自分に縁談が来るなど、思いもしなかった。しかもこんな急になど。
もしかして、チャンス?
燈子ははっとして新聞を見つめる。
新聞の狼は、りりしく空を見上げていた。
***
「来週、見合いが決まった」
言われた白銀の狼は、父である綾月功之輔を見た。
自宅の洋館のリビング。ソファにかけた父は穏やかな表情をしていて、内心を読ませない。
「もちろん、お前のだぞ、颯雅。お前も二十五歳、そろそろ身を固めろ」
白銀の狼——颯雅は抗議するように唸る。が、その耳がぴくっと動いた。直後、ドアがノックされる。
「失礼いたします。街にあやかしが出て若様に応援出動を要請する電話が入っております」
入って来た女中は慇懃に場所を伝えた。
「行けるか、颯雅」
颯雅は頷き、すぐさま屋敷を飛び出す。
その躍動する毛並みは陽をあびて銀色に輝いていた。
第一話 終
もしかして、チャンス?
燈子ははっとして新聞を見つめる。
新聞の狼は、りりしく空を見上げていた。
***
「来週、見合いが決まった」
言われた白銀の狼は、父である綾月功之輔を見た。
自宅の洋館のリビング。ソファにかけた父は穏やかな表情をしていて、内心を読ませない。
「もちろん、お前のだぞ、颯雅。お前も二十五歳、そろそろ身を固めろ」
白銀の狼——颯雅は抗議するように唸る。が、その耳がぴくっと動いた。直後、ドアがノックされる。
「失礼いたします。街にあやかしが出て若様に応援出動を要請する電話が入っております」
入って来た女中は慇懃に場所を伝えた。
「行けるか、颯雅」
颯雅は頷き、すぐさま屋敷を飛び出す。
その躍動する毛並みは陽をあびて銀色に輝いていた。
第一話 終



