やがて燈子の前に届いたのはバニラアイスを添えたりんごのコンポートにソーダ水。颯雅はコーヒーだった。
「おいしそう……!」

「溶ける前に食べてしまえ」
「はい!」
 燈子はわくわくとスプーンを手に取る。アイスは冷たくなめらかで、甘く口の中で溶けていく。りんごのコンポートはとろとろしていて、リンゴの酸味で濃厚な甘さがひきたつ。ソーダをストローで飲むと口の中でぱちぱちとはじけて、初めての感覚に驚いた。

「ソーダは最近はやっているそうだ」
「こんな飲み物、初めてです」
 満足そうに笑む颯雅は、コーヒーを飲んだあと、ふと言った。

「アイスを俺にもくれないか」
「どうぞ」
 器とスプーンを差し出した燈子に、颯雅は首をふる。

「まだ人間の食器には慣れないんだ。お前が食べさせてくれ」
「え?」
 燈子は戸惑った。子どもにするみたいに、あーん、とやるということだろうか。公衆の面前でそんなことをしていいのだろうか。

 しかし、颯雅はなにか期待に満ちた目で待っている。
 燈子はしかたなくアイスを掬い、彼の口の前に差し出した。
 ぱくり、と食べた彼はぺろりと唇を舐めて燈子を見る。

「うまいな。お前にも食べさせてやろう」
 返事を待たずにスプーンを奪い、ひと口を掬って燈子の前に差し出す。