だがここにいる女性の半数は洋服だし、洋服コーナーの女性店員は洋装の制服を着ている。短い髪は流行の最先端で、パーマをかけている者もいる。きりりとした職業婦人たちに燈子の目は釘付けとなった。
「思ったより洋装が普及しているのですね。職業婦人がたくさんいらっしゃるのもすごいです」
「意外と世間知らずなのだな」
「ずっと家事ばかりしていましたので……」
休みもなく働き、家の用事で行くのは近所のお店ばかり、賑わう場所に行けるのは父と麻子と真世だけだった。かつては母と百貨店に出かけたこともあるが、記憶はおぼろげだ。
「だったら今日はうんと楽しんでいけ」
「はい」
燈子は感謝をこめて返事をした。
服については、迷ってばかりの燈子に痺れを切らした颯雅が女性の店員を呼んでいくつも選んだ。洋服用の下着については完全に女性店員任せで、颯雅は店の外で待っていた。
買った服は自宅に届けてもらえるように手配し、別フロアの着物店へも行く。
和装フロアは畳敷きで、上履きを脱いで上がった。
この店には仕立て上がりの着物がいくつも置いてある。
仕事用の綿の着物をいくつかと、普段着の小紋を数枚、帯や帯締め、帯揚げに草履などなどを買った。
まだ足りないと訪問着や振袖を仕立てるために巻き尺で腕の長さや着丈を確認され、燈子は目を白黒させた。並べられた反物は昔ながらの和柄から最新の水玉模様やストライプ、薔薇やチューリップなど西洋の花柄、アールデコ風の流行柄まで、どれも素敵で圧倒された。
「すべて必要なものだ。いくつでも選べ」
「こんなにたくさん……選べません。振袖なんて結婚したら着られないですし……」
「だったら急がなくてはな。振り袖姿はさぞ美しいだろう。浴衣もいるな」
にっこりと笑む彼に、燈子はもう何も言えなかった。
「思ったより洋装が普及しているのですね。職業婦人がたくさんいらっしゃるのもすごいです」
「意外と世間知らずなのだな」
「ずっと家事ばかりしていましたので……」
休みもなく働き、家の用事で行くのは近所のお店ばかり、賑わう場所に行けるのは父と麻子と真世だけだった。かつては母と百貨店に出かけたこともあるが、記憶はおぼろげだ。
「だったら今日はうんと楽しんでいけ」
「はい」
燈子は感謝をこめて返事をした。
服については、迷ってばかりの燈子に痺れを切らした颯雅が女性の店員を呼んでいくつも選んだ。洋服用の下着については完全に女性店員任せで、颯雅は店の外で待っていた。
買った服は自宅に届けてもらえるように手配し、別フロアの着物店へも行く。
和装フロアは畳敷きで、上履きを脱いで上がった。
この店には仕立て上がりの着物がいくつも置いてある。
仕事用の綿の着物をいくつかと、普段着の小紋を数枚、帯や帯締め、帯揚げに草履などなどを買った。
まだ足りないと訪問着や振袖を仕立てるために巻き尺で腕の長さや着丈を確認され、燈子は目を白黒させた。並べられた反物は昔ながらの和柄から最新の水玉模様やストライプ、薔薇やチューリップなど西洋の花柄、アールデコ風の流行柄まで、どれも素敵で圧倒された。
「すべて必要なものだ。いくつでも選べ」
「こんなにたくさん……選べません。振袖なんて結婚したら着られないですし……」
「だったら急がなくてはな。振り袖姿はさぞ美しいだろう。浴衣もいるな」
にっこりと笑む彼に、燈子はもう何も言えなかった。



