死んでしまいます!」
紅蓮「まさしくそうしようとしているところだ」
父・正道「そのようなこと、許されるわけが……!」
紅蓮「誰がこのオレを、九頭竜家を罰せられるというのか?」
紅蓮は残酷な笑みを浮かべる。
たちまち蒼白する双葉の両親。
母・八重は土下座をして白雪の助命嘆願する。
母・八重「お慈悲を、紅蓮様! 娘がいなくなったら私達は生きてはいられません!」
そこに自分の存在が含まれていないことに双葉は少しだけショックを受ける。
だが、双葉は意を決すると紅蓮の腕にしがみつく。
双葉「紅蓮様、私からもお願い申し上げます。どうか妹にお慈悲を!」
紅蓮「双葉はそれでいいのか? こやつらには恨みつらみが山ほどあるだろう。双葉が望むなら、今宵高天家を滅ぼしてやってもいい。双葉さえいれば高天家の血筋が絶えることもないのだから」
ギラっと紅蓮は鋭い眼光を双葉の両親に放つ。
双葉の両親を含めた高天家の者達は顔面蒼白状態になる。
双葉〈恐らく紅蓮様のお力が噂通りなら、きっとその通りにしてしまうだろう。だからこそ止めなければならない!〉
双葉「恨んでいないと言えば嘘になります。それでも白雪は私の大切な妹、家族なんです。どうかこの通りです、妹をお助けください」
双葉はそう言いながら土下座をして白雪の助命を嘆願する。
紅蓮「分かった。双葉の望み通りにしよう」
紅蓮は白雪を乱雑に放り投げると双葉を抱き起した。
床に倒れ込んだ白雪は苦しそうに咳き込む。
紅蓮「双葉に免じ先程の無礼は忘れてやろう。だが、次は無いと肝に銘じよ。今後、双葉に対する侮辱はオレに対する侮辱。それすなわち九頭竜家への敵対行為だと知れ」
紅蓮はそう言って鋭い眼光を放つ。
紅蓮「だが、約束は果たそう。高天家御当主、明日より高天家の序列を3位にまで格上げとする」
父・正道「そ、それは真ですか⁉」
たちまち双葉の両親の目の色が変わり、周囲から歓喜の声が上がる。
紅蓮が合図をすると、背後に控えていた執事達が100個ものジュラルミンケースを運んでくる。
紅蓮「これは結納金だ。双葉を花嫁に貰い受けるにしては、はした金だが快く受け取っていただきたい」
父・正道「はい! どうか我が娘双葉をよろしくお願いいたします!」
双葉の両親は媚びへつらう様な笑顔で紅蓮に首を垂れる。
紅蓮「ご尊父、ご母堂の許可も得たことだしそろそろ行こうか、双葉」
双葉「行くって何処にですか?」
紅蓮「もちろん、九頭竜家の本家……いや、オレ達の家にだ」
紅蓮は双葉の手を引くとそのまま大広間を出て行く。
序列3位に格上げになったことで大賑わいになっている大広間。
だが、白雪だけは二人が立ち去った後を夜叉のごとき形相で睨みつけていた。
白雪「いつか復讐してやる。醜女と、私を侮辱した九頭竜紅蓮、絶対に許さないんだから……!」


