訓練を頑張る姿にも感心しているが、実際に犬たちの世話をすると愛着がわいてくる。ブラッシングをしてあげると気持ちよさそうに笑顔になるのが一番の楽しみだった。
颯雅様のブラッシングは誰がしているのだろう。
彼にしてあげたら喜んでくれるのかな。
『だったら、うちでどうだ』
「え?」
ブラッシングを考えていた燈子は、颯雅が許可してくれたように錯覚したのだが。
『世話ができるなら、シロマツを引き取ってもいい』
そっちか、と燈子は少し落胆し、シロマツに申しわけなくなった。
「飼うのは無理だと思います」
『そうか。それでも犬が苦手だったのに、すごい変わりようだな』
「あんな大きな犬たちをかわいいと思う日がくるとは思いませんでした」
すべては彼のおかげだろう、と狼の彼を見る。
銀色の毛並みも金色の瞳も、なにもかもが美しい。
つい見とれてしまい、彼と目が合う。燈子は恥ずかしくなって目をそらし、羽織のすそをつかんでもじもじした。
家に到着し、タクシーを降りたあとは片足をひきずって玄関に向かった。
颯雅は心配そうに寄り添ってくれている。
玄関を開けようとしたとき、つい痛めた足に体重をかけてしまい、がくっと倒れ込む。
「きゃあ!」
『危ない!』
とっさに颯雅が燈子の下に入り込む。
燈子は颯雅とともにどさっと倒れた。
一瞬、颯雅の長い鼻先が口に当たったのがわかったが、気にする余裕はなかった。
「大丈夫ですか!?」
慌てて起き上がった燈子は、信じられないものを目にした。
自分の下に、裸の美丈夫がいたからだ。
「な、な、な……」
言葉が出なくて燈子はただ震える。
なめらかに艶やかな銀髪は、夕暮れを浴びて朱にきらめく。白い肌は陶器のよう。鋭い瞳は金色で、形のよい鼻梁の下には薄い唇。頬から首筋にかけてのすっきりしたライン、男らしい喉仏。その下は一糸まとわぬ筋肉質な体。
「大丈夫か?」
かけられた声に、反射的に出たのは。
「いやああああ!」
腹の底から込み上げる悲鳴だった。
第五話 終
颯雅様のブラッシングは誰がしているのだろう。
彼にしてあげたら喜んでくれるのかな。
『だったら、うちでどうだ』
「え?」
ブラッシングを考えていた燈子は、颯雅が許可してくれたように錯覚したのだが。
『世話ができるなら、シロマツを引き取ってもいい』
そっちか、と燈子は少し落胆し、シロマツに申しわけなくなった。
「飼うのは無理だと思います」
『そうか。それでも犬が苦手だったのに、すごい変わりようだな』
「あんな大きな犬たちをかわいいと思う日がくるとは思いませんでした」
すべては彼のおかげだろう、と狼の彼を見る。
銀色の毛並みも金色の瞳も、なにもかもが美しい。
つい見とれてしまい、彼と目が合う。燈子は恥ずかしくなって目をそらし、羽織のすそをつかんでもじもじした。
家に到着し、タクシーを降りたあとは片足をひきずって玄関に向かった。
颯雅は心配そうに寄り添ってくれている。
玄関を開けようとしたとき、つい痛めた足に体重をかけてしまい、がくっと倒れ込む。
「きゃあ!」
『危ない!』
とっさに颯雅が燈子の下に入り込む。
燈子は颯雅とともにどさっと倒れた。
一瞬、颯雅の長い鼻先が口に当たったのがわかったが、気にする余裕はなかった。
「大丈夫ですか!?」
慌てて起き上がった燈子は、信じられないものを目にした。
自分の下に、裸の美丈夫がいたからだ。
「な、な、な……」
言葉が出なくて燈子はただ震える。
なめらかに艶やかな銀髪は、夕暮れを浴びて朱にきらめく。白い肌は陶器のよう。鋭い瞳は金色で、形のよい鼻梁の下には薄い唇。頬から首筋にかけてのすっきりしたライン、男らしい喉仏。その下は一糸まとわぬ筋肉質な体。
「大丈夫か?」
かけられた声に、反射的に出たのは。
「いやああああ!」
腹の底から込み上げる悲鳴だった。
第五話 終



