「がっかりさせてすまない」
 燈子は首を振った。
「一番残念に思っているのは颯雅様ですよね」
「あきらめていたから大丈夫だ」
「……大丈夫じゃないです」
 燈子の言葉に、颯雅は自嘲の笑みをこぼした。

「そう思わせたなら申し訳ない。帝国の守護神ともあろうものが」
「前にも言いましたけど」
 颯雅を見上げる燈子の目に、力がこもった。
「颯雅様は颯雅様です」

 その言葉に、颯雅の足から力がぬけた。がくり、と膝をついた颯雅に、慌てて燈子が寄る。

「颯雅様!?」
「なんでもない」

「なんでもないことはないです!」
 颯雅は片膝を立てて座りこみ、額に手を当てた。

「ふがいない。まったくふがいない。この程度のことで……」
「颯雅様は自分の苦しみを過小評価なさっておいでです」

「俺の苦しみなど、母に比べたら取るに足らない」
「そんなことはありません!」
 思わず強い口調になっていて、燈子ははっと口をつぐんだ。

「すみません、つい」
「いや、いい」
 そのまま、ふたりとも言葉をなくして気づまりな時間が生まれた。
 燈子は隣に座り、じっと彼の言葉を待つ。
 やがて、焦れたように彼が言った。