「どうした!?」
 男性の声に、燈子は慌てて彼からどいて座り込み、顔を覆う。驚きのあまりに腰が抜けてしまって立てない。

 起き上がった颯雅は、ようやく自身の変化に気が付いて両手を見た。
「どういうことだ……」
 毛のない体。前足が両手に、後ろ足が両足になり、尻尾が消えている。

「颯雅様! どこですか!?」
「落ち着け、颯雅は俺だ」
 顔を上げた燈子は、やはり裸の男性がいたので顔を覆って伏せる。

「いやああ!」
「お前、それを脱げ」
 彼に羽織をひっぱられ、燈子は「ひ!」と悲鳴を上げた。

「羽織を借りたいだけだ、このざまではお前も困るだろう」
「あ……」
 燈子は慌てて羽織を脱いで渡した。
 ひったくるように受け取った彼はすぐに羽織る。丈が足りないが、ないよりましだ。

「もう大丈夫だぞ」
「はい」
 顔を上げた燈子は見慣れない彼の姿に首をかしげる。

「本当に、颯雅様……ですか?」
「証明のしようがないが、そうだ」
「確かに声は同じです。でも、どうして……。人の姿になれるのですか?」
「いや、こんなことは初めてだ」
 颯雅が答えたとき。