化粧品のフロアにも行き、あれこれ女性店員にお試しのメイクをされて、燈子は緊張した。
お化粧なんて初めてだ。
似合ってるかな、と不安になって颯雅を見ると、にこにこと満足そうだ。
「化粧品の匂いは大丈夫ですか?」
「人の姿だと嗅覚も人並みのようで大丈夫だ」
その答えに、燈子はほっとした。
颯雅は女性店員に進められるままあれもこれもと買い込み、これらも宅配の手配をした。
「しかしよく似合ってる。記念にこの姿を残しておきたいな」
「それでしたら写真館がございますよ」
店員がにこやかに告げる。
「せっかくだ、写真を撮ってもらうか」
「ええ!?」
「行くぞ」
抗議をする間もなく連れていかれ、写真を撮られることになった。
洋風の椅子に燈子が腰掛け、その隣に颯雅が立つ。
ぎこちない笑顔だった燈子だが、カメラマンが緊張をほぐすように話をしてくれたので、やがては自然な笑顔が生まれた。その瞬間を逃さずシャッターを切るカメラマンに合わせ、助手が閃光機を光らせる。
眩しい光にちかちかしていると、撮影の終了を告げられた。
「出来上がりは後日にお渡しします。奥様、こちらの写真館は前にもご利用で?」
「初めてです」
奥様じゃないんだけどいちいち訂正するのもな、と思いながら燈子は答える。
「百貨店に出店する前は別で店を構えていたんですがね、そちらでもないですかね?」
「違うと思います」
燈子の記憶にはさっぱりない。父は自分に無関心だし、麻子は燈子にお金をかけることを嫌ったので、写真なんてもってのほかだった。だから自分の家族写真なんてない。父は麻子と真世とは一緒に撮影していたから、なおさら自分は彼らの家族ではないのだと思ったものだった。
カメラマンは話を切り上げ、引換券を颯雅に渡す。
店を出ると、燈子は大きく息をついた。
「疲れたか?」
「はい」
「最上階にパーラーがある。休もうか」
颯雅に手を引かれるままに昇降機で最上階に行き、窓際に座った。
メニューを見てもどれを注文したらいいのかわからず、結局は颯雅が頼んでくれた。
注文の品が届くまでは、ふたりで景色を楽しんだ。
「私、こんな高いところから眺めるのは初めてです」
「俺もだ。なかなかいいものだな」
普段は見られない視点が物珍しく、それだけで会話がはずんだ。
お化粧なんて初めてだ。
似合ってるかな、と不安になって颯雅を見ると、にこにこと満足そうだ。
「化粧品の匂いは大丈夫ですか?」
「人の姿だと嗅覚も人並みのようで大丈夫だ」
その答えに、燈子はほっとした。
颯雅は女性店員に進められるままあれもこれもと買い込み、これらも宅配の手配をした。
「しかしよく似合ってる。記念にこの姿を残しておきたいな」
「それでしたら写真館がございますよ」
店員がにこやかに告げる。
「せっかくだ、写真を撮ってもらうか」
「ええ!?」
「行くぞ」
抗議をする間もなく連れていかれ、写真を撮られることになった。
洋風の椅子に燈子が腰掛け、その隣に颯雅が立つ。
ぎこちない笑顔だった燈子だが、カメラマンが緊張をほぐすように話をしてくれたので、やがては自然な笑顔が生まれた。その瞬間を逃さずシャッターを切るカメラマンに合わせ、助手が閃光機を光らせる。
眩しい光にちかちかしていると、撮影の終了を告げられた。
「出来上がりは後日にお渡しします。奥様、こちらの写真館は前にもご利用で?」
「初めてです」
奥様じゃないんだけどいちいち訂正するのもな、と思いながら燈子は答える。
「百貨店に出店する前は別で店を構えていたんですがね、そちらでもないですかね?」
「違うと思います」
燈子の記憶にはさっぱりない。父は自分に無関心だし、麻子は燈子にお金をかけることを嫌ったので、写真なんてもってのほかだった。だから自分の家族写真なんてない。父は麻子と真世とは一緒に撮影していたから、なおさら自分は彼らの家族ではないのだと思ったものだった。
カメラマンは話を切り上げ、引換券を颯雅に渡す。
店を出ると、燈子は大きく息をついた。
「疲れたか?」
「はい」
「最上階にパーラーがある。休もうか」
颯雅に手を引かれるままに昇降機で最上階に行き、窓際に座った。
メニューを見てもどれを注文したらいいのかわからず、結局は颯雅が頼んでくれた。
注文の品が届くまでは、ふたりで景色を楽しんだ。
「私、こんな高いところから眺めるのは初めてです」
「俺もだ。なかなかいいものだな」
普段は見られない視点が物珍しく、それだけで会話がはずんだ。



