事業が傾いていることもあり、父はひたすら、「俺は不幸だ」と呟いていた。妻を亡くした自分を不憫に思ってもらうどころか非難されてかわいそうなのだという。
新しくできた母と妹は、燈子を迫害した。
母の形見や写真は目の前で焼き払われ、かんざしや着物などは売り払われた。部屋はとりあげられ、物置を自室とされた。
子どもだった燈子はわけがわからず、泣いた。
その後は新しい母の言うことを聞きなさいと父に言われ、麻子に命じられるままに女中の仕事をした。
当時の女中は解雇され、新しく女中が来た。
燈子がにこにこと笑顔でかわしたいせいで、いじめは激化した。
笑顔を見せて、笑う門には福来るというでしょう? と母は病床で微笑を見せた。だから燈子は必死に笑顔を作った。
苦しそうな顔では自分を守ってくれた母に申しわけがない。だから笑顔でいようと努めるのだが、麻子も真世もそれが気に入らないらしい。
そうとわかったのちには、彼女らの前ではしおらしい態度を心がけた。無理矢理反抗して自分へのいじめを悪化させる必然性などない。
いつかここを出て、あの人たちの手の届かないところで幸せになってやる。それが私を産んでくれた母への恩返しだ。
そう思い、今は大人しく働いている。
新聞を片付けようとして、ふとその隅にある求人に目が行った。
募集は工員や職人などの男性ばかり。女性の求人は少ない。開国以来普及しつつある電話の交換手や百貨店の店員は人気だが、女学校を出た女性でないと難しいらしい。
真世は女学校に通っているが、燈子は通わせてもらえない。これも麻子のいじめの一環だ。
新しくできた母と妹は、燈子を迫害した。
母の形見や写真は目の前で焼き払われ、かんざしや着物などは売り払われた。部屋はとりあげられ、物置を自室とされた。
子どもだった燈子はわけがわからず、泣いた。
その後は新しい母の言うことを聞きなさいと父に言われ、麻子に命じられるままに女中の仕事をした。
当時の女中は解雇され、新しく女中が来た。
燈子がにこにこと笑顔でかわしたいせいで、いじめは激化した。
笑顔を見せて、笑う門には福来るというでしょう? と母は病床で微笑を見せた。だから燈子は必死に笑顔を作った。
苦しそうな顔では自分を守ってくれた母に申しわけがない。だから笑顔でいようと努めるのだが、麻子も真世もそれが気に入らないらしい。
そうとわかったのちには、彼女らの前ではしおらしい態度を心がけた。無理矢理反抗して自分へのいじめを悪化させる必然性などない。
いつかここを出て、あの人たちの手の届かないところで幸せになってやる。それが私を産んでくれた母への恩返しだ。
そう思い、今は大人しく働いている。
新聞を片付けようとして、ふとその隅にある求人に目が行った。
募集は工員や職人などの男性ばかり。女性の求人は少ない。開国以来普及しつつある電話の交換手や百貨店の店員は人気だが、女学校を出た女性でないと難しいらしい。
真世は女学校に通っているが、燈子は通わせてもらえない。これも麻子のいじめの一環だ。



